東日本大震災10年目の述懐
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東日本大震災10年目の述懐

東日本大震災は発生から10年の節目を迎えた。あの日、われわれは成す術もなく自然の猛威を改めて実感し、原発事故を含め「想定外」として受け入れるしかなかった。ただ、無力さの中で何ができるかの議論は進んでいる。当時、政府や自衛隊、同盟国として関わった3識者が、10年を経た万感の思いとともに、防災対策の真の在り方を問う。

東日本大震災は発生から10年の節目を迎えた。あの日、われわれは成す術もなく自然の猛威を改めて実感し、原発事故を含め「想定外」として受け入れるしかなかった。ただ、無力さの中で何ができるかの議論は進んでいる。当時、政府や自衛隊、同盟国として関わった3識者が、10年を経た万感の思いとともに、防災対策の真の在り方を問う。

日米同盟にも危機があった

戦争とコロナにも共通

エルドリッヂ氏が提言

リベラル系の「情報災害」に批判なし

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11日で10年となる。福島県では避難地域の復興が進み、食の安全も確認されているが、デマや偏見による「情報災害」との戦いは続いている。同県在住のライター、林智裕氏が寄稿で、10年間の変化と現状について、5つの課題を検証した。
 まず、避難地域が今どうなっているかだ。避難解除された時期などにより帰還や復興の状況は大きく異なるものの、復興拠点には住民が戻りはじめ、週末には商業施設を中心に観光客も多数訪れにぎわいを見せている。
 帰還や居住のハードルは放射線というよりインフラ整備の問題がより大きい。福島県浜通り地域では「イノベーションコースト構想」という、地域と日本全体の未来に資するための建設的構想が進められている。
 次に、原発事故の健康被害の現状を挙げたい。被曝(ひばく)自体を原因とした被害は起こらず、今後も考えられない。次世代への影響もない。結果論ではあるが東電原発事故ではそもそも懸念される量の被曝そのもの自体が起こらなかった。これらは国連科学委員会(UNSCEAR)他、多数の国際的知見の裏付けが得られている。
 一方、放射線以外の要因で健康被害は多発し、震災関連死も福島が突出した。そういう意味で原発事故による健康被害は甚大だった。
 続いて、食の安全性の問題だ。日本の食品基準は「毎日の食事の半分が放射能汚染されている」という有り得ない前提で制定され、海外での一般的な基準に比べ10倍以上厳しい(日本100ベクレル/キロ、米国1200ベクレル/キロなど)。当然、基準を超えたものを多少食べても全く影響はない。そもそも、出荷されている福島県産品は基準値超えどころか放射性物質自体がほぼ検出されていない。他の産地との差はなく、心配する必要は全くない。
帰還困難区域の一部で立ち入り規制が緩和され、
看板を撤去する警備員=2021年3月8日午前、福島県大熊町
帰還困難区域の一部で立ち入り規制が緩和され、 看板を撤去する警備員=2021年3月8日午前、福島県大熊町
 福島県産品を「ためらう」人の割合は原発事故後最低の8%台まで下落し、食への風評被害はおおむね落ち着いてきた。
 価格や販路が戻らないこと、贈答品や海外の一部には課題が残るが、福島の食は全体的に非常においしいことで知られ、米は特A評価続出、日本酒は全国新酒鑑評会での金賞受賞数7年連続日本一という快進撃を続けている。
 4つ目は、福島はまだ放射線量が高いのでは、という点だ。大規模な除染や半減期などにより、放射線量は大幅に低下した。制限された一部地域を除き普通に生活しても問題ない。除染で出た廃棄物を入れた大量のフレコンバッグも、ほとんどが間もなく中間貯蔵施設への運び込みが完了する。一方で、除染物の中でも放射線量が低く健康影響を与えないものは減容化(容積を減少させること)のためにも土木工事等での有効利用が求められている。
 最後に、今も解決できていない問題を強調しておきたい。「安全」は十分に確保できた一方、「安心」の問題が残されている。
 政治問題化した原発事故には「情報災害」というべき側面が生まれた。プロパガンダを用いた情報戦が繰り広げられ、広まったデマと偏見がさまざまな政策実現の障害になっている。つまり「情報が足りない」という以上に「虚偽や粗悪な情報の過多」にその一因がある。カタカナ表記の「フクシマ」が象徴的だが、これらには特に「リベラル」系メディアや著名人らが加担してきた。
 情報災害については10年経っても被害の検証どころか、「なかったこと」にされている。その後の豊洲市場移転問題やHPVワクチンへの不当な不安扇動に続き、現在の新型コロナ禍でも同じ構図が繰り返されているといえるだろう。(ジャーナリスト・林智裕 ZAKZAK 2021.3.9

保育園に残された通園バッグ

メディアの功罪は

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