検索ワード:エンタメ毒考/35件ヒットしました

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    芸人「流出」テレビ戦線に異常あり

    活躍の場をユーチューブに求める著名人が増えている。特にお笑い界では昨年、大物芸人らの「参入」が話題を呼び、テレビ業界から見れば「流出」だ。テレビ業界も調査指標を変えるなどして番組制作に勤しむが、「主戦場」が変わりつつある中、テレビはいつまで優位でいられるだろうか。(写真はゲッティイメージズ)

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    YouTubeは「都落ち」にあらず、大物芸人らが変える主戦場の今

    ラリー遠田(お笑い評論家) 少し前までのお笑い業界では「芸人がユーチューブをやるのはダサい」という空気があった。プロの芸人の主戦場はライブとテレビであり、それ以外のネットメディアなどは格が低いものと見られていた。 ライブでは生身の観客から笑いをもぎ取る。テレビはそもそも出ること自体が1つのステータスであり、そこでは歴戦の実力派芸人によるハイレベルな掛け合いが繰り広げられている。 そのような「戦場」に比べると、一般人でも気軽に参入できるユーチューブは、プロの芸人にとっては格下のメディアだと思われていた。そのため、そこで必死になるのはみっともないという漠然としたイメージがあった。 だが、今ではそのように考える芸人はほとんどいないだろう。潮目が変わったきっかけは、2018年にキングコングの梶原雄太が「カジサック」としてユーチューブチャンネルを始めたことだ。「2019年の年末までに登録者数が100万人に達しなかったら芸人を引退する」と宣言して、不退転の覚悟を示した。 ユーチューブを片手間で始める芸人も多かった中で、梶原は本気で取り組み、密度の濃い動画を配信し続けた。努力のかいあって19年には登録者数が100万人を突破して、現在では人気ユーチューバーの地位を確立している。 梶原のような名の知れた芸人がユーチューブで結果を出したことで、芸人がユーチューブに参入する動きが活発になった。梶原に触発されてオリエンタルラジオの中田敦彦が19年に始めた「中田敦彦のYouTube大学」は、本稿執筆時点で登録者数337万人を超えており、芸人ユーチューバーの中ではトップクラスの人気を誇っている。 2020年には大物芸人の参入も相次いだ。雨上がり決死隊の宮迫博之、ロンドンブーツ1号2号、東野幸治、とんねるずの石橋貴明など、テレビで冠番組を持つようなレベルの大物らが、続々とユーチューブの世界に足を踏み入れて話題をさらっていった。インタビューを受けるカジサック(キングコング・梶原雄太)=2019年4月、大阪市中央区の吉本興業本社 芸人の立場から見ると、ユーチューブはテレビよりも企画の自由度が高く、やりたいことをそのままの形でやることができる。さらに、ある程度の再生回数を獲得すれば、テレビに劣らないほどの収入を得ることもできる。大物芸人が本気で取り組む価値のあるメディアだと認識されるようになったのだ。視聴率調査も変化 さらに、2020年には中田と宮迫が「Win Win Wiiin(ウィンウィンウィーン)」というトークバラエティー番組をユーチューブで立ち上げた。企業がスポンサーとして制作費を出しているというのが画期的だった。 同番組ではテレビと同じように豪華なセットを作り込み、ゲストからテレビでは聞けない本音を引き出していく。初回のゲストとしてジャニーズ事務所を辞めて独立したばかりの手越祐也が出演したことも話題になった。 「テレビ番組のようなクオリティーの高いユーチューブ番組」を作るというのは、特筆すべき新しい動きである。今後、このような番組が増えれば、ユーチューブとテレビの間の壁は、ますます薄くなっていくだろう。 ユーチューブの世界は芸人の本格参入で盛り上がっているが、テレビも負けてはいない。昨年のテレビバラエティー界は、新型コロナウイルスの流行で一時的に大打撃を受けたが、明るい話題もあった。若い世代向けのお笑い番組がどんどん増えてきたことだ。 その理由は、世帯ごとに視聴された割合を表す「世帯視聴率」重視から、実際に視聴した人数をもとに表す「個人視聴率」重視にテレビ局がかじを切ったからだ。簡単に言うと、中高年向けの番組よりも若い世代に向けた番組を作るべきだということになった。こうして若者向けのコンテンツとしてお笑い番組が再評価されるようになり、その手の企画が増えた。 この流れの先陣を切ったのが、昨年4月にレギュラー番組化した「有吉の壁」(日本テレビ系)である。この番組がゴールデンタイムという「一等地」で大成功を収めたことに触発されて、お笑い番組が一気に増えた。 特に注目されているのが、芸人が持ちネタを披露する、いわゆる「ネタ番組」である。「ザ・ベストワン」(TBS系)、「NETA FESTIVAL JAPAN」(日本テレビ系)、「ネタジェネバトル」(テレビ朝日系)、「お笑い二刀流MUSASHI」(テレビ朝日系)、「千鳥のクセがスゴいネタGP」(フジテレビ系)などが各局で放送されるようになった。 1組ずつ芸人が舞台に立つ形式のネタ番組は、感染リスクが低いためコロナ時代にふさわしい。実力派のベテランから第七世代のフレッシュな若手まで、幅広い層の芸人が出てくるのも魅力的である。オリエンタルラジオの中田敦彦と藤森慎吾=2017年12月、東京都品川区の大井競馬場(奈良武撮影) ユーチューブが盛り上がる一方、テレビの笑いも新たな盛り上がりを見せており、2021年もこの傾向は続くだろう。新型コロナ終息のきざしはまだ見えないが、お笑い界の未来は決して暗くはない。

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    演歌亡びてジャニーズ栄える「ゴリ押し紅白」とNHKの本気度

    片岡亮(ジャーナリスト) 大みそかに無観客で開催される第71回NHK紅白歌合戦を前に「過去20年で最高の視聴率を記録するのではないか」という期待の声が、芸能関係者の間で囁(ささや)かれている。 理由の一つは年内で活動休止する嵐が出演することだ。2017年、翌年に引退を控えた安室奈美恵が出たときも話題になり、歌手別視聴率が最高48・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)を記録した。 嵐は16年の43・7%、昨年の40・8%で2度トップになっており、「ラスト紅白で50%超え、もしかすると21世紀最高となった03年SMAPの57・1%を超えるかも」という声もある。 なにしろ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅者が増え、全体的にテレビ視聴率の底上げが予想されている。コロナ禍での紅白がどんな形になるのか、好奇心を誘う部分もある。 不倫報道で活動自粛中のアンジャッシュ・渡部建が、裏番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ系)で電撃復帰するという予測について、「紅白がかなり数字(視聴率)を稼ぐだろうという危機感から生まれた奇策」と見る向きもあるという。 紅白にとってマイナス面があるとすれば、今年は出場者予測などの事前情報で盛り上がれなかったことだろう。これは、コロナ禍で芸能イベントが激減し、記者たちが情報を小耳に挟めなかったためだ。 正式に出場者が発表されたのは11月16日。表向き、NHKはそれまで出場者情報を漏らさないのが基本だが、実際はそうではない。例年、夏あたりから「〇〇が決まった」と漏らす関係者がいる。 紅白歌合戦は、主にその年の活躍度を基準に出場者の選考をすることになってはいるが、NHKの番組制作者がすべての歌手、バンド、ユニットなどから、しがらみなく好きに選べるわけではない。東京都渋谷区のNHK=2019年4月 早くからアーティストのスケジュールを押さえるには事前交渉が必要となる。紅白に出ない選択をするアーティストもいて、そうなると所属事務所に協力をお願いすることが不可欠だ。そこで、芸能プロ側がNHKに恩を売る形となり、歌手の選考に発言力を持ってしまうのである。ジャニース躍進の傍らで そもそも、古くは暴力団の関与を許していた芸能界だ。ただでさえしがらみが多く、歴史の古い紅白は特にゼロベースで物事を進められない。結果、夏ごろには音楽業界を牛耳るといわれる芸能プロの有力者のもとに、音楽関連会社の役員たちがNHK関係者抜きで集まって事前調整をしてきた。これを紅白直前になってから出場者リストに反映させると世間から見て不自然になるから、わざとマスコミに事前情報を漏らして「最近話題の歌手」という風に前振り的な記事を書いてもらい、外堀を埋める作業もされてきたのだ。 ただ、最近の音楽業界では「ヒット曲」という定義もなかなか難しくなっているのが実情だ。CDの売り上げでいえば1万枚程度であっても、インターネットの音楽配信での実績、動画共有サービスや会員制交流サイト(SNS)などで話題になっている「認知度」が考慮される場合もあり、今年はCDデビュー前の女性グループ、NiziU(ニジュー)が出場する。 その意味ではセールス数値ではっきり優劣が分からないほうが、芸能プロ側のゴリ押しがしやすくなったとも言え、より業界内で紅白に力を持つ事務所が突出しやすくなる。 近年、紅白に出場するジャニーズ事務所のタレントはかなり多く、今年は白組の3分の1にあたる7組が出場。大人気の嵐によって高視聴率が支えられ、NHKはジャニーズへの配慮を止められないでいる。 次に福山雅治、Perfume、星野源、BABYMETALらアミューズ所属の出場も目立つ。白組司会の大泉洋もその枠だ。音楽会社ではMISIA、櫻坂46、LiSA、Little Glee Monster、JUJU、鈴木雅之らのソニーミュージック系も幅を利かせている。 特筆すべきは演歌の衰退だろう。白組が五木ひろし、氷川きよしら、紅組が石川さゆり、坂本冬美らで、それぞれ4人しかいない。年々減少してきた演歌枠はもはや定番歌手のみとなり、新人が入る余地はない。演歌は地方の高齢者などに根強いファン層があるが、CDなどのセールスに結び付きにくく、特に今年はコロナ禍で地方巡業の激減もダメ押しになった。 米国では、演歌に該当するカントリーミュージックが、90年代からロックやポップスを取り入れたモダンスタイルで若返りに成功したが、演歌は作曲・作詞サイドも含めて「大御所先生」に気を遣った業界独特の年功序列が進化を阻んできたところがある。ファン層拡大に苦戦する中、坂本冬美がポップス調の新曲「ブッダのように私は死んだ」(作詞作曲・桑田佳祐)を披露して、新風を巻き起こすことを期待している。 紅白は視聴率が非常に高いことから、出場者にとっては知名度アップの大きなメリットがある。だが「出場すれば年明けからCDがバカ売れ」という時代はとっくに終わっている。短い持ち時間で制限されたライブをやるならば、独自のカウントダウンコンサートをやったほうがいいと背を向けるアーティストも少なくない。 初出場で注目度の高いBABYMETALあたりは、いつものパフォーマンスを見せられるかという見方もある。評判が良くなければ来年以降は辞退ということもありえるだろう。 ジャニーズアイドルが多すぎることで、その手に興味のない視聴者を遠ざけるかもしれないという不安要素があるが、そこで力になるのが演奏力に絶対的な安定感のあるMr.Childrenだ。数少ない大物バンドは環境にも左右されず力を発揮し、「歌合戦」に厚みを持たせてくれる。成田山東京別院深川不動堂でお礼イベントを行った坂本冬美=2019年11月、東京都江東区 世界的な混乱を呼んでいるコロナ禍の中、視聴者を元気づけるような演出への期待も大きいが、これも内容によっては意見が割れるだろう。2年前、桑田佳祐が「勝手にシンドバッド」で松任谷由実とセクシーに絡み合い、キスシーンで大いに沸かせたのは、あくまで歌が主役の歌謡エンターテインメントだったからだ。バラエティー番組のまね事のような小手先の企画をすれば「ちゃんとした歌番組を見せろ」との批判が飛ぶ。音楽番組の本分を忘れない企画で勝負すべきだ。

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    ビジネスモデル崩壊?コロナで現実味を帯びる「芸能事務所」不要論

    片岡亮(ジャーナリスト) 芸能事務所が岐路に立たされている。従来のビジネスモデルが成り立ちにくくなってきたからだ。 これまでは「勝手に事務所を辞めたら仕事を干す」という見えない掟で、タレントの長期契約が慣例とされてきた。だが、公正取引委員会は2018年2月、芸能人などのフリーランスにも独占禁止法が適用されるとの見解をまとめ、芸能界の暗黙の了解にメスが入ると、事務所側がタレントを長期的に「独占」することへの賛否が渦巻いた。 人気タレントはテレビ、映画、雑誌などにとって大きな集客の要素となっているだけに、各業界が芸能事務所に忖度(そんたく)する。 そのため、タレントが報酬や仕事内容に不満を持ったとしても、事務所と対等な交渉がしにくいといった問題があった。また、契約書が1年ごとの更新であっても、タレント側の事情を顧みずに事務所側が自動更新を続けるということも珍しくなかった。 誰もおおっぴらには口にしないが、かつて暴力団が芸能界に関わっていた時代の名残でもある。もちろん、現在では反社会的勢力とのつながりがあれば厳しく処分され、業界追放もあり得るほどにコンプライアンス意識が高まっている。公正取引委員会と検察庁の看板=東京都千代田区(宮川浩和撮影) 「現状はタレントとの契約は長くても3年、もし自動更新なんてしたら無効にさせられてしまう」とは大手芸能プロ関係者の話。公取委が見解を出した影響は大きく、続々と有名タレントが独立を始めた。人気タレントの独立ラッシュ のん(旧名・能年玲奈)が所属事務所からの独立騒動をめぐり、一時的に開店休業状態に陥ったのが約5年前。以降、状況は急変し、中居正広、米倉涼子、柴咲コウ、小雪、栗山千明、菊池桃子、神田うの、城田優、剛力彩芽、手越祐也、江頭2:50などが所属事務所を辞めている。 来年3月いっぱいでTOKIOの長瀬智也もジャニーズ事務所を退所する予定で、まるでタレントが一斉に「縛り」から解き放たれたかのようである。 こうした事情の背景には、インターネットの会員制交流サイト(SNS)や動画共有サイトの普及で、タレントが自らプロモーション活動できるようになったことがある。しかし、本来であれば欧米の映画スターのように、成功して大金を得た時点で「自前」のマネジャーとスタッフを雇った方が、タレントにとって収支的には得なのである。 育ててもらった恩は誰もが事務所に対して持っているものだが、そうした感情論を抜きに極論すれば「芸能事務所不要論」さえ浮上してくるわけだ。 事務所側にも言い分がある。関係者と話をすると、決まって聞かれるのが「無名時代からコストをかけて育成してきたのに、売れたらハイさようなら、というのはおかしい」という主張だ。 確かに心情的には頷ける部分もあるが、そもそも「育成してあげる代わりにスターになったら利益を回収させろ」というビジネスモデル自体が正しいのか、という議論もある。女優の米倉涼子=2018年10月、東京都港区(川口良介撮影) もし、フィットネスジムで熱心な指導者の下、トレーニングして人がうらやむようなナイスボディーになったとして、それを生かした仕事をしようと思ったら、ジム側から「仕事はウチのジムを通してくれ、それ以外は許さん」なんて言われたら簡単に納得できないだろう。マツコの事務所に異変 週刊誌『女性自身』は先日、突然のレギュラー番組降板と芸能界引退発言で注目を集めたマツコ・デラックスの所属事務所が、社員のリストラに着手したと報じた。同事務所の社長は、新型コロナウイルスの影響で経営が苦しくなり、事務所の閉鎖もほのめかしているという内容だった。 おそらく、一握りの売れっ子が大勢を食べさせているという、多くの芸能事務所に共通する歪(いびつ)な収支モデルが関係しているのだろう。稼ぎ頭のビートたけしの独立に合わせてスタッフとタレントから退職希望者が出たというオフィス北野しかり、一般企業と違って芸能事務所は、大きく稼ぐ一部のタレントと、彼らの恩恵にあずかって仕事をもらう者らの集合体になりがちである。 マツコの場合は事務所との関係が良好なのかもしれない。しかし、もし他で起きているように、芸能事務所が所属タレントの「独立リスク」を抱え続けるのであれば、従来のビジネスモデルは通用しなくなる。 「これからは人気タレントをたくさん抱えて、かつ辞めない状況でなければ、芸能界以外の収益があるとか強力スポンサーがあるとかじゃないと事務所は成り立たなくなってくると思いますよ」と前出の芸能プロ関係者も話す。 「吉本興業みたいにテレビ局を株主にするのは特例中の特例。あのジャニーズ事務所だって、グループ主体にして売っているのは、メンバーの1人が辞めてもグループそのものは残り、ファンクラブなどの収益モデルが崩れないからなんです。大手は簡単に崩れない規模を持ってますが、中堅以下になると10年、20年後に生き残っているところは現在の半分以下でしょう」 大相撲で例えれば、相撲部屋ありきだった力士たちが独自に契約したトレーニングジム、指導者、付け人を持って活動していくようなものだ。ルールで認められていないから、そんなことをする力士はいないが、もし可能になったら相撲部屋は早々に役目を終えるかもしれない。トヨタ「パッソ」のPRイベントに出席したタレントのマツコ・デラックス=2016年4月、東京都内 芸能事務所には芸能ビジネスに精通したプロフェッショナル人材が多く在籍しており、タレントの育成・輩出機関としての役割を失わないとしても、それだけで事業を維持することは難しい。 今後の芸能事務所は、それぞれ新たなビジネスモデルを模索しなければならなくなるだろう。変化の波に乗れなければ、コロナ禍がなくとも弱体化は避けられないのではないか、と思うのだ。

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    半沢、わたナギ…夏ドラマでクセになる「幻想おじさん」の楽しみ方

    上村由紀子(フリーライター) 気づけば8月も終わり、9月を迎えるも季節は依然として夏を感じさせる。「夏といえば恋愛ドラマ」だったのはいつの頃までだっただろうか。 反町隆史と竹野内豊の『ビーチボーイズ』や、明石家さんま主演の『男女7人夏物語』、常盤貴子と豊川悦司の『愛していると言ってくれ』など、強い日差しと波の音、セミの声とともにそれらはいつも私たちのテンションを上げてくれた。 「恋っていいなあ、人を好きになるのってステキだよね」と、ブラウン管を眺めていた甘酸っぱい夏の思い出の日々。 そうやって遠い目になりながら、令和2年8月のラテ欄を改めて眺めてみる。地上波のプライムタイムでオンエアされているのは医療ドラマに刑事もの、そしてビジネスの世界を描いた作品ばかりで、恋愛に特化したドラマは見当たらない。 海岸を走りつつ恋する2人が「あはは~」「うふふ~」と笑う世界も、雨に打たれ、「お前が好きだ」と絶叫するシチュエーションも令和の夏には存在しないのだ。 では今、ドラマの世界でキーワードとなっている存在は何か。そう、それは「おじさん」である。今年の夏のヒットドラマは「おじさん」に支えられていると言っても過言ではない。さて、詳しく見ていこう。  今季、おじさんが登場するヒットドラマは「戦闘型」と「癒やし型」の大きく二つに分類される。前者の「戦闘型おじさん」の代表格はTBS系の『半沢直樹』で間違いないだろう。7年ぶりの製作となった『半沢』だが、初回から毎回20%超えの視聴率を誇る大人気ドラマだ。放送中には出演者だけでなく、そのキャッチーなセリフがSNSでトレンド入りするなど、話題性はぶっちぎりだ。 前作で東京中央銀行から子会社・東京セントラル証券への出向を命じられた半沢直樹(堺雅人)。新たな職場ではIT企業の買収案件で銀行側の伊佐山(市川猿之助)や副頭取の三笠(古田新太)から妨害され、宿敵である大和田(香川照之)と一部手を組み、事態をまとめるべく奮闘する。俳優の堺雅人(前川純一郎撮影) その功績により、古巣である東京中央銀行へと返り咲いた半沢だが、そこには新たな魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちが控えていた。負債を抱える帝国航空、そしてその負債を銀行に放棄させようとする政府の関係者。 前半では香川照之、市川猿之助、片岡愛之助、尾上松也といった歌舞伎俳優たちによる「顔芸合戦」が話題となったが、後半にも柄本明、筒井道隆、木場勝己、石黒賢などクセのあるおじさんたちが山盛りである。正直、暑苦しい。だが逆にあの濃さがクセになって画面から目が離せない。多種多様なおじさんたち そして『半沢』の対(つい)となる「癒やし型おじさん」が登場するヒットドラマといえば、先日ついに最終回を迎え、あとは特別編を待つのみとなったTBSテレビ系火曜ドラマの『私の家政夫ナギサさん』である。このドラマは、製薬会社のMR(医薬情報担当者)こと相原メイ(多部未華子)と、彼女の家にやってきた派遣型家政夫の鴫野(しぎの)ナギサ(大森南朋)との交流が柔らかなタッチで描かれた。 大森南朋といえば、NHK総合で代表作の経済ドラマ『ハゲタカ』では、外資系投資会社の「ハゲタカ」鷲津政彦として日本企業の乗っ取りに暗躍するビジネスマンを演じ、小栗旬主演のドラマ『BORDER』では子供を殺害することに全く罪悪感を覚えない男・安藤周夫(ちかお)役で視聴者を震え上がらせた。 そんな彼が『わたナギ』では他者の痛みや悩みに敏感で家事全般が万能、夢は「お母さんになること」という家政夫を演じるのだが、これが全く違和感がない。視聴率も右肩上がりで、最終回に19・6%をマークするなどかなりの好調ぶりである。 さらに、SNSなどで話題を呼んでいる「癒やし型おじさん」ドラマが、眞島秀和主演で読売テレビ製作の『おじさんはカワイイものがお好き。』である。深夜枠であるものの、眞島をはじめ、今井翼や桐山漣といったシリアスもコメディーも両方イケる俳優陣をそろえ、今季ドラマの台風の目となっている。 見どころは、一見クールにキメているおじさんたちが、キャラクター商品や猫などのかわいいものにアツい視線を注ぎ、ビジネスでの顔と趣味に走る姿との激しいギャップを見せる様子だ。特に、温和だがクールに仕事をこなす小路三貴(おじ・みつたか)こと、「おじ課長」を演じる眞島の振り切れた芝居が面白い。ある時期までどちらかというとシリアスな役柄が多かった眞島だが、『おっさんずラブ』以降、真面目にやればやるほどおかしいという演技で新たな一面を魅せている。 さて、ここまで令和2年の夏ドラマでハジけるおじさんたちについて触れてきたが、あなたはお気づきだろうか。それは、今季のヒットドラマで描かれるおじさんたちに「恋愛要素がほぼ皆無」であることを。 『半沢』は言うに及ばず、『わたナギ』でも主人公メイの、ほのかな気持ちは表現されるが、ナギサさんは草食おじさんを超えた「お母さん」なので急展開はない。さらに『おじカワ』に至っては、彼らが恋する対象は「キャラクターと猫」であり、「人間」ですらない。俳優の大森南朋(左)と眞島秀和 また、3作のヒット&話題のドラマに登場するおじさんたちはどれも過剰といえるレベルでデフォルメされており、全くリアルな存在でない。かたや銀行で時代劇を繰り広げるバンカー、一方ではコワモテなのに家事が完璧な家政夫、人間より犬のキャラクター・パグ太郎に執着するビジネスマン。 そう、ドラマのメイン視聴者である女性たちは、もはや「リアルなおじさん」を欲してはいない。彼女たちは会社や家庭でおじさんたちの対応に追われ、せめてテレビ画面の中では現実とかけ離れたファンタジーとしてその存在を愛(め)でていたいのだ。悲しいかな、リアルおじさん、受難の時代である。

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    「ベテラン斬り」コロナを言い訳にできないテレビ界の黄昏

    片岡亮(ジャーナリスト) 「小倉智昭“勇退”で『とくダネ!』が来年3月終了」。7月末、このようなタイトルの記事が『週刊文春』に掲載された。 記事には、1999年4月から始まったフジテレビ系平日朝の情報番組『とくダネ!』の2021年3月終了が決まり、司会を務めるタレントの小倉智昭にも7月上旬に伝えられたとしている。 さらにその背景として、新型コロナウイルスの影響で広告収入が減ったフジが制作費を削減するため、出演者に高額なギャラを支払っている番組の見直しを迫られていることを挙げている。『とくダネ!』に先立ち、安藤優子がキャスターを務める午後の情報番組『直撃LIVE グッディ!』の9月終了も決定したという。 筆者がスタッフに聞いたところ、記事掲載前に飛び交っていたのは、「文春に記事が出るらしいけど、どんな内容だろうね」という話だった。つまり、現場サイドでは、小倉の降板話が出ていなかったということになる。ただし、読んでみた感想は少し期待外れだったという。 「『文春砲』のことだから、もう少し突っ込んだ内幕が出ているのかと思ったので」 スタッフがそう言うのも、コストカットに伴う高額タレントのリストラは新型コロナウイルスの感染拡大前から、フジに限らず各テレビ局の課題となってきたからだ。 小倉に対しても、昨年末に「東京五輪のキャスターを花道に退くかもしれない」という話がささやかれていた。五輪延期で白紙になったものの、「小倉さんの勇退自体は既定路線ですから。その先の、僕ら現場の知らないところで上層部が決めた具体的な最新情報が記事にあるのかと思った」と先のスタッフが言う。キャスターの安藤優子=2015年3月(小倉元司撮影) 近年、各局は既に経費削減に関して、かなり努力を続けている。各番組ごとに出していた取材も、映像素材を共有化することで取材班を縮小したり、編集責任者であるデスクに複数番組をまとめて担当させている。 ただ、その中で高額なギャラの芸能人をリストラするのは、最もハードルが高い。毎度話題にはなっても実際に決断されないことも多く、かなり詳細な話でなければ、スタッフ間では「またか」との感想を抱きがちなのである。高報酬もらえない「お決まり」 テレビ界で、ベテラン芸能人やキャスターが視聴率に見合わなくても高額ギャラをキープできる理由がある。基本「ギャラ相場」は上げることはあっても下げることがないのが、業界の不文律だからだ。そして、一度定まった相場は、各局で密かに情報交換され、足並みを揃える習慣もある。 「ギャラの管理は番組ではなく、経理が行いますからね。番組で初めて起用するタレントには、タレント側の芸能プロダクションよりも、まず経理に『過去いくらでした?』と聞くか、他局にいる知人に教えてもらうので、自然と相場が出来上がるようになるんです」と、あるバラエティ番組のプロデューサーも習慣の存在を裏付ける。 実は、この慣習こそ「日本型雇用」の代名詞である終身雇用や年功序列からきているものでもある。成果を出す若手社員がいても、それに見合う報酬はすぐには得られず、いわゆる「後払い」要素が強い。人事評価にもキャリアが含まれていて、長期間務めてきた人の報酬アップが優先される。 テレビ界でもこれに近いものがある。若いタレントにどれほど人気が出ても、すぐには高報酬を得られないのが芸能界の「お決まり」であった。 つまり、「若手時代では安い給料に見合わない仕事量でも、長くこなせるようになれば、将来報われる」という日本の一般社会と同様の概念がある。小倉は「絶対に局側から辞めてくれとは言えない方」と断言する『とくダネ!』の元ディレクターが理由を次のように説明している。 「とくダネは現在の情報番組の基本スタイルを作った草分け的存在で、それまでビッグニュースを1時間かけてやっていたのを、ネタを細かく分けて矢継ぎ早に放送する画期的な手法で視聴率を伸ばしたんです。今では他局の情報番組もこぞって真似するようになり、それは当時のスタッフ全員の功績でもありますが、その方向性で司会をこなしてくれた小倉さんも当然大きな功労者です。大幅な経費削減の役目を担った宮内正喜前社長は、『局員の給与を見直す』とまで公言しましたが、あの方でさえ小倉さんの肩は叩けなかった」タレントの小倉智昭=2017年12月 ただ、一般社会では近年、長期雇用に対する信頼性が崩れ、若い人材が「10年先には報われる」などという気の遠い目標に我慢できなくなってきている。企業でも、スピードアップした成果主義により、即戦力になるなら新入社員でも高く買った方が得だという考え方が増えている。そうでもしなければ、優秀な人材を確保できなくなるからだ。 これはテレビ局にも同じことがいえる。ベテランタレントの多くが一定の視聴率こそ取れていても、高額のギャラに見合うとは必ずしも言えず、過去から積み重なった「功労金」込みとなっている芸能人が大半だ。それにベテランに頼りきりでは、番組は若い人気タレントの確保に遅れをとってしまう。「お役御免」 日本のテレビ局は基本、放送法や電波法などによる免許制の下で「電波利権」が守られ、大きな収益が保証されてきた。だから、割高に思えるギャラであっても許されてきたわけだ。 ところが、インターネットの普及という時代の波にテレビも押され始め、ついには広告費もネットに首位を明け渡すほどのビジネスモデルの変化をもたらし、新型コロナ禍がダメを押した格好だ。背に腹はかえられなくなった各局も、どこかで区切りを付けることを余儀なくされている。 7月末、タレントの上沼恵美子が放送25年を迎えたばかりの長寿番組『快傑!えみちゃんねる』を放り投げるように突然終わらせてしまったのも、例外ではなかったといえるだろう。 一部では、他の出演者とのトラブルが原因のように伝えられているが、筆者が関係者から聞いた話では「番組の将来についての話を切り出したところ、上沼さんの逆鱗に触れた」というものだった。この先、番組の終了やリニューアルにあたって何らかの提案をしたが受け入れてもらえず、「だったらすぐ辞める」となってしまったのではないか。 安藤も5年前に夕方の報道番組『スーパーニュース』の終了が取り沙汰された際、経費削減のあおりを受けて「BS番組に移るらしい」などという噂が立った。このときは、さすがにフジ報道の功労者だったこともあり、新番組『グッディ!』へのスライドにとどまった。 これは報道に限らず、あらゆるジャンルの番組で見られる傾向だ。お笑い芸人やジャニーズアイドルでも、ギャラの適正化を促すように「高いベテラン」より「若いタレント」を起用する話があちこちで聞かれるようになった。安藤にしても「お役御免」の判断を下されたというより、方向性の変化といえる。ABCラジオ「上沼恵美子のこころ晴天」の放送を終え、車で朝日放送を出るタレントの上沼恵美子=2020年7月27日 約2年前、筆者が『グッディ!』に出演した際に目の当たりにしたのは、安藤の「番組采配」の妙だ。台本に頼ることなく臨機応変に進める姿に、さすが33年にわたってフジの報道・情報番組で一線を張ってきた凄みを感じた。このように、ベテランタレントのスキルには他に代えがたいものがあるから、ギャラなどの条件さえ合えば、活躍の場はあるだろう。 ただ、テレビ界では、ギャラをいきなり半額に値下げして交渉するような習慣がないため、下手をすると突然画面から消えて、一切姿を見なくなることもある。最近は大手プロダクションから独立して個人事務所を設立する芸能人も増えているだけに、直接的な条件交渉の方がやりやすいタレントなら生き残れるかもしれない。 それも無理なら、ネット番組やユーチューブで最後の勝負に出るということもあるだろう。ただ、ネット番組はテレビと違って成果主義の傾向がより強いため、プライドの高い芸能人ほど勝負するには勇気が必要になることを忘れてはならない。

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    TOKIO長瀬も退所、帝国弱体説を覆す「滝沢ジャニーズ」の本領

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家) TOKIOの長瀬智也が来年3月末で脱退し、ジャニーズ事務所も退所することが明らかになった。このところ頻繁に取り沙汰されるジャニーズに関するニュースは、脱退や退所、独立が多い。これを踏まえ、今回は新体制のジャニーズについて考察したい。 ジャニーズ事務所創業者で前社長のジャニー喜多川氏亡き後、事実上の後継者とされる滝沢秀明(タッキー)副社長の手腕への疑問や求心力の低下を指摘する声は少なくない。ただ、これは果たして真実なのだろうか。 確かにジャニーさんがいなくなったジャニーズは、これまでとは大きく異なっている。完全なるピラミッド型の体制だったが、その頂点を失って1年あまり。当然だが、トップが代われば、どこでもその企業体質は変化する。 よく知られているが、ジャニーズは、特にカリスマ性が武器でもあったジャニーさんという存在そのものが失われただけに、危機感が広がったことは否めない。ただ、企業としてのジャニーズが不動のまま在り続けられるのは、作り上げてきた財産と資産が盤石だけにこれは揺らぐことはないだろう。 ではなぜ、所属タレントの流出が止まらないのか。企業体としてのジャニーズは安泰であり、もちろん業界最大手のプロダクションとしての地位も健在だ。その威厳と権威は余裕さえあり、逆に言えば余裕があるがための自由と不自由がタレントたちに大きな影響を与えているという側面もある。 そもそも、暗黙の了解として「ジャニーズに逆らう者がいない」という状況がある。根本的に「ジャニーズに代わるものがない」といった方が分かりやすいだろうか。メディアもファンもわざわざジャニーズを選んでいたワケではなく、必然的にジャニーズに目が向き、意識が集まるといった具合だ。ジャニーズでなければダメというより、ジャニーズ以外にない「唯一無二」の存在だということだ。  「そろっている」から「無難」という認識まで、さまざまな表現があるが、「ジャニーズでダメなら他の何を起用してもダメ」と某有名プロデューサーも強く言っていたぐらいだ。テレビに限らず舞台の演出家から映画監督まで「ジャニーズを目指せ」「ジャニーズを見習え」「ジャニーズに負けるな」、多くが口癖のように使う「教え」が業界にはある。 頂点にジャニーズがあり、そのジャニーズを使えるならそれ以外は考えられないということだ。ただし、その価値が将来、未来永劫、完全なる形で残るとは限らない。ゆえに、ジャニーさんを欠いたジャニーズにこれまでと同じ「優遇」があるのかどうか、それは他ではなくジャニーズ事務所そのものが不安視しているところでもある。そこで白羽の矢がタッキーに向けられ、今まさに副社長としての地位とジャニーさんの遺志を継いだ体制を整えている最中なのだ。※(イラスト・不思議三十郎) 世間の懸念とは裏腹に、評判はすこぶるよく、タッキー副社長のプロデュース手腕を否定する要素は見当たらない。タッキーも百戦錬磨のプロであって、むしろタッキーの上がいるのかと思うぐらいだ。一方、現社長の藤島ジュリー景子氏にせよ、初めての社長ではないし、これまで多くの事業を立ち上げて成功させている経営のプロそのものである。タッキーの本領発揮はこれから ジュリーさんが、メリー喜多川会長(ジャニーさんの姉)の後を継ぎ、タッキーがジャニーさんの遺志を継ぐ、然るべき体制となったと言えるだろうし、ジャニーさんの願いでもあるカタチが生かされている。 タッキーへの「生前贈与」こそ、ジャニーズの将来を賭けた遺志とも言え、ジャニーさんが生きている間にこうなっていても不思議はなかった。これはこれまでにも強調してきたことだ。 ジャニーさんの役割は、ジュニアの選定(入所)と育成(教育)からデビューまでが主だった。ジュニアとなったタレントたちに手を施し、さまざまな場面(仕事)を与え、グループやユニットを組んで試したり、出したりして実践・現場で成長させる手法だった。 そしてデビュー(音楽)に至ってからはコンサートを中心にプロデュースしていくが、これらの流れをタッキーが担っている。また、マネジメントはデスク(チーフ)や担当(現場)が執り行い、総じてまとめるのがメリーさんだったが、ジュリーさんに代わり、この伝統的な役割は変わらずに引き継がれている。 要するにジュニアからデビューまでと、コンサートや舞台の制作総指揮を担えば現在上にいるタレントたちへの関与は大きくなく、タッキーが副社長だからといって、特に状況的な変化はない。つまり、タッキーの見せ所は水面下かつ新型コロナ禍で失ったリアルステージにあり、本来の手腕はまだ発揮されていないのだ。 ジュリーさんにおいては、副社長を長く担っていたことに加え、グループ会社では以前から社長を務めており、改めてメリーさんから引き継いだのは実務より「立場」だけといっていい。そういった理由と意味では特に変わってないと言えるが、影響が大きく響いているのは年齢的な展望意識を持った所属タレントの「大人」たちである。 成長過程にある若いタレントたちは将来より「現在(いま)」が大事だ。一方で大人たち、強いて言えば30代以降で大きく成長を遂げ、ほぼ完成された子(タレント)たちが考える「現在と未来」については、「これからの自分」を考えた際に、選択肢に「次」という意識も芽生えるのは当然だ。(イラスト・不思議三十郎) 独立や退所という選択肢は芸能人に限らない。起業や開業を志すエリートもたくさんいる中で、珍しいことではないからだ。「ワケあって辞めました、辞めさせられました」は別として、嵐の大野智や長瀬など、立場や環境が違えど、思うところはほぼ同じだ。「中年大国」のジャニーズ 嵐ではない自分作り、TOKIOとは違う自分の人生、歳は中年に差しかかろうとしている時期に一般の人でもそれなりに「今とは違う将来や展望」をいろいろと考えるものだ。特に成功して資産(有名著名)と財産(預貯金など)があり、それが余裕であるならば、あと欲しいのは時間と自由だ。 もちろん、ジャニーズに残ることで得られるものもあるだろう。しかし、大手プロダクションならではの立場からできない、やり辛いことも多々あるのも事実だ。NEWSの元メンバー、手越祐也が会見で語っていたように、「スピード感」も重要だ。 手越曰く「もう32歳、自分の責任でできることがある」、そういった理由からも思い切った行動として大きな変化を求めるためには今を作り替えるか、または壊して新たなる道を探るのも人生だ。 事務所も個人もこの「余裕」があるため、いや「余裕があるうち」といった方が正解だろう。こういった現況変化に十分対応できるところがポイントの一つだ。事件や事故を起こされたり、倫理的に反した行動や不祥事に目をつむったりすることができないのは当然だが、解雇や活動停止など告げるのも、それを受けて辞めていく者にも多少なりとも余裕が感じられ、これもジャニーズアイドルならではだろうか。 もっともジャニーさんがいたらと思えば多少なりとも「まだ」というのもあったかもしれない。恩義を残して提携的な独立に成功したSMAPの中居正広はよい例だが、ジャニーさんの有無に関係なく大野や長瀬は自らの意志で道を大きく変えていた。時間次第と言われていた長瀬については、説明さえ不要で、母体であるTOKIOの音楽活動が全くないのなら自らの居場所がないのと同じだ。 人生を見つめたら「このままでいいのか?」と先行きと展望を踏まえて「(余裕がある)動ける今」しかないという一念発起も疑うことはない考え方だろう。このまま飛躍していくのか、進化や変化を遂げて大きくなっていくのか、はたまた安泰と安定を求めて無難に送りたいのか、それは性格の問題であってジャニーズがどうこうということではない。(イラスト・不思議三十郎) そもそも、ジャニーズがアイドル帝国とはいえ、年齢的にはほぼ全員が大人である。むしろ中年大国でもあるくらいだ。その社会人たちが従事している仕事がアイドルや歌手、俳優というだけで、人間的な考えや思いは変わらないが、有名著名人という立場においては制限や制約が厳しくなるのは当然のことである。 それが足かせとなって邪魔に思うこともあるだろうし、またそれがあるからこそ今の自分があるという感謝もまた然りだ。やりたいことがあるならできるうちに挑戦したいと、そう思うことは至って普通ではないか。そうするための変化を求めてステージを変えるやり方もまた不思議に思うことはないはずだ。「25年」の壁 以前「大人になったジャニーズたち」を題材に書いたことがあるが、「アイドル」や「少年」が基本のジャニーズタレントが大人になって結婚や子作りまでして、まだ活動を続けているというシチュエーションはおそらくジャニーさんもあまり考えていなかったはずだ。それを打破したSMAPから時代が大きく変わり、ジャニーズのグループが「解散」から遠のいた結果、今のような「オトナ社会」になってしまった。 10周年どころか20周年を超えて活動を続けてきただけでも奇跡的と言ってもいいだろう。それも第一線でのことだ。そろそろ「次」をカタチにしたいと思えば彼らの行動はむしろ妥当な考えだ。皆が子供のころと大人の今が違うようにアイドルたちだって大きく変化していくのである。 夢を追いかける子供と完成された大人、それは取扱いが全く異なるのも想像に難くない。それにしても、今の若い子たちは具合が悪ければすぐに休むし、都合がよくないとすぐ辞めるし、いわゆる「甘え」も存在しているのは事実だ。昭和にはなかった子供(大人)事情に天下のジャニーさんも晩年は相当、苦労したとみられるのはSMAP解散騒動でよく分かる。 結局のところ、彼らはそれだけ自由だということだ。それに気が付いて行動できるタイミングがいつなのかと考えた、それだけのこと。至極人間的な思想や希望に際した考えや行動は年齢との相談において図るのがやはり普通である。 今のままが心地よければそれでよし、もっと違うことや大きなこと、あるいはすべてリセットしたいなどもあるだろう。それぞれだが、それにしても「25周年」というイベントはなかなかうまくいかない。 実は、ジャニーズではデビューから25周年という記念的なイベントが開催されたことがないのだ。デビューから25年経った記念すべき年にモメて解散したSMAPより前は論外だが、ちなみに少年隊は38年という長い歴史はあるものの活動休止状態があまりにも長い。 今回クローズアップされたTOKIOについても、25周年を前にして山口達也の脱退、これにより音楽活動休止となり、アニバーサリーなる雰囲気も消滅した。実は「25年の壁」とも言える呪縛を打ち破るのはV6が初になる。2020年、まさに今年がちょうどデビュー25周年の節目にあたるのだが、新型コロナの影響でおそらくそれどころではない。ジャニーズ事務所=2019年7月、東京都港区 KinKi Kidsも23年目で大きく期待はされているが、次点の嵐は20周年を超えて活動休止宣言。とりわけ、おおよそ20~25年が活動の目安なのかと思いたくなる。メンバーそれぞれがほどよい年齢になったゆえに、人生を見つめ直したり、トラブルに見舞われたりするということだろう。 そもそもジャニーズはみんな「少年」であり、中年になりそうな時期に一旦止まって考えるだけだ。そういえば、関西テレビの人気バラエティー番組『快傑えみちゃんねる』も25年で終わりだとか…。

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    政治へのホンネを露わにした小泉今日子の気がかりな「新境地」

    片岡亮(ジャーナリスト) 5月31日、歌手で女優の小泉今日子が共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版で大々的に掲載され、女優の渡辺えりとオンラインで対談して注目を集めている。渡辺は「赤旗」で共産党支持を表明し、インタビューなどにもたびたび登場している。小泉も近年、政治的な発言を続けており、しかもリベラルのスタンスを鮮明にしたこともあって物議を醸している。 小泉は、自身が代表取締役を務める制作会社「明後日」の公式ツイッターでも、東京都知事選への投票を呼びかけたり、小池百合子知事の再選という結果を受けて「現実は受け止めないといけないが、投票率の低さに驚いた」と感想をつぶやいていた。 中でも注目が集まったのが、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案に対して、反対のツイートを連発したことだ。改正案を含む国家公務員法改正案は結局廃案となったが、5月25日には産経新聞記者、朝日新聞元記者との賭けマージャン問題で辞職した東京高検の黒川弘務前検事長の処分について言及していた。多くの人が「おかしい」と感じ、社会的にも反響の大きかった問題だけに、意見を表明すること自体は特筆することでもない。 ただ、その内容が、安倍晋三首相の写真が掲載された記事とともに「こんなにたくさんの嘘をついたら、本人の精神だって辛いはずだ。政治家だって人間だもの」というものだった。明らかに権力者に対する皮肉で、強い政治的メッセージだといえる。 小泉だけでなく、日本の俳優や歌手がこうした問題に意見を述べるたびに騒がれ、「芸能人が政治的発言をすることへの賛否」が持ち出される。ただ、その点への議論が深まることはなく、単に発信者の内容に対する極端な賛否だけがもっぱら注目されて終わってしまう。今回の小泉に対するネット上の反応を振り返っても一目瞭然だ。 「政治利用されている」「共産党に取り込まれた」などと小泉がまるで思考停止した広告塔と勝手に位置づけて批判する声や、「日本から出ていけ」と非国民扱いするものまであった。女優の小泉今日子=2018年9月 一方で反政権の意向を持つ人は、小泉が何者か、その職業に関係なしに「選挙に出てほしい」とか「純粋な思いで発言している」と支持している。このように、発言内容で物議を醸したのではなく、単に有名人が各自の政治信条を述べて、その影響力を含めて賛否を示しているだけなのだ。 三原じゅん子や今井絵理子、蓮舫のように現職だけとってもタレント出身議員は山ほどいるし、山本太郎は参院議員や政党党首に就き、東京都知事選に出馬した。このような現状で、そもそもタレントの政治的関心自体を議論することさえ無意味な話だ。型を破ったアイドル 中には「タレントが政治に首を突っ込むな」という国民の権利や民主主義すら否定する人もいる。しかし、こんな主張は「ではどんな職業だったら政治の話をしていいのか」という反論で一蹴されるのがオチだ。 結局、小泉の政治的発言は、彼女のスタンスに対して好き嫌いを明確にさせただけだ。 そうなると、人気商売の芸能人にとって、国民を分断する論争に積極参加することは、本来得策ではないといえる。多くの芸能プロダクションが所属タレントに政治的発言を控えるようにクギを刺すのは、むやみに嫌われたり、好感度を下げることでCMなどの出演オファーから外されることを恐れるためだ。 事務所の求めに従う芸能人にしても、「ビジネス上の中立」を見せているにすぎず、選挙になれば与野党のいずれかの候補には投票している。米国では、タレントの政治的発言そのものが賛否を巻き起こすことはなく、戦時に反戦を訴えた女性カントリー歌手が保守層の多いファンから猛批判を浴びたことで謝罪した例があったが、こちらもビジネス上の損得を考えた上で撤回しただけだった。 小泉の場合は、急に政治色を強めたようにも見える。だが、もともと彼女はアイドル時代、従来の着せ替え人形のような、それまでのアイドルのステレオタイプから脱却し、自己主張を強めたキャラクターでさらなる人気を得た女性である。 これまで政治的発言が目立たなかったのは、大手事務所に所属していたことが大きい。2018年2月に独立し、自由に発言できる立場になって「たとえ仕事を失ってでも自己主張はやめない」という姿勢を本当にとっているのだから、自己主張キャラはむしろ本物といえるかもしれない。女優の小泉今日子=1984年7月撮影 先ごろ、大手事務所から独立した途端、種苗法改正案に関して言及して物議を醸した柴咲コウも同様である。今後は独立して事務所に縛られずに自由な発言をする芸能人が増え、その言葉に対する好き嫌いの感情を露わにした人たちが支持と批判を繰り返すのだろう。その裏には、19年に芸能事務所を退所したタレントの活動を一定期間禁止するような、事務所が強い立場を利用した契約は許されないと公正取引委員会が判断したことも後押ししている。 しかし、当たり前だが、日本国民として政治的発言は言論の自由であり、何ら問題のない話である。ただ、芸能人という職業を「プロフェッショナル」という視点から捉えればどうだろうか。 お笑いコンビ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔は政治的関心を強めるあまり、本業の芸にまでその色を持ち出したため、「笑い」という観点では以前より面白くなくなったとの声が多々ある。もちろん何をしようが彼の自由だが、今や人を笑わせる漫才師というより、評論家に転身してしまったかのようだ。「本業」にはプラス? ただ、ビートたけしのように政治もネタとして扱いながら芸人の枠を超えたスターになった成功例もあるだけに、方向性を間違ったとはいえない。ただ失敗すれば、本業に徹することができない「芸能人の出来損ない」と見られるリスクがある。 独立後、プロデューサー業に専念しているとはいえ、小泉の本業は女優だ。「さまざまな役を演じる」ことが仕事であり、その道のプロとして見れば、わざわざ素のキャラを見せて反政府的な色を付ければ、今後の演技に影響が出ることは否めない。 フーテンの寅さんを演じた渥美清のように、演じる役に感情移入してもらうため、つまりは自分の芸を守るために私生活を見せないようにしてきたプロはたくさんいる。 亡くなるまで家族が笑えるコントで勝負し続けた志村けんは、自ら生み出す笑いに邪魔になるような無駄な主張は控えてきた。ある大物俳優は私生活では熱心な自民党支持者だったが、そのことを公言したことは一度もなかった。 小泉が人として何を主張しようが自由だし、彼女の政治信条を支持する人もたくさんいるはずだ。その中に、彼女の本業である女優としてプラスになるかどうかを考えている人がどれだけいるだろう。これから何を演じても政権批判している素の表情がちらついて、ドラマや映画に集中できない視聴者や観客が出てきたらどうか。 また、この上ないキャリアを築いた大女優として見れば、主張に物足りなさを感じるところもある。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの芸能・演劇関係者が苦境に陥り、政府に俳優や声優の公的支援を求めたことが話題となった。「赤旗」でもこの話を取り上げ、支援のある海外の事例を語って「日本だってやればできるはず」と主張している。タレントの志村けんさん=2016年9月撮影 芸能という娯楽は大衆文化でもあって、必ずしも公的支援を受けなければ成り立たないものではない。プロスポーツでは無観客興行やクラウドファンディングで運営資金を募るなど、知恵を絞って自主努力を進めている。 小泉ほどの立場にある大物女優であれば、同業者の緊急事態に「政府はもっと支援しろ」というのが最初の主張なら少々残念な話だ。それに、彼女の興味が演技から政治にシフトしているという証でもある。 純粋に彼女の芸に惚れてきたファンなら、単に「そんなことよりも、よい演技と歌を見たい」と思っていることではないだろうか。

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    「大人ぶった子供」手越祐也のヤンチャキャラに滲む一抹の不安

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家) ジャニーズ事務所を退所した元NEWSの手越祐也が6月23日夜、ユーチューブで生配信しながら行った記者会見は、ファンらの目にどう映っただろうか。 およそ2時間、まさにしゃべりまくった独壇場といえる会見だったが、総じて感じた印象は「大人ぶった子供」である。芸能界しか知らない32歳にしてはがんばったと思うが、自分を守りたいという意思ばかりが際立った。 同時に手越のキャラである天真爛漫さとサービス精神が生かされた面もあり、本人的にはセーフティーに進めることができたと、安堵しているのではないだろうか。 ただ「手越祐也」と自らの名前を連呼しながらビジョンを熱く語り、今後の活動を宣伝するかのような必死さはファンから見て痛々しかったのではないだろうか。また、冒頭で強調した「円満退社」と事務所や番組のスタッフに向けた感謝のメッセージも「飾り」としてうまく使おうとした意図が滲み、マイナスだったかもしれない。 会見で明らかにした「ジャニーズ側から突然、弁護士を立てられた」「藤島ジュリー景子社長と滝沢秀明副社長には会ってもらえなかった」、この二つ(対話はなく交渉は弁護士同士のみ、最上層部とは会ってもらえなかった)が証明しているように、決して「円満」ではないことが逆に浮き彫りになった。 このように、ジャニーズと揉めている関係性が印象付けされてしまえば、今後の芸能活動に多大な影響を及ぼし、業界から干される恐れが増してしまう。また「契約」による決まり事で悪くは言えないのも分かるが、あざといくらいに健全さをアピールしている様子にあきれる視聴者も少なくなかったはずだ。 前日からテレビやスポーツ新聞で「会見」の予告が報じられ、その宣伝効果もあってなのか、一時的には130万人を超える視聴者を獲得したが、次第に減少して50万人以上が途中で離脱して終わった。 会見時間が長かったことに加え、しつこいぐらいの自己アピールを嫌ったのか、会見の「核心」、つまりジャニーズとの確執的な部分で明確な回答が得られず期待に反したことも要因だろう。記者会見を終え、得意のポーズを決める手越祐也=2020年6月23日、東京都千代田区 いずれ辞める、いつか辞める、そして間違いなく辞める、と言われ続けてきた手越の退所そのものは突然発表されたという雰囲気だが、実は「方向性」としてかなり前から準備されていた。本人も言うように、遅くとも3月には決めていたところ「やりたいことをやる」「ジャニーズにいたらできない」に集約してこれを実行したにすぎない。 手越が言う「やりたいこと」は、本来ならジャニーズに所属していてもできることが多い。ジャニーズと言えども、それなりに自由な面はあり、数々のスキャンダルを起こした手越が、ジャニーズで活動を続けていたことが何よりの証左だ。底をついた信用 ただ、自由に楽しく謳歌しすぎたのか、ビジョンが広がりすぎて足元が見えなくなってしまったのか、歯止めが利かなくなったタレントに危機感を覚えるほどになれば、事務所が勧告するのも無理はない。それでも変わらないのならば罰を与えるのは当然であり、致し方なく関係を断ち切ることもある。 素行不良で解雇された田中聖(元KAT-TUN)と異なる部分は、手越の人気と性格が大事にされていた点だ。それでも「行き過ぎた行動」においては簡単に目をつぶることができなくなったということだろう。 業界最大手となれば影響力も大きいことから、ある種の「お手本」的な立場でないとならない使命感があり、厳しく対処せざるを得ない。冒頭で記したように、32歳の社会人として考えや行動が子供すぎた結果にほかならない。 要するにキーワードは「自粛」である。これができないのならば出て行って構わないという事務所の姿勢と「不要ではない急なる用事」で「法を犯しているわけではない」「事前にマネジャーに報告している」といった強気の手越の意見が対立したことが悪い方向に転がったというところだ。これまでのスキャンダルも含めて事務所からの信用が底をついた結果でもある。 事務所の上層部からすれば、前社長のジャニー喜多川氏が亡くなった昨年7月9日の前日、飲み会でドンチャン騒ぎしていたという事実は許せない所業だ。最大の恩人が危篤で苦しんでいる最中のことであり、ジャニーズの所属タレントにとっては「家族」である。 特に病室で見守り続けた滝沢秀明や東山紀之あたりは「こんなときに…」という思いが強く残っているはずだ。 こうした思いを募らせていた中で発覚したコロナ禍での不謹慎な行動で、それが決定打になったのが真相であり、「円満」な部分はどこにも見当たらないのは誰の目にも明らかだ。にもかかわらず、マスコミを前にサービス精神満載で健全さをアピールすることで「今後の手越」をかなり押し出した感がある。 会見でしきりに繰り返したのは「今後」だ。手越曰く、これも「パフォーマンス」なのだろうが、倫理的な解釈が一般的な感覚と大きくズレていることの表れであり、そこを本人が理解できていないのはイタイ部分だ。 一方、天真爛漫で猪突猛進というだけで、悪人ではないことが分かるだけでなく、才能豊かなタレントと評価されているのも事実。それだけに、今回の「失敗」の始末の行方やファンがついていけるかどうかは不透明だ。トークイベントに登場した歌手の赤西仁=2016年6月、東京・表参道ヒルズ ジャニーズを退所したことが、失敗ではなく成功との見方もある、SMAPの元メンバー3人による「新しい地図」や、元KAT-TUNの赤西仁などの独立でさえ、ジャニーズに所属していたときに比べファンは半数以下でしかなく、それもさらに減っているのが現実だ。それを恐れていれば「やりたいこと」は何一つできないわけだが、若い今だからこそ行動することについては賛成だ。ジャニーズ所属でこそ ただ「ジャニーズ」の所属かどうかで、全く異なる環境に感覚が慣れるまで違和感に苛まれることは避けられず、それを突破できるだけのテクニックが重要だ。ジャニーズでない手越、NEWSではない手越、これを定着させられるかどうかで先行きは決まっていくが、ファンの心理は全く別のところにある。 手越やNEWSのファンと言っても、それはジャニーズのファンである。言い換えればジャニーズでなければ興味がないといファンはかなり多い。たとえ同じモノであっても「似て非なる」ものであり、ファンは素直に受け入れてはくれない。 ライブハウスですぐ近くの目の前で歌う手越より、遠くて小さくしか見えないドームやアリーナで無数の歓声に包まれている「王子様」に魅力があるのだ。 それはこれまでに退所したタレントが証明している。ドームを幾度となく満タンにしたスーパーアイドルもジャニーズを出た後、同レベルのステージに返り咲くことは一度もない。もちろん光GENJIやSMAPの元メンバーでさえ同じだ。米国で成功を収めたとされる赤西でも現実はそんな気配さえない。 変わらないステータスを維持しているジャニーズ出身の最も成功した例は、郷ひろみだが、時代も形態も異なるので比較はできないだろう。最初からソロの田原俊彦(トシちゃん)も「たのきん」では可能だった球場コンサートも一人ではできないし、ヒット曲でさえ見当たらない。 ファンの数や会場の広さがすべてではないが、ジャニーズかどうかの違いだけで大きく立場は変わるということだ。「これまでと変わらぬご支援をよろしくお願いします」と言ったところで、全く通じない。そもそも、ジャニーズではない手越に需要があるのかどうか問われ「ある!」と言えるのかどうか、その答えはすぐに分かるだろう。 会見での手越の言葉を踏まえれば、タレントであり、アイドルであり、アーティストであり続けたいという願望は、持ち前の対応力である程度は実現するだろう。中身はどうであれメディアを活用したパフォーマンスやライブなどの活動に制限がなくなるだけに、自由な展開が可能になり、また自慢でもある「プレーン」との共存において一定の成功は可能だ。 とはいえ、再度強調するが、ジャニーズであるかないかで芸能界での立場が大きく違うのだ。同じ人間が同じことをやっても「認められない」ということなのか、あるいは需要や「価値」そのものが失われてしまうか、改めて思えばジャニーズのチカラというのは絶大であり絶対的なものなのだと感心する。 トシちゃんが「地上波復帰」とか、最近では今井翼(タッキー&翼)に連ドラが決まるとか些細なことが話題になるくらい恵まれない環境に陥る元ジャニーズ組。手越は「落ちた」と言われたくないと逆に邁進して向上してやるという勢いだが、芸能界には見えない壁と深く長い溝が自分を囲っていることを目の当たりにするはずだ。 そんな厳しい環境下でも、手越に可能性があるとすれば、立ち居振る舞いの器用さが武器になり、人脈の使い方や用意周到さなどの行動力だ。それ加えて、ルックスとポジティブな性格も才能の一つといえよう。会見に臨む手越祐也。右は高野隆弁護士=2020年6月23日、東京都内(蔵賢斗撮影) これまでにないジャニーズアイドルというポジションと、またこれまでにない脱退・退所の方法と新しいスタートスタイルがどう影響していくのか。賛否両論はあり、私は評価できないが、ファンや世間からみれば、初めの一歩としては、あの会見はどちらかといえば成功なのかもしれない。

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    米倉涼子の円満独立で分かった芸能界に「寄る年波」

    片岡亮(ジャーナリスト) 人気女優の米倉涼子が3月24日、27年間所属してきたオスカープロモーションを3月末で退社することを発表し、芸能界に衝撃を与えた。「新しい活動については、近日中にご報告をさせていただきます」と後日改めて発表があるようだが、関係者によると「他に移籍するのではなく、個人事務所でやっていくと聞いている」という。 近年、大手の芸能事務所を退所する所属タレントが増えた。公正取引委員会(公取委)が、芸能プロダクションとタレントの専属契約に違法性があると見て、移籍や独立を阻む問題の調査に乗り出したことが大きい。公取委はこのような事務所が強い立場を利用した契約が独占禁止法に当たるとの見解をまとめ、原則禁止している。 かつて日本の芸能界を暴力団が仕切っていた名残で、以前は独立したタレントが干されるということも当たり前だった。背景には、芸能プロがテレビやスポーツ紙をはじめとするマスコミに強い影響力を持ってきたことにある。不自然に出演アーティストが決まってしまう『NHK紅白歌合戦』も、このゆがんだ構図の産物だといえる。 いまや、そのことを多くの人が感じているから、世間では「事務所からの独立」はタレントが「巨悪」と戦っているように見えるだろう。ただ、芸能プロの圧力が強いほど、当のタレント自身が得をしてきたのも事実だ。 長くヒット曲のない歌手でも紅白に出場できているし、ちっとも面白くない芸人が、他の人気タレントと同じ事務所所属という理由だけでバラエティー番組のひな壇に座っていられる。情報番組のコメンテーターやドラマのヒロインも、実力通りなら人選は全く違うものになるだろう。 プロダクションのプッシュを最も必要とするはずの芸能人が事務所から出たがる、その理由は一般社会の離職や転職と大差ない。ただ、優先順位が違うだけなのだ。女優の米倉涼子=2019年10月(桐原正道撮影) 一般社会では、「会社を辞める理由」で上位を占める回答といえば、「給与が安い」「休日が少ない」「将来への不安」といった待遇面における不満だ。加えて、上司のパワーハラスメントなどの「人間関係」、そして「やりがいを感じない」という仕事内容への不満がある。それでも人気タレントが独立するわけ これまで芸能界を約20年取材してきた経験で言えば、待遇面での不満は、芸能界の場合だと新人など若いタレントや中堅に多い。逆に言えば、どんなに待遇の悪い事務所であっても「一発屋」でもない限り、実績を積み重ねていけば相応に報酬は上がる。 5本のCMに出演しているのに、1本分しかもらえないケースなど聞いたことがない。吉本興業所属の芸人が「ギャラが3千円だった」と愚痴を言うのは、そもそも駆け出しのころのエピソードだったり、ブレイクしないままくすぶっているからだ。 人気が急上昇した若手が「もっともらえてもいいのでは…」と不満を抱くこともあるが、主演作や冠番組に困らないタレントになれば、よほどタチの悪い事務所でない限り、一般人がうらやましがるレベルの報酬が手に入るものだ。休みがないという多忙なスケジュールへの不満があっても、むしろ「うれしい悲鳴」であり、「だから、辞めます」ということにはなりにくい。つまり、人気タレントが独立する理由に、待遇面での不満が挙がることは決して多くはないのだ。 それを証明する動きが続いているのが、ジャニーズ事務所だ。近年退所したタレントの多くが、「コンサートで歌って踊り、ファンクラブの会員を増やす」本業に嫌気が差した者たちだからだ。 KAT-TUNの赤西仁は音楽活動での海外展開を志向し、在籍中からソロ活動を始めていた。KAT-TUNの田口淳之介や、関ジャニ∞(エイト)の渋谷(しぶたに)すばるもシンガー・ソングライターを目指し、ジャニーズを去った。 元SMAPの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の「新しい地図」の3人にしても同様のことがいえる。SMAPでは、敏腕マネジャーの飯島三智氏が事務所の方針に反してまで、バラエティー番組に積極的に売り込み、さらにドラマやソロ活動を展開したことで、SMAPは国民的アイドルの地位を築くことができた。メンバーが飯島氏への信頼を厚くするのは当然で、極論だが、事務所の「王道路線」に背いたことが退所の発端といえなくもない。 ただ、彼らが実際に離脱にこぎつけたのは、皮肉にも高待遇であったからだ。つまり、アイドルのうちに十分貯蓄できていたからこそ、自分の「やりたいこと」にシフトできたわけである。 嵐の大野智が退所覚悟で休業宣言したのも、中居正広が3月末での独立を決めたのも、自分のペースで選んで仕事をしたいことが最大の理由だ。これは一般社会で言う「やりがい」の理由と合致する。公正取引委員会から注意を受けたジャニーズ事務所=2019年7月、東京都港区 米倉の場合、所属のオスカーのスタッフがテレビ局に頻繁に通い、まるで映画パンフレットのような出来のプロモーション資料を担当者の机の上に置いていく強い営業力で知られる。女優の剛力彩芽がこの上なく「ゴリ押し」されたのも営業力の結果だ。 タレントからすれば、神様みたいに有り難いバックアップだから、やはり待遇面の不満は生じにくい事務所だ。所属女優には、飯島氏のように自分をスターにしてくれた担当マネジャーを付けてくれる。高齢化「世代交代」の弊害 ところで現在、こうした大手事務所に続発しているのが、トップの高齢化による世代交代だ。しかも、世襲が多いせいで、創業者を継いだ2代目が、先代ほどの実力がないにもかかわらず、態度だけはボス気取りという人間が少なくない。結果、一般社会でもよくある「二頭体制」の弊害が出てくる。 オスカーは以前からそんなウワサが聞こえていた事務所で、近年、スタッフが次々と辞めていた。フリーランスの筆者にも笑顔で接してくれた人物も、業界でかなり評判が良かったのに、少し前に「仕事は好きですが、オスカーではもうやれない」と意味深な言葉を残して、他の業界へ転出していった。 タレントにとって、担当スタッフは「最大の味方」だ。必死に仕事を取り、会社との間に入って自分の意向を伝えてくれ、体調の気配りもしてくれる家族のような存在で、「新しい地図」が飯島氏の後に続いたのも、そのような心理が働いたといえる。 最大の味方が辞めるとなれば、タレントの事務所への忠誠心はかなり低下する。オスカーのスタッフが消えるにつれ、女優の草刈民代や忽那(くつな)汐里、モデルのヨンア、タレントで女優の岡田結実と、所属タレントが続々退社していった。もちろん、公取委の方針が後押しになったのは、言うまでもない。 中居が既存の事務所に移籍せず、個人事務所「のんびりな会」の立ち上げを選んだのは、彼にはもう大手芸能プロの力が必要ないからで、米倉にも同じことがいえる。しかも、米倉は出演ドラマの打ち合わせで、テレビ局に足を運ぶことを苦にしないから、仕事は自分でも取れるし、十分な貯蓄もある。 プロモーション資料に常にトップ掲載されてきたオスカーの看板女優だが、もう後押しがなくても自由にやれる。「演劇以外のCMなどは積極的にやりたがっていなかった」とも聞くから、むしろ今後はさらに仕事を選べるだろう。 一部では交際するアルゼンチンダンサーの男性に、事務所が猛反発したという話も伝わるが、それが長年第一線でやってきた超一流のプロフェッショナルに起こった独立問題の核心であるわけがない。女優でタレントの岡田結実。2020年3月末で所属事務所を退社した=2019年9月 一般社会では、従業員の平均勤続年数が短くなってきているというが、ある程度稼いだ芸能人が独立の選択肢を取るケースは今後も増えるし、プロダクション側も殿様商売をしていられなくなるのは時代の流れだ。一般企業でも、パワハラ上司に我慢して働くのは愚かだという認識が広まり、有能な人材なら「自分で起業した方が早い」と考える。 芸能界でも、タレントのフリーランス化が進み、個人で有能なマネジャーを雇うようになる。大手芸能プロがどんなに「育ての恩」を語り、「圧力の壁」を築いても、合理化と適正化の波は止められないだろう。

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    「敵なし」の中居正広がジャニーズ退所後に目論む大仕事

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家) 元SMAPの中居正広がジャニーズ事務所退所を決め、元メンバー3人の退所以来、久々にSMAPネタでスポーツ紙を賑わせた。ただ、中居が退所して独立するニュースは、遅かれ早かれ報道されるだろうと誰しもその機会をうかがっていただけに驚きはなかったはずだ。 この時期に公表したことについては、本人曰く、解散から3年という月日と、ジャニーズ事務所前社長のジャニー喜多川さんが亡くなったことを挙げ、さらに記念すべき「インディペンデンスデイ」(独立の日)をオリンピックイヤーとしたという。そして、五輪関連の仕事を新たに立ち上げた「のんびりな会」で受ける最初の大きな仕事としてふさわしいスターティングを試みるとしている。 冒頭で触れたように、中居の退所に驚きはないが、「さすが中居」との印象を強くしたのが、あの記者会見だろう。会見は中居1人で、会見の仕切りまで自ら行い、ジャニーさんの遺骨まで用意するというサービスぶりに、新型コロナウイルス一色の中で、ニュースの扱いも大きくなったのは間違いない。 そもそも、中居はジャニーズ事務所の中で、ジャニーさんの夢をほぼ実現したアイドルと言ってよいだろう。『NHK紅白歌合戦』の司会という、狭く高き門を押し開けた初のジャニーズアイドルであり、ジャニーさんの悲願をも叶えた。エンターテインメントのあらゆる分野で数々の金字塔を打ち建ててきたジャニーさんでさえ、実現までかなりの年月を要したのは言うまでもない。 中居の司会業の有能さは、結果として退所会見に象徴されていたように、セルフプロデュースにも長けた天才的な仕切りと話術が物語っている。その能力こそが、伝説の国民的アイドルとしての「SMAP」の背景にあり、芸能史上稀に見るリーダー像を確立したといえる証左だろう。 紅白の司会はジャニーさんの悲願であったとはいえ、実は中居自らが司会業を極めたいとジャニーさんに懇願していた。それを二人三脚で確たるものとして成しえたからこそ、退所会見でジャニーさんへの感謝を強調したのだ。 この二人三脚は見事であるが、やはり評価すべきはジャニーさんの優れた先見として見いだした「中居のリーダー性」である。光GENJIのバックで踊っていた「スケートボーイズ」からSMAPを形成する際、選出したメンバーは中居と木村拓哉(キムタク)の2トップから構成されたが、単なる年長者だからといってリーダーに任命したのではなく、最も適しているとの深い思慮から生まれたものだ。(イラスト・不思議三十郎) バブルが弾けた90年代前半、時はバンドやトレンディ俳優と呼ばれる「アイドル以外」が席巻して人気を博した。その半面、不毛のアイドル期となり光GENJIや男闘呼組、忍者の「少年御三家」から受け継いだSMAPも当初は「今一つ」感がぬぐえず低人気で、ジャニーズの一時代が終わったと思わせる事態でもあった。 低人気とはいえデビュー曲のCD売り上げは15万枚超で、あくまでも「ジャニーズとしては」の範疇だが、SMAPのデビュー期は懸念を募らせていた。テレビから音楽番組が減り、バラエティが倍増してきた時期とも重なり、「出番」も失われたことからジャニーさんが起死回生策を打ち出したのだ。嫌々だった「ドリフ」化 その一つが、当初のイメージにはなかったジャニーズアイドルの殻破りとして、SMAPの「ドリフターズ」化だ。すでに有名になったが、ジャニーさんの「YOUたちはドリフになりなよ」である。 これは事実上アイドルをやめて、お笑いの道に進出させる「実験」でもあったが、この後の成功は誰もが認めるところだろう。当時、吉本興業や太田プロがテリトリーの侵害に相当な嫌気を示していたが、ジャニーズを見習って「芸人のアイドル化」で逆襲した経緯もある。 ジャニーさんのドリフ化策は、「国民的」なシェアで知名度を上げ「面白いアイドル」としてSMAPを創造していった。その裏では、歌って踊れる格好よさにあこがれたメンバーたちは拒否しつつ、ジャニーさんだからこそ不本意ながらも指示に忠実になったことが成功への原点となった。 ドリフのいかりや長介こそ国民的な「リーダー」であったが、これを中居に置き換え、言わずと知れた国民的なスーパースター、志村けんをキムタクに見立てた。そして主戦場はコントである。歌って踊って面白ければ「YOUたち最強だよ」というセンスを信じ、少年隊にあこがれていた中居も嫌々ながら必死に研究したという。 このドリフ化策を成功させるカギとして、ジャニーさんが認識していたのは、中居が動けば他のメンバーは従うという勝算だ。森且行や稲垣吾郎はSMAPとしてより個々に俳優として頭角を現していた真っ只中、一旦は懸念を示すも「中居がやるなら俺も」となり、最大の理解者で女房役のキムタクのサポートが起爆剤にもなった。 このように、中居のリーダーシップに裏付けされた「行動力」を認めない者はいない。リーダーとして現場に入ればスタッフとの打ち合わせと確認をメンバーに伝え、まとめながら進行していくスタンスは現在「番組」を仕切るMC(司会)への布石にもなっている。 メンバーの言葉や共演した者たちの感想を聞けば、やはり中居をリスペクト(尊敬)しない者はいないのだ。当時『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でSMAPと同じ楽屋だったロックバンド「コルベッツ」の松本邦彦は中居のリーダー的な仕事ぶりに驚いたというエピソードがある。コルベッツ=1993年6月 「アイドルと一緒かよ」と思ったのは楽屋に入る前までのこと。中居が動けば、SMAPの他のメンバーがそろって動く、その「仕事ぶり」を目の当たりにし、印象が一変したという。現場では常にスタッフと打ち合わせしながら確認の繰り返しと決まり事項をメンバーに指示し、ジャニーさんに伝えていくというまさに敏腕マネジャー的な動きだ。 そもそもこういった現場の「演出」的な業務はジャニーさんが担っていたことで、マネジャーは制作が決めた事案を受け取ってメンバーに知らせるだけだった。だが、SMAPはデビューの前後から中居が「現場を理解」してメンバーを動かすといった「ジャニーイズム」を見て学び実践していた、ジャニーズの歴史の中でこれまでにないグループだった。中居は日本一の「リーダー」 中居を見ていると、リーダーという仕事は「才能」だと思う。誰かに言われてなるものではなく、然るべき者が立つポジションであることをジャニーさんが見いだしたことこそ、SMAP成功のカギとなったのは確かだ。 数少ない歌番組とコントを中心としたバラエティにアイドル番組などに加えてコンサートステージで培った技が、SMAPをオンリーワンへと押し上げて、なおかつ中居という日本一の「リーダー」をコンプリートしたといえないか。 また、中居はメディアの人間であり「みなさんと一緒で仲間」という共存的な印象を与えたことも歓迎された。だが、中居は『SMAP×SMAP』のコントで知られる「計算マコちゃん」のような算段はしていないはずだ。これが自分のあるべきスタイルであり、演出や効果を台本にしない自然性と才能だけで作り上げる。 中居は退所会見で「ジャニーさん、力くれ」という思いで遺骨を持ってきたことを明かしたが、ジャニーさんをよく知る僕としては、「YOUなら一人でできるよ」という声が聞こえてきそうな「独演会」だった。本来なら、ジャニーさん亡き後のジャニーズ事務所に見切りをつけたなどと、スキャンダル的になりがちな「退所」を華やかなステージにした演出は、中居とジャニーズ事務所の成せる技だろう。 では、今後の中居についてだが、「新しい地図」(事務所はカレン)との合流はないとし、個人事務所で独立する形は以前から決めていたと明言した。ただ、ジャニーズの至宝といえる中居を失う痛手が大きいのは間違いないが、事務的な交渉が成立したことで双方の善処たる要点だけ担保して進められたようだ。 つまり、独立は悪いことではなく、本来なら門出を祝う歓迎されるイベントでもあろうと、そういう姿勢がジャニーズにも表れており、今のところ「敵」は見当たらない。中居にしてみればこれが当たり前で、つまらない争いや疑いは誰の利益にもならないのを知っているのだ。 その「敵」こそ、本来ならマスコミであったが、上手に手なづけた中居に誰も批判的でないのは、今後の動きも意識しているからだろう。マスコミとは仲良く共存すべきというのはジャニーさんの教えでもあり、また「新しい地図」の所属事務所代表の飯島三智氏もジャニーズ時代とは違って上手に付き合っている様子も参考になっているようだ。ジャニー喜多川さんの死去を伝える街頭テレビ=2019年7月、東京・有楽町 また、テレビ朝日での会見には憶測と疑問を残して蜜月的な関係がいささか話題ともなっているが、僕らの感覚では「ジャニーズと言えばテレビ朝日」(ジャニーズのレッスン場はテレ朝)なので、事務所以外で使おうとすれば「やっぱりテレビ朝日かな」とは思う。 そこになんら不思議な印象は生じないものの「新しい地図」の活動場でもあるAbemaTVの出資者であるテレビ朝日との関連から「無関係」は信じがたいなどといった言葉が散見されるが、ある意味では中居本人の活動におけるバックアップ的な存在であることはレギュラー番組など現状を踏まえれば垣間見えるだろう。期待される「ニュースキャスター」 ただ、中居が言う「今後」に大きな転換が行われるとしたら司会から「キャスター」という道なのかとも勘ぐられる。単なる僕の勝手な想像だが、中居が残した「含み」を膨らませて考えるとそれもアリではないかと思えてならない。  TBSから独立した久米宏、テレビ朝日から独立した古舘伊知郎を起用してゴールデンのニュース番組を成功させたテレビ朝日の『報道ステーション』(旧ニュースステーション)のキャスターも中居ならと思わずにはいられないのは僕だけだろうか。 キャスターの経験も多くあるとはいえ、本格的なニュース番組に飛び込むのは辛いだろうが、いずれにせよ中居の面白さは無限大である。期待が大きいSMAPの再結成もあれば、個人の飛躍的な活躍も大いなる喜びとなって「国民」を湧かせてくれることだろう。 もう一つ、期待できるとすれば「自由」さと「共演」だろう。ジャニーズを出たタレントは現役所属者と共演できない暗黙ルールがある。「ビストロスマップ」に出たいと懇願してやまなかった田原俊彦が、その夢を打ち砕かれており「共演」は非常に難しいとされているのが現実だ。 かつて、薬丸裕英(シブがき隊)が司会を務めた『はなまるマーケット』に同期の東山紀之(少年隊)が出演したことがあり、この特例を除くと同じドラマの「回違い」や最年長ジュニアだった佐野瑞樹が舞台で現役たちと共演するなど、全くないわけではないが「目立って」は見当たらない。 せっかく立ち上げた「のんびりな会」で、企画を含めて制作にも携われる番組参加をも目論んでいるだろうから、中居が考える「普通」においてあらゆる場面や共演は十分に考えられるし、また中居が「SMAP30周年特番」をやりたいと、どこぞの局に企画を投げれば全国の局が挙手するにちがいない。 デビューから30年は来年だ。ジャニーズに残るキムタクにオファーしたとしてキムタク本人もジャニーズ事務所もこれに対して首を横に振れるだろうか。政治ではないけれど「民意」を思えば、エンターテイナーとして動くのは当然必至とも考えられる。東京・赤坂にあるジャニーズ事務所=2019年7月(戸加里真司撮影) 想像と勝手な期待を記した僕の言い分だが、それも決して「0%」ではなく、また「100%」でもないということだろう。 この数年で時代もジャニーズも大きく変わった。とはいえ、中居本人はそんな壮大で面倒なことは考えていないのかもしれない。しかし、中居にはその「力」が才能として自然に宿っている。そんな愛弟子の活躍ぶりを天国のジャニーさんは楽しんでいることだろう。

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    『パラサイト』オスカー栄冠、諸手で喜べない韓国人の複雑な胸中

    中宮崇(サヨクウオッチャー) 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』は『ジョーカー』からアカデミー賞作品賞を「万引き」したとは、言い過ぎであろうか。いずれにせよ、『ジョーカー』が同時ノミネートされたおかげで『パラサイト』が受賞に至ったのは間違いないというのが私の結論である。 『パラサイト』はタイトルの通り、ある韓国人一家が寄生虫のように他人にタカって生きる物語だ。日本人拉致や慰安婦、在韓米軍基地費用負担問題など、南北そろって日本やアメリカへの外交的「タカり」が頻繁に問題となる国家だが、タカりは韓国、北朝鮮の人々にとって「常識」なのだ。 先の朴槿恵(パク・クネ)政権を含め、歴代政権における汚職事件、政権交代後の毎度おなじみ逮捕収監騒ぎでも見られるように、韓国においては成功者に一族郎党が一斉にタカるのが当たり前であり、そうした便宜を図らない者は非難されてきた。それは権力者だけでなく、上から下までいわば伝統なのだ。 『パラサイト』はまさに、そうしたタカり社会で落ちこぼれて貧しい半地下室生活を送っていた一家が、友人のコネを悪用して富裕な一家に潜り込み、息を吐くように嘘をつき、騙し、盗み、タカりまくるという話である。 立て続けに国際条約さえ平気で破る韓国人の姿勢は、息を吐くように嘘をつく、と言われて久しいが、実はこうした認識はわれわれ日本人が抱いているだけのものではない。最も嫌っているのは、韓国や北朝鮮の自国民だ。 それは南北対立に伴う「韓国は北朝鮮を憎んでいる」という類(たぐい)だけの話にとどまらない。要するに韓国人は同胞を最も嫌っているのだ。それは韓国人が日本人に対する「反日感情」と称するヘイトなどとは比較にならないほどの深刻さである。ゆえに、韓国にうんざりし「国外脱出」を希望する韓国人は「日本を脱出したがる日本人」の割合とは比べ物にならない。 実際、韓国紙「中央日報」は2018年11月に「今年の韓国籍放棄者、10月までで3万人突破」と報じ、ネットには「韓国人の半数超が『移民夢見たことある』、一番人気の国は?」という記事もある。 そのような韓国人にとっては、周りは家族友人以外全て敵である。いつ騙され盗まれるか分からないし、逆に同胞は必要とあればいつ騙し盗んでもよい「狩りの獲物」なのだ。 物語の冒頭、キム一家の長男で高卒の無職のギウは「親友」から家庭教師の仕事を譲り受ける。ここでまず、「偽証社会」として名高い韓国らしく、「自分は優秀な大学生である」と嘘をついて潜り込む。そのためにご丁寧にも学生証や書類まで偽造する。しかも「親友」から「お前なら信用できるから」と言われて託された家庭教師先パク家の女子高生(実は「親友」の恋人)を、なんのためらいもなく奪う。映画『パラサイト』の一場面(ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED) そこから先はもう、悪知恵のオンパレードだ。犯罪も含めたあらゆる悪逆な企てでパク家の家政婦や運転手ら使用人を次々と陥れて追い出し、代わりに自分たちの一家を潜り込ませる。そこにはなんのためらいも良心の呵責もない。悪意と偏見に満ちたジュノ監督 『パラサイト』同様、格差社会を描いた是枝裕和監督の『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得した際、日本国内からは「日本人はあのように平気で万引きしたりしない」との抗議が多く寄せられた。 しかし、『パラサイト』に対し韓国国内でそのような抗議の動きがあったとはほとんど聞かない。多くの韓国人が見ても、まさにこれこそが典型的韓国人の姿なのだと納得しているということなのだろう。 貧者のキム一家に、タカられる富裕層のパク一家も、単純に被害者とはとても言えない。経済的成功に驕り高ぶり、キム一家をはじめとする貧者を平気で「くさい」などと差別してはばからない。 また、「結核」患者を差別してクビにするえげつない描写も存在する。韓国における障害者らへの差別は有名であるが、そうした韓国社会への批判としての一面もあるのだろう(「この5年間の障害児の養子縁組、国内135人―海外3428人」中央日報、2009年5月11日) 繰り返しになるが、この映画は「家族友人以外は信頼できず周りは全て敵で、貧困層も富裕層も平気でお互い盗み合い騙し合い差別し合うどうしようもない韓国格差社会を告発した」作品である。だが、そこにはポン・ジュノ監督の韓国社会に対する悪意と偏見が満ちあふれているともいえる。 確かに韓国は「偽証社会」であることや、障害者らへの偏見が強いといった、他に類をみない欠点を多分に含む社会ではある。だが、一方で、諸外国に誇れる美点をも持つ社会でもある。なのにポン・ジュノ監督は、そのことからあからさまに目を背けている。 日本国内の「サヨク・リベラル」などを詐称する反日勢力にも、そのように日本の欠点のみを誇大にわめき散らし世界中にフェイクニュースを流す連中が存在する。ポン・ジュノ監督も、韓国にとってのそうした手合なのだろう。 実際、韓国では大韓航空が「特定の国や民族をおとしめる」「韓国のネガティブなイメージを与える内容」だとして機内上映を禁止する措置をとった(韓国航空会社が映画「パラサイト」の機内放映せず、その理由は…―韓国メディア)。映画『パラサイト』の一場面(ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED) 自国の「欠点」を告発する映画でも、例えば韓国軍による市民大虐殺「光州事件」を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』は『パラサイト』同様、韓国人の差別根性、あさましさ、平気で息を吐くように嘘をつく偽証社会体質などを告発しているが、韓国人の気の良さや温かさ、義侠心、同胞愛などもピックアップした傑作である。 これは先に触れた日本映画の『万引き家族』も同様だ。確かに日本社会の冷たさや無理解といった闇の部分を批判しているが、一方で家族以外の地域社会の温かさもきちんと無視せず盛り込んでいる。 思い返してみればポン・ジュノ監督の過去作品は全てそうした韓国人に対する歪んだ世界観に満ちている。彼にとって「一見善良そうに見えても韓国人は家族友人以外全部敵で、お互い平気で嘘を付き、盗み、人を殺す」という内容のものばかりだ。作品賞を受賞できたワケは? 今回の『パラサイト』もゴジラ映画のパクリのような『グエムル』も、障害者は平気で人殺しをするかのように描いた『母なる証明』も食肉用巨大遺伝子操作豚と少女の交流を描く『オクジャ』もそうした韓国に対する偏見に満ちている。 いずれも「お互い敵同士としか思っていない韓国人に未来はない。未来の子供世代にしか希望はない」という結末である。しかも『グエムル』『オクジャ』に至っては「血縁さえも断ち切ってしまわないとダメ」という結末に仕立て上げている。 そういえば、私が以前、iRONNAで映画評を書いた韓国のゾンビ映画『新感染』も、そうした「現世代はもうダメ。次世代に期待するしかない」という結末であった。 しかし『新感染』は『パラサイト』と異なり、韓国人の闇や欠点ばかり描いているのではなく、韓国人のさまざまな美徳にも焦点を当てた傑作映画だった。こうして見れば、一体どのような体験がポン・ジュノ監督にこのような歪んだ世界観を持たせることになってしまったのだろう。 こうしたことを踏まえれば、とてもアカデミー賞作品賞のレベルには達していないと思えてならない。これに与えるぐらいなら今までにももっとすばらしい韓国映画はいくらでもあった。では、なぜ今回アカデミー賞を「万引き」できたのだろうか。 2016年上半期の芥川賞において村田沙耶香氏の「コンビニ人間」が受賞した際、反安倍サヨク活動家として知られる選考委員の島田雅彦氏がこれを腐(くさ)すあまり、公の選評でなんと「巷には思考停止状態のマニュアル人間が自民党の支持者ぐらいたくさんいるので、風俗小説としてのリアリティはあるが、主人公はいずれサイコパスになり、まともな人間を洗脳してゆくだろう」などというあきれたヘイトスピーチを撒き散らしたことがある。 アカデミー賞の選考過程においては、芥川賞以上に反トランプに代表されるサヨク・リベラルと自称する反米勢力が大量に入り込んでいることは以前から知られていた。 『パラサイト』と同時ノミネートされた『ジョーカー』は、そうした連中にとっては絶対に賞を与えてはいけない作品である。なにしろ「トランプ大統領を支持するような白人貧困層が犯罪者としてダークヒーローに祭り上げられる」という内容なのだ。そんなシロモノに反トランプの連中が賞を与えたがるはずがない。米アカデミー賞で作品賞を受賞し、喜ぶポン・ジュノ監督(右)と出演者ら=2020年2月9日、米ハリウッド(AP=共同) そこに運よく現れたのが、『パラサイト』というわけだ。これなら受賞させても「ポリティカル・コレクトネス」(政治的公平性)的にも、サヨク・リベラル勢力にとっても実に都合がよい。おまけに「アジア映画をハリウッド映画と平等に扱った」というすばらしい実績まで誇れるわけである。 そういうわけで、『パラサイト』はある意味、今が旬のオススメ映画ではあるのだ。

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    7年の沈黙が物語る沢尻エリカ「薬物逮捕」の本質

    片岡亮(ジャーナリスト) 女優の沢尻エリカが、合成麻薬「MDMA」を所持したとして警視庁に麻薬取締法違反容疑で逮捕された。11月16日、東京都目黒区の自宅マンションで緊急逮捕された沢尻は翌日、東京地検に送検された。 捜査関係者によると、沢尻は逮捕後、「私のものに間違いありません」と容疑を認めている。その上で、数週間前にイベント会場で知人からもらったことや、以前から薬物を使用していたことを供述しているという。 公開中の『人間失格 太宰治と3人の女たち』や、来年1月から始まるNHK大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』と、立て続けに出演が決まっていただけに、まず浮かぶのは「女優として活躍していたのに、なぜ?」という疑問だ。誰もがうらやむ美貌の持ち主で、金や名誉に不自由しない立場のはずなのに、わざわざ違法薬物に手を出して、結果として一夜でトップ女優の立場を失うことになってしまった。 確かに動機は気になるだろうが、本件には、そんな前振りをすっ飛ばしたくなる巨大な闇が潜む。テレビの情報番組で、「仕事への大きな損害が出るだろう」や「女優として再起できるのか」といった話に焦点が当たっているのは、ひょっとして「核心」についてコメントできないからでは、とさえ思えてくる。 一部、麻薬依存者の更生を重んじて「罰よりケア」を求める人もいたが、これもちょっとしらじらしい気がする。一般人とはケタ違いの金を手にしていた著名人なら、元々は来月の家賃の心配もいらない身のはずだ。 酒井法子は歌手活動を大々的に再開しているし、清原和博だって「球界復帰」への一歩を踏み出した。2人のように誰かから声がかかって、再起をいくらでも歓迎される人の復帰など、率先して心配する話ではないし、建前論にしか聞こえない。逮捕された女優の沢尻エリカ容疑者=2018年6月 そんなことよりも注目すべきは、沢尻には2009年に前の所属事務所から大麻使用を理由に契約解除されたという報道があったことで、そこが事件の最大のポイントだ。前事務所側は解除の理由を「重大な契約違反行為があった」とリリースしていたが、本人同意のもとで行った薬物検査で陽性反応が出たという話が一部週刊誌で証拠書類とともに報じられていた。 デビューして間もなく、その生意気な態度から「エリカ様」と呼ばれたり、女優や女性タレントを集めた飲み会を定期的に開くことも、「沢尻会」のリーダーに収まっているとネタにされたりした。実際に07年、「別に…」発言に象徴された主演映画の披露あいさつで悪態をついたことでバッシングを浴び、人気が一気に凋落(ちょうらく)することになる。蘇る7年前の報道 その後、12年に5年ぶりの映画主演作となった『ヘルタースケルター』で復活を果たしたものの、公開の直前、『週刊文春』に報じられたのが「薬物中毒」だった。 当時、09年に結婚した映像作家、高城剛氏との離婚騒動に注目が集まっていたが、当の高城氏が「エリカはエイベックスの松浦勝人社長(現会長)から薬物使用の証拠を弱みに握られ、離婚を迫られた」という内容の話を暴露した。エイベックスとは女優業再開に向けて11年に業務提携を行っていたが、脱ぐかどうか迫られた沢尻が『ヘルタースケルター』でヌードを披露するに至ったというのである。 その際に出てきたのが「大麻だけでなく、エクスタシー(MDMA)も使用していた」という証言だ。こんな話が過去に出ていたのに、今回まさにMDMA所持で逮捕されたわけだから、ASKAや清原同様、早くからキャッチしていたメディアの話に真実味が増してくるのも当然の流れだ。 この衝撃的なゴシップは本来であれば、芸能マスコミが競って後追いすべきビッグなネタだが、相手が大手事務所だけに一様に無視していた。しかし、逮捕された沢尻が供述で「10年以上前から使用していた」とあっさり常習を認めており、まさに過去にさかのぼって取材すべき問題と化している。 ところで、タレントのラサール石井が「政府が問題を起こし、マスコミがネタにし始めると芸能人が逮捕される」とツイートしていた。「桜を見る会」の私物化問題の火消しに追われる政府のスキャンダル隠しに使われたようなニュアンスだったが、冗談じゃない。権力者大好きタレントや後援者の集まりという役得への嫉妬問題より、この事件の方が日本社会にはずっと危険であり、人権問題として見ても重い。 そもそも、社会を大きく揺るがすほどの重大な疑惑につながりかねない事件を話題そらしに使えるわけがない。それよりも、メディアに出演している芸能人が一様にエイベックスの「エ」の字も口にせず、「これで仕事を失うのは本当にもったいないですよねえ」などと毒にも薬にもならないコメントをしている方が、よほど本質そらしだとはいえないか。 ここで気になるのは、警視庁組織犯罪対策5課が約1カ月前に情報提供を受けて、内偵捜査を続けていたという話だ。入手先が渋谷区のクラブだった可能性もあるそうだが、話をリークした情報提供者がいることは事実だろう。送検のため沢尻エリカ容疑者を乗せ東京湾岸署を出る車=2019年11月17日午前 巨悪の存在説が本当に正しければ、リーク元がその敵対勢力という可能性も出てくる。もちろん「エリカ様」への個人的恨みである可能性もあるが、それでも警察に情報提供するとなれば、確度の高い話がないと採用されないわけで、顔見知り程度の間柄ではどうにもならないだろう。 いずれにせよ、沢尻の逮捕で、週刊誌を中心とするメディアにとっての最大の焦点は先に報じられてきたエイベックス界隈の話になるだろう。筆者もそのポイントを前提にした取材に集中するが、核心をそらそうとする動きにだまされないことが重要だ。

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    チュート徳井でわかった「想像を絶する」芸人の蓄財術

    片岡亮(ジャーナリスト) お笑いコンビ、チュートリアルの徳井義実が10月26日に活動自粛を発表した。3日前の23日、国税庁が徳井の約1億2千万円の申告漏れと、約2千万円の所得隠しを発表、3700万円の追徴課税を受けた対応だった。 問題発覚直後の記者会見では「できれば仕事を続けさせてもらいたい」と語っていたが、徳井の希望が叶いそうにないことはすぐに明らかになる。26日、所属事務所の吉本興業が公表した詳細な経緯で、10~12年、13~15年の各3年間も期限内に申告せず、3年分をまとめて申告していたことが判明した。 税務署からの再三の督促にも応じないばかりか、16年には銀行預金を差し押さえられたことや、徳井が個人会社「チューリップ」を設立したときに社会保険の加入手続きもしていなかったことで、さらに世間の厳しい声が広がった。 「想像を絶するだらしなさ」という発言に象徴された徳井の記者会見を要約すると、「16~18年の申告をしていなかった。ルーズで先延ばしにして、税理士にも資料を催促されていたが、納税意識が低かった」というものになる。大金を稼げるテレビ番組への出演はたくさんあってもすっぽかさないのに、年に1度の納税はほったらかし、というのは「だらしなさ」を余りに都合よく使い分けていたと言われても仕方がない。とても「ルーズだったのだから仕方ないね」と世間に納得できる弁明ではない。 たが当初は、一部のワイドショーで、司会者やコメンテーターらが「悪意はなく、単にだらしなかったんだろう」という「ストーリー」で徳井をフォローする姿勢を見せていた。これは、おそらく出演番組の出演自粛や降板といった「損失」を抑えたいというテレビ局の意向が働いたものだと思う。 一方、ナインティナインの岡村隆史がラジオで「テレビでは所得隠し、脱税みたいなことになってるけど、本人にそういうつもりはなかったと思う」と述べたり、ハリセンボンの近藤春菜は「会見にウソはないと思う。本当にルーズでここまできてしまった」と言及していた。同じ事務所の芸人仲間の言葉は、納税問題というより、徳井個人の人間性に焦点を当てたものだといえる。 しかし、これは社会に損失を与える案件であって、人間性の議論で治まる話ではない。だから、社会システムの観点でいえば、国税局が適切な判断をして、本来納めるべき税金を回収したわけだから、この時点で問題は落着しているはずだ。個人会社の申告漏れなどで会見するチュートリアルの徳井義実=2019年10月(須谷友郁撮影) ツイッターで国税当局の忖度(そんたく)や無申告に対する問題点を指摘したある実業家と比べて、「徳井が逮捕されないのはおかしい」などという論調も一部であった。ただ、徳井の事案を刑事処分とするかは刑法に沿って検討されなければならない。 脱税で有罪判決を受けたこの実業家の場合、「架空の広告宣伝費を計上していた」という犯罪構成を強く認められる点があったからだ。洋服代や旅行費用を経費として計上していた徳井のケースと多少温度差があるのは否めない。 とはいえ、この社会上の処分で済まなかったのが芸能活動だ。NHKを含め、テレビ局はできる限り事なき方向に持っていこうとしたが、「ルーズな性格で納税できなかったんです」という弁明では、社会的制裁は止められなかった。俳優や歌手「不倫」何が違う? この点は、不倫が発覚した芸能人が活動自粛になったケースと同じだ。ただ、テレビ業界が「このぐらいは大目に見ましょう」と済まそうとした感覚は、芸人やタレントという職業カテゴリーに良くも悪くもルーズなイメージを抱いていたともいえる。 同様の問題を報道番組の司会者が起こしていたら「ルーズだったんです」の言葉で済まされたとは、テレビマンたちもさすがに思うはずはない。番組に大きな損失が出ることを分かっていても、これまで通りの出演継続を模索するのは相当難しかっただろう。 報道番組に比べると、お笑い芸人は私生活の失敗も「芸のうち」と見られる傾向が強い。海外でも、ロック歌手やラッパーなどの素行の悪さをキャラクターのうちと見るところがあるため、暴行事件を起こして裁判を待つ身にもかかわらず、コンサートに出る者も珍しくない。 米国では日本より仕事と私生活を区別する意識が強いから一様には比較できないが、今年亡くなったロック歌手の内田裕也が交際女性への強要容疑で逮捕(不起訴)されたとき「ロックに免じて勘弁してください」と言ったのも、本場のロッカー同様に破天荒な生きざまの一つと思ってほしかったということなのかもしれない。 5月、千原兄弟の千原せいじの不倫が報じられた際は、本人がテレビ番組で事実を認めて謝罪したものの、バッシングも受けず大した騒動にもならなかった。不倫の影響についてイベントの会見で「ロケが1本なくなった程度」と言っていたが、同じ不倫騒動でも、矢口真里やベッキー、斉藤由貴らが謹慎に追い込まれたのとは正反対だった。 文筆家の乙武洋匡や元「FUNKY MONKEY BABYS」の歌手、ファンキー加藤への批判が強まったのは、それまでの彼らの言動に高潔さや正義感があったことの反動だ。俳優の渡辺謙や原田龍二、田中哲司、元音楽プロデューサーの小室哲哉にも一定の批判が集まった。対して、ダウンタウンの浜田雅功や三遊亭円楽、木村祐一、千鳥の大悟らになると、いつの間にか笑い話になって終息してしまっていた。「闇営業」問題などで記者会見し、謝罪する雨上がり決死隊の宮迫博之(左)とロンドンブーツ1号2号の田村亮=2019年7月20日 2年前、不倫疑惑で「文春砲」を食らった雨上がり決死隊の宮迫博之も「オフホワイト」発言で笑いを取ろうとしたのは、ある意味で「プロの芸人」だ。反社会的勢力との付き合いが問われた闇営業問題では、さすがにそれを貫き通せるわけもなく、活動自粛が続いている。今、著名人の多くが反社との関わりにかなり神経質になっている中で、芸人たちばかりが問題を甘く見ていたのは、日ごろの緩い空気が原因だろう。 なにしろ、お笑い芸人には、伝統芸能にも息づく「女遊びも芸の肥やし」と言われるような、女性に対する「だらしなさ」も付き物だという価値観が昔からある。「紳助さんはこうしてる」 この認識は、筆者がかつて在籍したプロレスの世界も似ている。両国国技館の興行で、東西南北の座席にそれぞれ愛人を座らせたことを自慢していた有名レスラーが先輩にいたが、罪悪感などまるでなく、むしろ舞台裏で武勇伝としてひけらかすほどだった。このレスラーは大相撲出身だったので、既に力士時代からそういう価値観があったことも伺えた。 後輩に動物のモノマネをさせてエアガンで撃ったり、地方興行の宿泊先で仲居をトイレに連れ込んだり、「ファンの女性と次々関係を持ってたら、後楽園ホールの最前列に6人も座っていた」といった話が控室で交わされていたのは、そこに「プロレスラーはヤンチャでいい」という価値観があったからだ。「仲間で大酒を飲んで大暴れして、居酒屋1軒をぶっ壊した」なんていう話も、当時は武勇伝にさえならなかったが、現代なら大ヒンシュクを買って、インターネットで即炎上しそうな話だから、時代が変わったという考察もできる。 過去、筆者が出演していたバラエティー番組で、レギュラー司会者が不在の際、徳井とともにコーナー進行役として収録に臨んだことがある。残念ながら諸事情でカットされて放送されることはなかったが、アドリブをあまり挟まずにキビキビ進行していた司会者と違って、徳井との掛け合いからは柔らかさを感じた。 高い集中力が求められ、テレビの印象よりも神経質な芸能人も少なくない中で、柔らかさは徳井の持ち味でもあったともいえる。ただし、その柔らかさがルーズさにつながったのか、当時の楽屋では節税やカネの話題でもちきりだった。事実、「徳井さんが自分の会社を作った」ことは7年ほど前から既に舞台裏で伝わっていた話だ。 口八丁手八丁で抜け目のない人間が多い芸能人にとって、関心が最も高いのがカネの話というのは、当然というべきか。財テクに長(た)けていることで有名だった島田紳助が現役だったころ、「紳助さんはこうしてるんだって」という話を若手芸人の口から何度聞いたことか分からない。 徳井が会見で、節税対策の個人会社を作ったきっかけを「いろんな人からアドバイスされた」と言っていたが当然の話で、ブレークすれば節税の話が耳に入ってくる。過去のラジオ番組で「将来は税金のかからないドバイに移住したい」などと突拍子もなく言い出したのも、誰かの受け売りだろう。2011年8月、会見で芸能界引退を発表する島田紳助(桐山弘太撮影) 実際、筆者が昨年、マレーシアにオフィスを持ってから聞こえてきたのが「海外に資金を逃がしている芸人」の話だ。「仲間の金を動かしていたけど、最近は世界中の銀行間で口座情報を共有するCRS(共通報告基準)制度の導入で、国税が対策をとるから、より巧妙な手口を取るつもり」。そんな話が舞台裏には転がっている。 こうして、世間が芸人に甘い空気を作っていた中で、徳井よりも資産を巧みに逃している芸人がいるわけだ。それは結局、大手企業もやっているセレブたちの常套(じょうとう)手段なのだろう。 だが、そういう話を聞くと、ズルい方法を「見つけたもん勝ち」という中で、楽に見つかっちゃったマヌケだけが仕事を失ったという気もしてくる。テレビタレントたちは決して表舞台では言わないが、ほとんどが内心「ああ、もっとうまくやる方法があるのに…」と思っていたに違いない。

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    『あなたの番です』原田知世が女優として大損したワケ

    上村由紀子(フリーライター) 俳優ってつくづく因果な商売ですよね。なにがキツいって、演じている役柄がそのまま本人のイメージと重なってしまうこと。例えば現在、NHK-BSで再放送中の昭和の朝ドラ『おしん』。 本放送中には、今で言うところの毒親キャラ=おしんの父、作造役の伊東四朗の自宅まで押しかけて抗議をするやからが現れたり、「史上最凶の姑(しゅうとめ)」役、高森和子に「佐賀のイメージが悪くなる」と抗議の電話が殺到したりと、現実と画面の中の区別がごっちゃになる視聴者が続出。それだけ俳優の演技が真に迫っていたということなのでしょうが、現実とフィクションの区別がつかなくなるってどんな生活してるんだ。まずはタフマン飲んで落ち着いていただきたい。 まあでも、役のイメージが演者の好感度に影響するのも世の常といえば常。そういえば4月から6月にオンエアされた春ドラマでも、役によって「得した俳優」「損した俳優」がパッキリ分かれた気もします。まずは「得した俳優」から振り返ってみましょうか。『わたし、定時で帰ります。』吉高由里子&向井理 そのタイトルからお仕事コメディードラマでは?と思わせて、実は「働き方改革」や「ワークバランス」といった社会的テーマにも斬り込んだ『わた定』。これまでぶっ飛んだイメージも強かった吉高由里子が芯の強さをたたえながら、チームを柔らかくまとめる東山結衣役を好演し、オフィスでのファッションやメークもかわいいと女性からの好感度も急上昇。吉高さん、この後CM増えそうです。さらに昨年、同じくTBSの火曜10時枠で放送された『きみが心に棲みついた』で、主人公に執着する上司役を演じ「気持ち悪い」「怖い」と散々な評価を受けた向井理が『わた定』ではそのイメージを好反転。ワーカーホリックでありながら、さりげなく結衣をサポートし、イケメンモードとスタイルの良さを隠した無頓着キャラが逆に萌えを誘発するという現象を巻き起こし、SNSでも大きな話題を呼びました。『集団左遷!!』香川照之 完全に「働く中年男性」をメインターゲットに据えたTBSの日曜9時枠。銀行を舞台にした『集団左遷!!』で得した俳優といえば香川照之。『半沢直樹』や『新しい王様』で見せた、トムヤムクンの中にハバネロをブチ込んだかのようなアクの強い芝居ではなく、福山雅治演じる銀行員、片山洋を穏やかにサポートする真山徹役をストレートに演じて「ああ、香川さんって普通のキャラクターもできるんだ」と、視聴者に日本茶のような味わいを残してくれました。お茶の間の評価も上がったところで、この夏は安心して虫取りにいそしんでいただきたい。俳優の香川照之=2014年2月、東京都新宿区(撮影・吉澤良太)『きのう何食べた?』内野聖陽 テレビ東京系列の深夜ドラマということもあり、視聴率は3%台と振るわなかったものの「視聴熱」は常に高く、見逃し配信サイト「ネットもテレ東」において歴代最高のPV数を記録した『きのう何食べた?』。主役2人の原作再現性の高さも秀逸で、特にゲイの美容師ケンジ役、内野聖陽のかわいらしさやいじらしさは女子のハートを撃ち抜きました。大みそかにケンジがひとりでサッポロ一番を食べながら「ジャニーズカウントダウンライブ」を見てニヤニヤするシーンはもはや伝説。最終回のアドリブっぽいエビのくだりは…うん、とても生々しかったです…。野性味あふれる刑事から小指を立ててケーキを食べるキュートな男子まで完璧に演じきる内野聖陽。この作品でさらに「演技派」の冠に磨きをかけたのでは。「損した俳優」は? では「損した俳優」といえば誰でしょう。『東京独身男子』高橋一生&滝藤賢一 春ドラマで期待値の高さを1番裏切ってくれたのが、テレビ朝日系列の『東京独身男子』。AK=あえて結婚しない男子、とのことで、これを流行語にしたかった広告代理店と制作サイドの大人の事情とあざとさが見え隠れ。そしてなにより高橋一生、滝藤賢一のキャラクター設定が大失敗でした。クセが強く、周囲から逸脱したキャラクターを演じて輝くこの2人を、バブル時代を思わせるマンションに住まわせ、なにかというと集まって「アジェンダ」を語る男性版『SEX AND THE CITY』にしたことですべてが水の泡。主軸3人のうち、遊び人だが根は純粋というキャラクターをまっとうした斉藤工のみがなんとか逃げ切った印象です。『ストロベリーナイト・サーガ』二階堂ふみ この件に関しては二階堂ふみに一切の罪はないと断言したい。9年前の同じくフジテレビ、竹内結子主演版の印象がいまだ強い上に、今回のサーガでは、前半にオリジナル版のエピソードを撮りなおして放送したことで視聴者の「コレジャナイ」感が爆発。二階堂ふみの地に足のついた演技も良かったし、姫川班の面々をはじめ、周囲のキャラクターもきれいすぎるガンテツ役の江口洋介を除き破綻はなく、非常にもったいなかったです。原作にとらわれず、ドラマオリジナルのエピソードを足せば良かったのかも。『あなたの番です』原田知世 通常1クール=3カ月でドラマが終了する中、半年間の放送を決めた日本テレビ『あなたの番です』。メッセージも哲学も最初から捨て、マンション内の交換殺人という、謎解きとインパクトだけ楽しんでくださいという、分かりやすい企画と構成が潔いっちゃあ潔い。『おっさんずラブ』でかわいいキャラを会得した田中圭が、そのまま大型犬さながらの芝居を見せる中、昭和の角川映画『時をかける少女』『早春物語』とまったく同じテンションで登場する12歳年上の妻役・原田知世。が、彼女を知らない世代にとっては「あの変なワカメちゃんみたいな髪型の人誰?」と結構な言われようです。今年もブレンディのCMは流れるのでしょうか。今や夏の風物詩ですね。女優の原田知世=2014年9月、東京都(南澤 悦子撮影) こうして「得した俳優」「損した俳優」を並べてみると、そのキーワードが「イメージの転換」であるのが分かります。これまで自分が得意としてきた役柄からうまくシフトチェンジができた「得したチーム」と、「イメージの転換」に失敗し大けがを負うか、過去の自分のイメージを守り過ぎてイタくなってしまったかの「損したチーム」。こうなると、もらい事故感が強い二階堂ふみが非常に気の毒ではありますが。 現在動き出している夏ドラマでは、杏、石原さとみ、深田恭子、上野樹里、黒木華と女優メインの作品が目白押し。こちらのアレコレも秋に向けてチェックしていきたいと思います。■朝ドラ『なつぞら』女優ポーズを崩さない松嶋菜々子が浮いている■NHK『トクサツガガガ』私が一瞬、涙目になったワケ■LGBTドラマから学ぶ、ゲイを「カミングアウト」しない生き方

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    LGBTドラマから学ぶ、ゲイを「カミングアウト」しない生き方

    吉田潮(ライター・イラストレーター) 知人男性Aは、物腰の柔らかい二枚目で、着ている服も持ち物も、持ってきてくれる土産物までおしゃれ。話も面白いというか、80年代女性アイドルも妙に詳しい。そのほかにも「これは…」と思う言動が多々あったので、初めて会ったときからゲイだと思っていた。 Aがゲイであろうとなかろうと人間関係に変わりはないのだが、実は私の女友達がAに恋心を抱いている、という背景がある。余計なお世話と思いつつも、Aに何度か尋ねてみたのだが、「違うよ」と否定した。女友達は女友達で、Aをただ単に煮え切らない異性愛者だと思っていて、諦めきれない様子。女友達には幸せになってほしい(彼女は結婚を望んでいる)ので、Aにその気がないなら気を持たせるなと思ってしまった。まあ、ちょっと背中を押しにくい、貸借の関係がふたりの間にあるので、つい女友達の肩を持ってしまうのだが。 幸いなことに、今期はLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング)、特にゲイのドラマが多かった。なんとなくヒントをもらった気もする。独りよがりだったかなと反省する点もあれば、このふたりにも「新しい人間関係の構築」があるのかなと思ったりして。勝手に決めつけず、視野狭窄(きょうさく)にならないためにも、とても役立ったので感謝している。 『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK)は、ゲイであることを友達にも親にも隠している男子高校生(金子大地)が主人公だ。妻子がいる年上の男性(谷原章介)が恋人で、性生活は謳歌(おうか)しているように見えるが、その苦悩は想像を超えるものだった。日常で異性愛者の友人(小越勇輝・内藤秀一郎)や、シングルマザーで育ててくれた母(安藤玉恵)との会話や行動で、「普通の男子」として振る舞わなければいけない息苦しさ。明朗快活だが、腐女子であることを隠しているクラスの女子(藤野涼子)と付き合うことになったのも、「普通」を手に入れたかったからだ。そこには、「ゲイである自分を認められない」苦しみがある。 腐女子とゲイの交際は、一見「アリ」じゃないかと思わせたのだが、あるきっかけでゲイであることがバレてしまう。クラスメイトに白眼視された金子が、教室のベランダから飛び降りるという衝撃的な展開もあった。実際に同様の事件が起きて、男性が亡くなったことも知っていたので、胸が締め付けられた。ただ、金子は命を取りとめ、藤野や小越の配慮と優しさと素直さに励まされ、生きていく決意を固める。学校内でもゲイであることをカミングアウト(まあ、半ば藤野の演説による暴露「アウティング」なのだが)して、前に進んでいくのだ。「腐女子、うっかりゲイに告る。」に出演した藤野涼子(大西正純撮影) 最終的に、金子は藤野と別れる。「知らない人たちの中でこれまでと違う生き方ができるかどうか試してみたい」と話し、大阪へ引っ越す。もちろん、谷原とも別れる。谷原は「既婚のゲイ」である自分を鳥でもケモノでもないコウモリに例えて話す。「男しか好きになれなかったが、家族が欲しかったから結婚した。卑怯(ひきょう)と呼ばれても、ゲイであることを隠し通して生きていく」と断言する谷原。金子は寂しさと切なさと諦めを、ないまぜにした表情を見せ、爽やかに別れを告げる(その直後に泣き崩れるのだが)。 そして、ラストシーンが印象的だった。大阪に引っ越し、大学に進学した金子。初めての授業で自己紹介をする。「僕は…」と話したところで、ドラマは終わった。「僕はゲイです」と言ったかどうかは、視聴者に委ねたのだ。ゲイのカミングアウトするかしないか ゲイであることを周囲に言うか言わないか、それは本人が決めることだ。誰かに強制的に言わされるものでもないし、カミングアウトしなければいけないわけでもない。 くだんのAもそうだ、そうなのだ。彼には彼の生き方がある。もしかしたら、私の女友達とは本当に気が合っているので、結婚や恋愛ではないパートナーシップを築けるのかもしれない。それを外野の私が言うべきことではなかったと反省している。金子大地と谷原章介のおかげだし、自分は藤野涼子にならなくてもいいのだと思った。 また、話題となっているドラマが『きのう何食べた?』(テレビ東京系)だ。西島秀俊と内野聖陽という、二大肉体派「渋メン」俳優のふたりがゲイカップルを演じているからだ。職場にはカミングアウトしていない弁護士の西島と、全方位にカミングアウトしている美容師の内野が織りなす日常には、些末(さまつ)だけど大切なパートナーシップの要素がぎゅっと詰まっている。相手を思いやる気持ち、自己主張のさじ加減、ゲイであることへの肯定感、一緒に食べるご飯や過ごす時間の尊さなどなど。 ここでも、西島から「カミングアウトしない生き方」を学んだ。学んだというか、そこにまつわる苦労に気づかされる。両親(志賀廣太郎・梶芽衣子)にはカミングアウトしているのだが、彼らが理解しているとは言いにくい。「一過性のもの」「好みの問題」としてとらえているフシもある。 その面倒臭さに耐えがたく、老いた両親とは少し距離を置いている西島。一方、内野は、テンションが高い母や姉とは仲良しで、姉には子供もいる。ただし、父親とは音信不通。よそに女を作り、金をせびり、暴力をふるった父親を断ち切った過去があり、今も生きていて生活保護を受給していることだけはわかっている状態。ゲイに理解はなくても仲の良い両親に対して、愚痴をもらす西島を諭す。「もうちょっと感謝してもいいんじゃない?」と。ドラマ「きのう何食べた?」に出演した西島秀俊(三尾郁恵撮影) ドラマとしては、日常茶飯事を通して、ふたりの考え方の相違やズレをお互いにちょっとずつ譲歩していき、パートナーシップを深めていく構図に。惚れた腫れたの、その先を淡々と描いていて、これは異性愛だろうと同性愛だろうと性的志向に関係ない、全人類に共通する人間ドラマになっている。男女の恋愛ドラマが表層的なことしか描かず、いまいち心の深部に浸透しないこのご時世、ゲイカップルに教わることがたくさんあるというのは、救いでもある。放っておいてほしい人もいる このふたつの作品から共通して学んだのは、「ほうっておいてほしい人もいる」ことだ。LGBTQであることを言えずに苦しんでいる人に勇気を与える一方で、なんでもかんでも言えばいいってもんじゃない、と思う人もいる。もしかしたら「主に、異性愛者の女性たちに、自分たちの日常や苦悩を萌え対象にされて不愉快だ」と思う人もいるかもしれない。正直、私自身も、金子大地の青臭い透明感に萌えたし、内野聖陽の乙女心に心撃ち抜かれた。 妻子に内緒にしている谷原章介や、職場には内緒にしている西島秀俊に、歯がゆさを覚えたりもした。それでも、二作品のどちらにも「カミングアウトしないという矜持」が描かれていたので、気づかされた。その思いや生きざまも含めて、考えるべきだと。 Aはゲイではなく、バイセクシュアルかもしれないし、もしかしたら性的志向が決まっていない、あるいは迷っている「クエスチョニング」かもしれない。その線引きを私がするべきではないし、そもそも線引きする必要もない。ドラマが教えてくれることはたくさんある、と改めて痛感したクールだった。 と、終わりにしようと思ったが、もうひとつ『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)があった。古田新太演じる女装ゲイが高校教師となって、生徒も先生も親も巻き込んで「生きるとは何か?」を伝えていく。生意気で残酷、あるいは葛藤を抱える生徒たちが次第に心を開き、古田を慕っていくのだが、どうやら古田は膵臓(すいぞう)の病気で余命宣告されているっつう話だ。「腐女子、うっかりゲイに告る。」の原作小説 『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(KADOKAWA刊) サイケな女装で、はちゃめちゃだが芯の通った言動のヒロインに、もれなく感動を呼ぶ病気をセット。エンタメと痛快とほろりを入れこむ学園モノは、日テレの十八番。偏見クソくらえの精神で、生きづらさをパワーに変える古田の姿が、若者の心をつかんでいるようだ。 が、仕掛けに満ちた課外授業が多く、エンタメ性が強すぎて、古田本人のバックボーンにいまいち焦点が当たらない。もう少し早く、そして濃く、古田の背景を見せてくれていたら、『きのう何食べた?』と『腐女子、うっかりゲイに告る。』と並べたいのだけれど。まあ、古田を主人公にした意義はあると思う。世の中、見目麗しいゲイだけではないから。 LGBTQを主人公あるいは主題にしたドラマが好調というのは、いい兆しでもある。テレビ局が丁寧に、そして真摯に作ろうと心がけるようになった気もする。「流行りだから入れとけ」という雑な作品は正直、見向きもされない。テレビ局も視聴者も成熟した時代に突入した、と思いたい。■あえて振り返る俳優「ピエール瀧」とは何だったのか■NHK『いだてん』 スタートでコケた理由を邪推したらこうなった■私は「同性カップルに育てられる子どもがかわいそう」とは思わない

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    山里亮太「テラハ婚」辛酸なめ子にはお見通しだったワケ

    辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)   令和始まって以来の「好感度が高いカップル」が誕生し、日本中が祝福に包まれています。お笑いコンビ、南海キャンディーズの山里亮太さんと女優、蒼井優さんの2人とも仕事に対して真摯(しんし)で、才能を発揮し、キャリアも経済的にも豊かで素晴らしいです。 後出しになってしまいますが、『テラスハウス 東京編2019』が始まり、スタジオメンバーのトークをネットフリックスで見ていて、山里さんの微妙な変化を感じていました。佇(たたず)まいから幸せオーラとフェロモンを漂わせているというか…。イケメン度もアップしているようです。 今週の『テラスハウス』の放映はお休みで、第5話が6月17日の24時からなので、結婚報道を受けてのスタジオトークはまだ拝見できていないのですが、きっとアットホームで感動の空気が巻き起こることでしょう。『スッキリ』(日本テレビ系)の天の声でも優しさが声からにじみ出ているようです。 『テラスハウス』で感じたのは、まず発言のトーンが和らいでいるということ。「美男美女」と拍手したり、「華やかですね今回。トップクラスに華やかですよ」と、本当はリア充な若者は嫌いなはずなのに、ポジティブに称賛していたり。女同士の不仲の兆しについても「今育ててるんだよ」と、チュートリアル徳井さんいわく「田中邦衛」のような表情で見つめていて慈愛すら感じさせました。 他にも「オープンな恋愛はテラスハウスの醍醐味(だいごみ)」「前回よりかなりスピーディーですね。ムダな人材もいないですし」と、好意的で余裕のある発言が多いです。何よりも瞳から愛を感じます。結婚発表会見する蒼井優さん(右)と山里亮太さん=6月5日、東京都新宿区(納冨康撮影) ただ、シャイなイケメンで女性陣に人気の流佳に対しては「つまんねーよもう!」「ナチュラルボーンモテ。ふざけんなよ! 死ぬほどの欠点持ってないと許せない」「20歳からのヒーローになりたいって人命救助や介護の勉強してるの」と毒づいていました。年上女子の心を掴む男子に対しては、やはり危機感をお持ちなのでしょうか。恐るべき魔性ぶり 『スッキリ』によると、蒼井優さんも『テラスハウス』が好きで、山里さんの誘い文句は「テラスハウスのご機嫌なゴシップ手に入りました」だったそうです。さらに次の誘いも「テラスハウス続報あり!」。恋愛欲うずまく番組なので、周りの人の恋愛の発展にも貢献しています。 山里さんが会見で、蒼井さんのことを、「芸能界一のモテ女優」とか「魔性の女」と呼ばれて、そうじゃないとかばった発言が男らしいと評価されています。個人的に魔性の女というのはそんなに悪いイメージがなく、むしろ魅力的で憧れるのですが、そう言われてばかりの当事者としてはうんざりしていたのかもしれません。 「『魔性』っていう単語使ってるけど、僕はそんな人間じゃないっていうのを一緒にいてずっと見てたんで、みなさんが思う、その『魔性』から発生する心配ってのは一切ございません」ときっぱり言い放った姿が男らしかったです。 「魔性」の定義もいろいろですが、周りを翻弄(ほんろう)する女性、という意味では、軽井沢を舞台にした前シーズン、『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』に出演していた女子大生、優衣さんはかなりの逸材でした。男性と交際経験がないという色白でおとなしそうな女子大生の登場に、スタジオメンバーは「かわいい」とか「天使」とかすっかりだまされていたのですが、徐々に本性が明らかに…。 山里さんが「俺同じ性格だから分かる」「MVP」と言うほどでした。優衣さんは、振られたばかりの女子に笑いながら優位性を見せつけたり、男子の前で泣いて相談して相手を悪者にしたり、女子2人にそれぞれ悪口を言っていたと吹聴し仲を悪くさせたり、陰で男子と深い仲になっていたり、天然でやっているとしたら恐るべき魔性ぶりでした。入籍会見でフォトセッションに臨む蒼井優(右)と南海キャンディーズの山里亮太=2019年6月5日、東京都新宿区(納冨康撮影) 言わなくてもいいことをわざわざ密告して、年上でモデルの利沙子さんを皆で責めて泣かしたのが「靴下事件」。利沙子さんがキャラクターものの靴下をお土産にあげるときに、「あなたのことは信用しているからあげる」と言って、別の子については「信用していないけどしかたなくあげた」と言ったとか言っていないとかどうでもいい事件です。さらに、利沙子さんが陰でやらせの恋愛を提案していたとか、デートに誘われて面倒くさがっていたとか、本当かどうか分からないですが、この時優衣さんによって暴露されていました。山里「地獄…」と呟いたワケ 優衣さんは優衣さんで、「うるせぇババア」と罵倒していたという本性が明らかに。彼女たちに比べたら、蒼井優さんは全然魔性ではありません。大人の常識人です。 この時、女子同士のもめ事を、山里さんはうれしそうに眺めていました。おそらく蒼井さんとは交際前でしたが、その責め立てられていたモデルの利沙子さんは、少し蒼井さんに雰囲気が似ていました。 その利沙子さんに恋心を抱き、支えていたのがミュージシャンの理生さんです。「ゲスの極み乙女。」のメンバーで既に成功しているセレブですが、ぽっちゃり系でメガネというルックスで、山里さんに「僕のアバター」と言われていました。理生さんは自分のライブ終わりに利沙子さんに告白するも、玉砕。その時、感情移入していた山里さんは、潜在意識下で自分がリベンジしたいという思いになっていったのかもしれません。 この番組は、視聴者も恋愛の疑似体験ができたり、学ぶことが多々ありますが、山里さんも若者の恋愛模様を観察しながら、自分のモチベーションとスキルを高めていったのでしょうか。「自然にキスに持ち込む方法」「いい人で終わらないためには」など、スタジオメンバーに真剣に相談する姿も見られました。 「若くてかわいい子がキスしていいですか、って言うのはすごいかわいいと思うんだよね。でもおじさんが…」というYOUさんの言葉に「やめて、死んじゃう」と悲鳴を上げていた山里さん。「いい人で終わる問題」に対して、トリンドル玲奈さんとYOUさんが「生理的なものだから」「どうしようもない」と言うのに対しては「地獄…」と呟いていました。入籍会見に臨む蒼井優(右)と南海キャンディーズの山里亮太=2019年6月5日、東京都新宿区(納冨康撮影) 時には厳しい意見に鍛えられながら「テラスハウス」で誘い方やアプローチ法を学ばれていった山里さん。リアリティードラマの番外編が現実世界でも続いていくのでしょう。テラハカップルの誰よりも円満で幸せになることを祈ります。 ■天下を取った女芸人「山田邦子」復活の道は一つしかない■元AKB篠田麻里子「玄米婚」を深読みして分かった2つの思惑■あふれ出すSPEEDのカルマ『Body & Soul』の愛欲が止まらない

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    元メンバーの「悪行」が分けたKAT-TUNとSMAPの明暗

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家) ジャニーズのアイドルグループKAT-TUN(カトゥーン)の元メンバー、田口淳之介が大麻取締法違反容疑で逮捕、起訴された。例によってマスコミは大騒ぎをしているが、芸能人の薬物問題など今さら珍しくもないだろう。 少々目を引いたのは「元KAT-TUNの田口淳之介」というマスコミの表記だ。逮捕のニュースが流れた当初は「アイドルグループの元メンバー」だったが、各社が突如として「KAT-TUN」を使った報道に変えた。ジャニーズへの配慮もあって「元KAT-TUN」は使いづらいのが本音だが、田口と言われてピンとくる人はファンぐらいだけに、使わざるを得なかったのだろう。 もう一つ気になるのは、大麻取締法違反容疑による元メンバーの逮捕は、田中聖(後に不起訴処分)に続いて2人目という点だ。さらに、この2人以外にも、女優の黒木メイサと結婚したことで知られる赤西仁も脱退している。もちろん赤西については事件などの不祥事はない。 このように、結成時に6人だったKAT-TUNは、すでにメンバーの半分が脱退しているのだ。それでも解散や活動休止に至っていないのがKAT-TUNたるゆえんでもある。 そもそもKAT-TUNは、堂本光一(KinKi Kids)のバックダンサーとして結成され、グループ名は、脱退した3人を含む、現メンバーの亀梨和也、上田竜也、中丸雄一計6人の頭文字を並べたものだ。 ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川氏は2001年の結成当時、このKAT-TUNに大きな期待を抱いていた。ジャニー氏の先見通り、06年の正式デビュー前からドーム公演を満員にする偉業を達成したほか、楽曲のシングル27曲がすべて1位を記録。これはKinKi Kidsの記録に次ぐ歴代2位で、ジャニーズのアイドルグループの中でも、かなりの実力だと言える。 それだけに「KAT-TUNによるKAT-TUNのためのKAT-TUNのレーベル」として「J-One Records」(デビュー当時)を設置するなど、これは嵐以来の待遇だ。また、ソロ活動も豊富なグループとしても知られており、亀梨、赤西、上田はソロコンサートも開催するなど、これも嵐に似たマネジメント手法だった。 こうした輝かしい実績とは裏腹に、元メンバーが2人も薬物事件で逮捕されるといった黒歴史を刻んできたのもKAT-TUNなのだ。ただ、これだけ負のイメージがつきまといながらも、グループが存続している理由は、繰り返しになるが、ジャニーズのアイドルグループの中でも稀有な実力を持ち、根強い人気を誇っているからだ。逮捕された元KAT-TUNメンバーの田口淳之介容疑者=2019年5月、東京都千代田区(納冨康撮影) では、なぜKAT-TUNは稀有な実力を持ち合わせていると言えるのか。その一方で、KAT-TUNならではの黒歴史はどのように刻まれてきたのか。脱退したメンバーも含めて軌跡を追ってみよう。 そもそも、現メンバーである亀梨は、ジャニーズ所属タレントの人気投票で2連覇している。端正な顔立ちやスタイルはもちろん、ステージパフォーマンスの技術、さらに出演番組での扱いなどから、幅広い年齢層に圧倒的な支持を受けている。スポーツ(特に野球)番組での丁寧でストイックさもさながら、脱退騒動が相次ぐKAT-TUNを最後まで守ろうとする姿勢も人気を支える要因と言えるだろう。 一方、現メンバーながら、KAT-TUNの活動以外の舞台でも高い評価を得ているのが上田だ。他のメンバーがいろんな意味で「濃い」だけに、一般的には印象が薄いキャラだが、作詞や作曲も手がけるアーティストで、ソロコンサートで5万人を動員する実力派でもある。ビジュアル系のようなスタイルが「やや難」だが、現メンバーの中丸と並ぶ年長者で、意外にもシッカリ者として知られ、KAT-TUNを引っ張ってきた。異質なメンバー そして最年長の中丸だが、彼は安定的に露出が最も多い。コンスタントに出演しているドラマのほか、情報番組のレギュラーまで自らのポジションをそつなくこなし、イラストデザインの才能もある。 また、アイドルとして活動しながら5年もかけて早稲田大の通信教育課程を卒業した努力家で、人間性も高くメンバーのまとめ役でもあった。それだけに、メンバーの相次ぐ脱退に最も苦しんでいたようだ。 次は脱退したメンバーだ。 「世界で最もハンサムな顔100人」や「最も影響力あるアーティスト賞」などを手中に収め、世界を舞台として活躍しているのが赤西だ。メンバー時代は、亀梨とのツートップでKAT-TUNのデビュー前からの爆発的な人気の立役者だったことはまちがいない。 だが、デビューの年から突然渡米し、活動を休止するなど「異端児」ぶりを発揮する。結果的に最初に脱退したのが赤西で、立役者である反面KAT-TUNメンバーの「脱退ドミノ」のきっかけを作ったのも事実だ。 異端児と言えば、田中もそうだろう。度重なる事務所のルール違反を理由にジャニーズを追われる形で脱退したが、このような理由で契約解除されたのは、後にも先にも田中だけ。太り過ぎてポジションを奪われた「忍者」の古川栄司という面白い過去もあるが、田中のケースは異例中の異例だった。大麻の所持量が微量だったため、結果的に不起訴処分となったとみられるが、ジャニーズが先に契約解除していたのは、まさに「先見性」と言えるだろう。 そして、田中と同い年で、今回逮捕された田口だ。KAT-TUNを脱退する際は「何のビジョンもなく白紙」として確たる理由もなく去っていったが、10年以上の交際を続けてきた元女優の小嶺麗奈(大麻取締法違反罪で起訴)との関係が原因とも言われていた。逮捕された元女優の小嶺麗奈容疑者=2019年5月、東京都千代田区(納冨康撮影) 一部報道でもあるように、田口の大麻使用は「10年前から」とされており、真相は今後の捜査などで明らかになると思うが、小嶺とのつながりが転落の始まりと言ってもいい。ジャニーズからすれば、胸をなでおろしていることだろうが、昨年末にレコード会社も契約解除されていることから見ればその「危険性」は高まっていたとみるべきだ。 このように見てくると、KAT-TUNがいかに異質なメンバーで構成されたグループであることが改めて実感できただろう。 ただ、KAT-TUNについては、逮捕者まで出る不祥事とはいえ、いずれも脱退後の話だ。よくよく考えてみれば、「国民的アイドル」として伝説と化したSMAPは、2001年に稲垣吾郎が道交法違反容疑などで逮捕され、草彅剛も09年に公然わいせつ容疑で逮捕されている。 逮捕容疑に違いがある以上、単純比較はできないとしても、KAT-TUNとSMAPの「罪深さ」にさほど差があるとは思えない。一方で、メンバー個々人の実力もこの二つのグループに大きな差はなく、相次ぐ脱退やその後の事件などがなければ、KAT-TUNもSMAP同様に国民的アイドルの地位を得ることができたかもしれない。 SMAPの解散、そして嵐の活動休止のように、ジャニーズの大御所グループが一線を引く風潮の中、元メンバーの所業とはいえ、負のイメージがぬぐい切れないKAT-TUNにどのような「終末」が待っているのだろうか。■文春砲「関ジャニ錦戸脱退」にジャニーズが沈黙を続ける理由■あえて振り返る俳優「ピエール瀧」とは何だったのか■AKBに「トドメ」を刺すのは韓国かもしれない

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    天下を取った女芸人「山田邦子」復活の道は一つしかない

    ラリー遠田(お笑い評論家、ライター) 今年デビュー40周年を迎える山田邦子は、言わずと知れたレジェンド芸人である。だが最近、そんな彼女と所属事務所である太田プロダクションとの確執が報じられて話題になった。 事の発端は、4月29日に山田が自身のブログに書いた1本の記事である。彼女は4月27・28日に歌舞伎座で行われた「長唄杵勝(きねかつ)会」に出演していた。芸能生活40周年の記念の年に長唄杵勝会の名取「杵屋勝之邦」を襲名するという特別な公演だった。この公演に関して彼女はブログで以下のように書いていた。 39年所属しておりました太田プロダクションの事務所スタッフには誰ひとりも観てもらえなかったことがとても残念でした。この事は新しい令和の年に向けいろいろ整理が付く、出来事にもなりました。残念です。 事務所のスタッフが誰も見に来なかったことに苦言を呈したのである。これを受けて、『女性セブン』では直撃取材を受けた彼女がコメントをしていた。20年ほど前に社長が代わってから事務所の様子が変わり、自分のマネジャーが動いていない状態に陥ってしまったのだという。その後の報道で彼女の「独立説」までささやかれた。 5月21日の囲み取材で現時点での独立は否定したものの、彼女と事務所が実際にどのような関係にあるのかは分からない。かつては屋台骨として事務所を支えていた彼女が、現在では事務所に見放されて軽く扱われている、ということなのかもしれない。太田プロダクションからの独立騒動について、「ない!」と完全否定した山田邦子=2019年5月21日、東京都(森岡真一郎 撮影) 90年代前半頃の山田の勢いはすさまじいものだった。全盛期には週14本のレギュラー番組を抱え、8社のCMに出演。映画やドラマの出演も多数、CDや小説を出せば軒並みベストセラーに。NHKの「好きなタレント」調査では8年連続で女性部門1位を獲得。本人の話によると、当時の月収は約1億円だったという。女芸人の質・量ともにかつてないほど充実している現在でも、全盛期の彼女の実績を超えられそうな人材は見当たらない。 なぜ山田はそれほど圧倒的な人気を誇っていたのだろうか。その最大の理由は、彼女のキャラクターが当時は斬新だったということだ。山田は学生時代から成績がオール5の優等生だった。芸人でありながら、演技ができて、歌がうまくて、独特のファッションセンスがあり、文章も面白い。彼女が芸人の枠にとどまらないマルチな活躍ができたのは、そもそも優等生タイプの新しい女性芸人だったからだ。山田邦子「唯一の活路」 当時は今よりもずっと「笑いは男の仕事」という風潮が強かった。そのため、女性芸人自体があまり目立っていなかった。今でこそ、女性芸人がドラマに出たり、本を書いたり、ファッションセンスを評価されたりするのは珍しいことではない。だが、当時はそういう女性芸人がほとんどいなかったため、山田の存在感は際立っていた。派手なファッションで明るいキャラクターの彼女は、バブル期前後の浮かれた空気に似つかわしいタイプの芸人だった。 だが、日本の景気低迷に伴って、彼女の人気もどんどん落ちていった。山田以外の女性芸人も続々と世に出てくるようになり、あぐらをかいていられる状態ではなくなってきた。優等生だった彼女はこれまでどんな女性芸人も達したことがなかったような高みにまで上り詰めてしまったため、そこから落ちていくときの勢いもすさまじく、地道に撤退戦を戦い抜くことはできなかった。   最近、山田をテレビで見かける機会が少ないのは、彼女が一度は頂点を極めてしまった芸人だからだろう。彼女は全盛期には自分の番組をたくさん持っていて、司会を務めていた。自分が仕切ることに慣れているので、いまさらひな壇に座って大勢いるゲストの1人という立場に置かれても、そこでうまく立ち回ることができないのだろう。 テレビタレントは、時代の移り変わりに合わせて自分のキャラクターをマイナーチェンジしていく必要がある。また、年齢を重ねることで世間から求められるものも少しずつ変わってくる。山田は良くも悪くもキャラクターが若い頃からずっと変わっていないようなところがあるため、それが時代の空気や自分の年齢に合わなくなってきたのではないか。 ただ、逆に考えると、最近の山田が事務所と何やらもめているというのは、必ずしも悪い話ではない。なぜなら、何も話題にならないよりも、たとえネガティブであっても話題になっている方がタレントとしては望ましいからだ。芸能人物、派手なチュウリップスカートで”新恋人”?のRYO(右)と新曲「涙の贈り物」を披露する山田邦子=1993年2月 キャリアが長く、いまさら守るものもない彼女は、芸能界で起こったことに関して気兼ねなく好きなことを言える立場にある。坂上忍や梅沢富美男の最近の活躍ぶりを見れば分かるように、臆することなく自分の意見を発信できる「ぶっちゃけキャラ」は今のテレビでは重宝される存在だ。山田がテレビタレントとしてこれから復活することがあるのだとすれば、そんな「ご意見番」路線しかないのではないかと思う。■『バイキング』で王道をあえて外す司会者、坂上忍が見せた弱み■元AKB篠田麻里子「玄米婚」を深読みして分かった2つの思惑■剛力彩芽はきっとZOZO前澤友作氏を踏み台にする

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    『バイキング』で王道をあえて外す司会者、坂上忍が見せた弱み

    片岡亮(ジャーナリスト) 職場や学校で顔を合わせば「昨日見た?」と、前夜のテレビ番組の話題を切り出すのが当たり前だったのも過去の話。日本人の生活に定着していたテレビの前の「家族団らん」も減った。 その影響か、「最近のテレビはつまらない」と断じる人もいる。ただ、そういう人に限って、テレビ番組を見比べているわけでもないので、単に「見ない理由付け」をしているにすぎない。実際は、インターネットの普及などによる娯楽の多様化に伴い、テレビの視聴習慣が以前より減っただけである。 そもそも、テレビというメディアは、人々の生活習慣に馴染ませる「商業ツール」でもある。米英、中東、中華圏、アジアの主要局を幅広くウォッチしていると、多くのテレビメディアがドラマやスポーツ、アニメなどをそれぞれ一定の時間帯に編成し、視聴者の習慣化を図っていることが分かる。いつでも好きな映像コンテンツをピックアップできて、「主導権」が視聴者側にある米ネットフリックスなどの動画配信サービスとは、似て非なるものだ。 つまり、テレビは録画視聴を踏まえても、基準をタイムテーブルに置いているため、生活パターンが固定化している人ほど見続けやすい。中でも、報道・情報番組は生活リズムに入り込みやすいだけに、アンカーやキャスターが交代しただけで批判を浴びるのも、習慣の変化に戸惑う視聴者が多いからだ。 2014年、『笑っていいとも!』の後継番組として始まったフジテレビ系『バイキング』も視聴習慣の変化に苦しんだ番組の一つだ。「地引網クッキング」コーナーで注目を集めることはあったが、何せ31年半続いた国民的長寿番組の後釜だけに、当初から視聴率で惨敗が続いた。 だが、毎分視聴率で1%を割り込む苦戦ぶりも、あくまで局側の想定内だった。スタート時に司会者を曜日替わりで臨んだのも、試行錯誤しながら番組を構成していくことが前提だったからだ。果たして1年後、月曜日の司会だった俳優の坂上忍が全曜日を担当することになる。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 司会者の固定をきっかけに「生討論」という方向性も明確になり、当初1~2%台だった視聴率も、週平均4%台に乗せるまでに視聴の習慣化が進んだ。それどころか、昨年は、ついに時間帯民放トップも獲得し、番組最高の8%台を記録するまでになった。 視聴者が増えれば、坂上の「毒舌トーク」への批判も目立ち始めるのも当然だ。ただ、低視聴率に喘いでいたころ、彼が政治や事件などシリアスな話題を悩みながら扱っていた様子など、現在の視聴者は知らないだろう。強くなる「オレ様の持論」 あまりに厳しいモノ言いに、ゲストから「そこまで言ってしまって、僕らは人のことが言えるのか」と問われたとき、坂上は「そんなことは分かってるんだよ、僕だって」と語気を強めて言い返したこともあった。報道番組には客観的な視点が必要となるが、番組のコンセプトは生ホンネ「トークバラエティー」である。坂上の芸風にしても主観なしには成り立たないから、この境界線にジレンマが生じていたのかもしれない。 しかし、数字が良ければ開き直れるのが「勝てば官軍」のテレビ界である。「オレ様の持論」は次第に強くなっていた。 1年前、ロックバンドONE OK ROCKのボーカル、Takaが、元フィギュアスケート選手でタレントの浅田舞との交際が発覚した際には「外国で通用するアーティストが…舞ちゃんか。できたら外人と付き合ってほしい」と、浅田とは「不釣り合い」とばかりに見下した。不倫が発覚した格闘家、才賀紀左衛門には「脳みそは日々殴り合いか、エッチのことしか考えてない」と切り捨てた。 また、番組のレギュラーを務め、不倫報道で引退した女優の江角マキコに対しては、共演者だったとは思えない辛らつな物言いに「恨みでもあるのか」との批判が噴出した。しかも、放送内容に事実誤認があり、江角本人の抗議を受けて、番組側が公式に謝罪するケチまでついた。 元巨人、桑田真澄の次男でモデルのMattには「どんな人か知らないし、知りたくもない」と大人げなく言い放ち、本人からツイッターで「坂上忍っていう人は何者なの? あなたに僕のこと知ってほしいなんて一言も言ってません」ともっともな反論を受けていた。こうして見ると、「ホンネトーク」もバラエティーとしては面白いが、情報番組として考えればやりすぎに映る。 あるときは、TBSアナウンサーのバラエティー番組での態度を取り上げ、「あの言い方が気に入らない。本当に腹が立つ」と言い切った。「他局批判」は、報道系番組ではタブーであり、TBSの番組関係者も「本人のいないところで、他局のアナを批判するなんて卑怯だ。批判するなら、TBSの番組に出てきて本人を前に言え」と怒っていたほどだ。 一方で、ゲストの不適切発言には、進行役を務めるアナウンサーが謝罪することで対応していた。他局の情報番組で司会を務めるフリーアナウンサーに聞くと「ゲストの不適切発言の対応は、MCが『それはこういう意味ですよね?』と相手に真意を確認する振りを入れたりして、さりげなくフォローします」と答えた。「これはアナウンサーのイロハで学ぶことです」と、そのフリーアナは言っていたが、『バイキング』をはじめ、地上波で5本の番組司会を務める坂上の本業はあくまで俳優だ。 俳優の坂上忍=2016年11月撮影 それゆえ、批判対象も業界内で波風が立たないような人物ばかりになりがちだ。2017年、女優の清水富美加(現千眼美子)が宗教団体「幸福の科学」に出家したとき、「(所属)事務所に対する配慮がない。俺は擁護する気は一切ない」と断言し、タレント個人より業界側のスタンスに立っていた。 一方、線路内に無断侵入した同世代のタレント、松本伊代と早見優には、書類送検でも「重すぎる」と大手事務所所属の「お仲間」を擁護した。良くも悪くも「芸能界の住人」による主観なので、客観性を求める視聴者から反感を持たれることも多くなる。「王道」を歩まない理由 では、肝心の坂上の司会ぶりについては、情報番組のコメンテーターとして出演経験のある者として言えば、手放しで賞賛したくなるほど上手だ。テレビは「見る」と「出る」では大違いだが、「なるほどオファーが途絶えないわけだ」と納得する司会術だった。 その特徴は、理詰めの論法をしっかりと構築していることにある。ワイドショーの主な視聴者は主婦層だけに、「辛いですね」「微笑ましいですね」などと単純な感情論に持っていくことが司会の王道なのだが、坂上はこの手法を採らない。主観を述べつつも、「それではどうすればいいか」というポイントを結論まで自分なりに組み立て、その線に沿って話を展開させている。 主婦層に受けそうにないこの路線は、見る側に偉ぶったイメージを与えるため、あまり得策とはいえない。また、番組を仕切る側にとっては、非常に面倒な作業であり、結論をゲストの専門家任せにすれば、どれほど楽かわからない。それでも、坂上がぶれずにこのスタイルを貫くことで、女子受けの悪いグダグダな討論会にならずに済んでいる。 それに、番組はタレント以外のゲストとスタッフによる事前のリハーサルを経て、坂上の進行にリズムが合うように構成されている。縦横無尽に番組を仕切っているように見えて、実は俳優として予定通りの「司会者」をキッチリ演じているわけだ。 だから、坂上は「こういう返答をして」という期待込みの質問が多い。先日、共演者のヒロミが、別の番組で「自分の意見を長々と言ってから『どう思います?』と聞いてくるから、全部言ってるよ、お前」と坂上に突っ込んでいた通りだ。 昨夏、ワイドショーがこぞって取り上げた日本ボクシング連盟の不正問題でも、かなり勉強した跡が見受けられた。他の番組が山根明会長(当時)の強烈キャラを「おもちゃ」にする中で、坂上はスポーツ庁など行政側の動きに話を上手に何度もつなげていた。 見識ももっと浅く、気楽な立場で司会に臨んでもいいはずなのに、演劇のように綿密に討論を作り上げていく姿は、まさに坂上が天才子役として名を馳せてから約50年活躍を続ける役者だからといえる。俳優の坂上忍=2018年11月撮影 そんな坂上だが、都内のあるイベントで取材したときに思わぬ光景を目にした。一般の中学生が交際女性について質問すると「いや、あの…停滞しています」と珍しく回答に困っていた。計算していないときの坂上は矢継ぎ早に言葉を返すタイプではなかったのである。 最近は、テクノユニット、電気グルーヴのピエール瀧による麻薬事件で、相方の石野卓球のツイートにストレートな苦言を呈し、バッシングを浴びてしまっているが、それほど番組が「坂上劇場」になっていることの表れだろう。好きか嫌いか、評価を二分しやすい司会者だが、やはり坂上は「比類なきテレビタレント」なのである。■ 上沼恵美子M-1騒動「更年期障害」でオンナは傷つきません■ 「お笑いと社会批評の境界」茂木健一郎が考える日本の政治コメディ■ 「嵐は永遠に未完成」ゆえに完璧なアイドルになった

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    朝ドラ『なつぞら』女優ポーズを崩さない松嶋菜々子が浮いている

    上村由紀子(フリーライター) NHK朝ドラ100作目の『なつぞら』が絶好調です。 初回から約2週にわたって主人公・奥原なつの子供時代のエピソードが続き、それがドラマチックかつ子役の粟野咲莉(さり)が非常に巧みだったため、高校生になったなつ=広瀬すずへのシフトも心配されました。しかし、なつが幼なじみに北海道時代を回想し語るという構成を取ったため、そこは難なくクリア。 かつて「生涯で一番思い入れがある作品」と大河ドラマ『真田丸』について語った草刈正雄も、スタッフの多くが『真田丸』と重なる『なつぞら』の現場で、なつが身を寄せる柴田牧場の牧場主・柴田泰樹(たいじゅ)役として大フィーバー。いかんなく『アルプスの少女ハイジ』のおんじ感を醸し出しつつ、ドラマに深みを与えています。 広瀬すずは馬を乗りこなし、死にかけている子牛に人工呼吸を施して、山に向かって「教えてー!」と叫ぶなど、十勝に生きる酪農少女を好演。クラスに女子が2人のみという状況の中、もう1人の女子・よっちゃんを牛に見立てて蘇生術を再現するなど、「美少女だから何やっても許されると思ってんじゃねーぞ!」的なキャラクターを楽しそうに演じる姿はとてもチャーミング。 そんな『なつぞら』の中で、何とも言えない違和感をまとっているのが、柴田牧場の柴田剛男と富士子夫妻。演じているのは藤木直人と松嶋菜々子です。JALボーイング737型機に特別塗装された「なつぞら」=日本航空羽田格納庫(撮影・矢島康弘) もともと剛男となつの実父は戦友で、どちらかが戦死したら残った方が相手の家族を助けようと約束を交わした仲。剛男はその約束を守り、戦災孤児として東京の施設に収容されていたなつを引き取り、十勝へと連れ帰って、家族の一員として育てることに。 なつには兄と妹がいるはずなのに、どうして剛男はなつ1人を十勝に連れて行ったのか。ドラマの冒頭、そんな疑問を持った視聴者も多いと思うのですが、藤木直人から表出するほわんとした天然感で「あれ、取りあえず見つけた1人だけ確保しちゃった?」と思わずにはいられませんでした。実際は、兄は自分の意志で東京に残り、妹は親戚の家に預けられていたわけですが。 また、剛男は北海道の家族にも戦友の遺児を連れて帰ると伝えていなかったため、十勝サイドもプチ混乱。ある日突然、戦地から帰ったお父さんが見知らぬ女の子を連れていたら、待っていた家族もそりゃあびっくりしますよね。報告、連絡、相談大事。松嶋の「女優ポーズ」 この剛男と富士子の夫婦、驚くくらい「酪農感」がありません。なつ役の広瀬すずが役作りのために体重を増やし、日焼けした状態を表現するのに顔をドーランで汚しているのと対照的に、松嶋さんは完璧なスタイルにきれいな白い肌メーク。牧場を歩く時も二の腕がスっと美しく見えるポーズを忘れない姿はさすが「女優」。役としての生活感がないというか、生まれてからずっと父親に育てられ、幼いころから酪農に携わってきた空気が1ミリも感じられないというか。 藤木さんからも土の匂いが全くしない。もともと柴田家の入り婿である剛男は、泰樹が連れてきた富士子の婿候補の中で完全なダークホース。いつも本を読んでいて、コイツはないな、と泰樹が思っていたところ、富士子が選んだのが剛男だったという結末。 そう、なんかこうこの2人って、戦後すぐの北海道で大地に根付いて自然とともに生きている夫婦のテンションじゃないんですよ。夏休みで東京から親戚のところにホームステイしてます感が強過ぎて。今は農協にお勤めの剛男なんて、おしゃれなカフェで普通にパンケーキとか食べてそうですから。泰樹おんじが十勝を開墾したゴリゴリの開拓者の風情なのとは真逆のたたずまい。 女優、特に松嶋菜々子のように、ずっと主役かヒロインの枠で常に画面の中央に立っていた人が、ある時期から「主役のお母さん」をはじめ、助演に回ったり、役柄が変わっていくのって、ご本人の気持ちを考えてもなかなか難しいことだと思います。そういえば、50代以上の日本の女優で主演オンリーなのって、今や沢口靖子姫、もしくは吉永小百合王女しかいない気が。 だけどこのままだと、『なつぞら』の富士子ちゃんこと松嶋さん、過去の朝ドラヒロインが100作目に大集合!のうちの1人で終わっちゃう気もするのです。もっと富士子のたくましさや本当の強さをしっかり見たい。今は比較的出番も少なめで見せ場もほぼない「おしん」こと小林綾子がこの先本気を出してきたら大変ですよ。向こうは橋田壽賀子ファミリーよ。女優、松嶋菜々子=2018年1月12日、東京・丸の内(撮影・中井誠) もちろん『なつぞら』のヒロインはなつなので、彼女を中心に物語が展開するのは当然ですが、もう少し泰樹以外の柴田家の人々もじっくり見たいなあ、とも思うわけです。あまりにいろんなことがきれいで生活感がなく、北海道の美しい景色がバンバン映し出されるのを見ていると、リアリティーがなさ過ぎて、ちょっとむずむずしてしまう。 と、好き勝手書いていたら、あっという間に泰樹は農協への加入を決め「舅VS婿のミルク問題」は30秒で解決。えええー、さすが朝ドラ。ヒロインが舞台に立ったことをきっかけに、あんなにくすぶっていた火種もあっさり消えちゃうんですね。そしてなつが東京に向かうことで事態はいろいろ動きそうな予感。今後の展開がどうなるのか、柴田牧場の牛とともに見守りたいと思います。■NHK『トクサツガガガ』私が一瞬、涙目になったワケ■NHK『いだてん』 スタートでコケた理由を邪推したらこうなった■『半分、青い。』共感できないヒロイン、それでも私は好きである

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    あえて振り返る俳優「ピエール瀧」とは何だったのか

    吉田潮(ライター・イラストレーター) 善人だがうだつの上がらない夫、いぶし銀のベテラン刑事からホンマモンの極道まで、現代社会のどのフィールドにもいそうな「人物のリアリティー」を匂わせる役者、それがピエール瀧だった。コカイン摂取による麻薬取締法違反で逮捕という報道は衝撃を受けたし、それ以上に30年近く薬物依存症だったことに驚いた。 起用した側はてんてこまい、特にNHKでは多くの作品に貢献していただけに、対応に追われたようだ。上映や放送、制作物の販売を自粛するかどうかはその媒体の体制や姿勢次第、そこはもう仕方ない。ただ、役者・ピエール瀧に惚れ込んだ人々の思いには同調したい。役者としての貢献度は高かったし、全てをなかったことにする「世の中の潔癖」は恐ろしいと思うので。 ピエール瀧は演技力が抜群にうまいタイプではなかったが、その場の空気を一変させるような存在感に、映画やドラマの作り手は惚れ込んでいたのだと思う。うまい人がほしいのではなく、虚構の世界に一滴の現実味がほしい、そんなニーズに応え続けてきたのだろう。 これはピエール瀧に限ったことではない。特に、NHKはミュージシャンの俳優起用が実にうまい。「主演俳優は大手事務所で順繰りに回す」民放局ドラマの悪しきシステムが一切ない。そして、「CM出演で認知度や好感度が高い=スポンサーを引っ張れる」という広告代理店マターのきなくさい条件も一切不要だ。そのドラマの世界観に本当に合致する人材を引っ張ってくることができる。 例えば、朝ドラ『カーネーション』(2011年)でヒロイン・小原糸子(尾野真千子)のいとこを演じたのが、ロックバンド、黒猫チェルシーの渡辺大知だ。キョトンとした坊ちゃん感を見せる一方で、『サイレント・プア』(2014)では鬱々とした引きこもりの青年役を演じたり、『ゾンビが来たから人生見直した件』(2019年)ではミュージシャン希望の青臭い青年だが、ゾンビになってしまう切ない大役を果たした。NHK放送センター建物のロゴ=東京・渋谷 また、ロックバンド、銀杏BOYZの峯田和伸も同様に、NHKから斬新な抜てきをされた役者である。BSプレミアム『奇跡の人』(2016年)では、落ち着きのないロックなクズだが、目と耳に障がいのある女児と心を通わせる青年を好演。朝ドラ『ひよっこ』(2017年)では田舎でくすぶるビートルズ好きのおじさん役で人気を博した。現在、大河『いだてん』でも気風のよい人力車夫を演じている。 受信料を徴収する皆さまのNHKなので、不祥事が起これば大惨事&大掃除となるのは仕方ないとして、この一連のミュージシャン起用は、民放ドラマ界のキャスティングにもかなりよい影響を与えてきた、と思っている。裏社会の役ばかりに注目 話をピエール瀧に戻す。ひとたび罪を犯すと、裏社会のその手の雰囲気の役をやっていたことばかりが取り沙汰されるが、そこに異論を唱えておこう。連ドラ初主演作はお馬鹿な学園コメディー『おじいさん先生』(2007・日テレ系)だった。 演じる山之内金太郎は、ラクダシャツにステテコ姿、口は常にモチャモチャと動き、つえをつきながら徘徊(はいかい)もする「THEおじいさん」である。不良たちで荒廃しきった高校で、このおじいさん先生がさまざまな案件を解決、というか、和やかに穏やかに鎮静化させるという荒唐無稽なコメディーだった。 すさんだ高校生たちの心の中に実は芽生えている優しさや真面目さを、おじいさん先生が意図せず掬(すく)いあげて、人としての成長を促す、みたいな物語だ。心温まる学園モノと手放しで称賛するにはやや問題があるけれど、とにかく笑える。おじいさんっぷりがそこはかとなくおかしくて。ガタイがいいのに、中腰でブルブルと震えながら徘徊(はいかい)し、たん唾をあちこちにペッと吐き捨てる。頻繁に死にかけては三途の川の手前で蘇る。今まで見たことがないようなスーパーヒーローだった。 また、『64』(2015年・NHK)では元刑事で、今は県警広報官という主役を見事に演じ切った。この役は背負わされているものが実に多く、難役だったと思う。 醜形恐怖症の娘が今も行方不明という家庭の問題、昭和64年に起きた女児誘拐殺害事件を解決できなかった元刑事の忸怩(じくじ)たる思い、そして現在は警察上層部の隠蔽(いんぺい)体質に翻弄(ほんろう)される広報官として、新聞記者連中からつるし上げられる苦悩。熱血漢の一言では片付けられない、複雑な感情を抱えた男を好演した。 映画版もあるが、個人的にはこのドラマ版のほうが真に迫るものがあり、緊張感と憤慨をダイレクトに味わえたと思っている。ただし、新井浩文も出演していたドラマなので、現実的にはお蔵入りなのだが。映画の舞台挨拶に登壇したピエール瀧=2016年03月、東京都千代田区有楽町(撮影・加藤圭祐) もうひとつ、『きんぴか』(2016年・WOWOW)の適役&熱演も忘れられない。跡目争いで捨て駒にされたヤクザと、議員の罪をまるっと被せられた元官僚の秘書、そして、安全保障関連法案の撤回を上層部に命を賭して要求した陸上自衛隊員。この3人が「肚(肝っ玉)」「頭(頭脳明晰)」「腕(腕っぷし)」としてひそかに集められ、腐りきった世の中の巨悪に鉄槌を下す、というドラマだった。さて、ここで問題。ピエールはこの3つのうち、どれを演じたでしょうか。役者ピエール瀧をもう一度 答えは「腕」の陸上自衛隊員。ヤクザは中井貴一、元官僚はユースケ・サンタマリアが演じた。上意下達の組織の中で己の正義に従って動いた熱血漢を、ピエールは見事に体現した。初回、迷彩服に身を包み、上層部の会議にたったひとりで直談判に行き、自衛隊員が戦争に加担させられる法案に断固として反対したのだ。これ、普通のドラマだったら迫力不足のイケメン俳優とか、体育会系御用達俳優が演じて、「キャーかっこいい」で終わるところだが、ピエールの、決してマッチョではない、まんべんなくがっちりした分厚い体型が妙にマッチしていた。 3人の中ではちょっとコミカルな役どころでもあり、家族からは見捨てられた哀しき英雄でもあり、惚れた女を部下に託して身を引く男気のある役でもあり。大立ち回りのアクションも、ロケットランチャーぶっ放す姿も、やたら魚肉ソーセージを頰張る「男気」演技も、さまになっていた。今となっては遠い目になってしまうのだが、役者・ピエール瀧が最もかっこよかった名作でもある。怪演した映画も実に多数あるのだが、今回は割愛。まずはテレビドラマにおけるピエール瀧の功績をちゃんと称えておきたい。 保釈時、七三分けで心なしかやつれた顔でメディアの前に姿を現したピエール瀧。長いこと頭を下げていた彼に願うことは、なにはともあれ長期戦になるであろう治療である。警察と厚労省が解明すべきは、薬物を買った人だけでなく売った人と作った人のルートだ。見せしめの効果は絶大だが、社会的制裁が社会的抹殺になってしまうのはどうかと思う。 保釈され謝罪するピエール瀧被告=2019年4月4日、東京都江東区(撮影・蔵賢斗) 今後、世間の熱しやすく冷めやすい処罰感情をどうとらえるか。テレビ局や映画配給会社の信条が問われることになる。誰がどう判断するか、そこに信念があるかどうか、である。 そして一番大事なのは本人の心だ。治療に専念して、依存症を克服できた場合、どうしたいか。表舞台に復帰したいのか、それとも一般人としてささやかに暮らしていきたいのか。今すぐ答えを出せ、というわけではない。省みる時間は十分にあるはず。勝手ながら私は、役者・ピエール瀧をいつかもう一度観たいなぁと思っている。■ピエール瀧、出演作品の相次ぐ自粛「それでも起用」となぜ言えない■NHK『いだてん』 スタートでコケた理由を邪推したらこうなった■『半分、青い。』共感できないヒロイン、それでも私は好きである

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    AKBに「トドメ」を刺すのは韓国かもしれない

    さやわか(批評家) AKB48をはじめとするアイドルたち、いわゆる「AKB48グループ」の凋落(ちょうらく)ぶりが話題になっています。 まずは最近、このグループが悪い意味で世間の耳目を集めてしまっているのは明らかです。新潟を拠点とする派生グループNGT48の山口真帆さんが被害に遭った暴行事件について、醜聞がとどまるところを知らないのです。 何と言ってもNGT48グループの運営を担うAKS社側の対応がマズすぎます。他メンバーや一部ファンの事件への関与すらささやかれる中で、運営側の態度は、山口さんを守り、真相を徹底解明する強い意志が感じられないものでした。運営サイドの記者会見の不遜ぶりは、これまた昨年に批判を浴びた、日大アメフト部の一件を思い出させるほどです。 まあ、これがもしジャニーズなんかで起きた騒動あれば、いろんな意味で事務所も軽やかに、かつ速やかに火消しを行ったでしょう。しかし、AKB48グループは、何だかんだ言ってもしょせんは芸能界の新興勢力。やり方がマズければ、マスコミだって全力でたたきはじめます。ジャニーズみたいに、右にならえの翼賛体制でサポートしてはくれません。 しまいにはAKS社が、第三者委員会の報告書として、「事件が起きたのは新潟の都市部が狭く、交通機関が発達しておらず、またファンの絶対数が少ないという特殊性があったため」という文書を公開。地域型アイドルなのになぜか地域をディスり始める、謎の事態に発展しております。 そんなわけで、騒動は運営側自らの手によって、現在進行形で延焼拡大しているところです。今やNGT48は新潟でのレギュラー番組が消え、地元のイベントも中止が相次いでいます。NGT(NIIGATA)と名を冠しているのに、新潟がらみの仕事がガンガン減っているわけです。グループの趣旨的にも、マズいんじゃないでしょうか。NGT48の山口真帆への暴行被害事件を受け、第三者委員会を設置して原因を調査していた運営会社のAKSが新潟市内で会見=2019年3月、新潟市(小山理絵撮影) 一方、AKB48グループが毎年実施しているメンバーの人気投票、いわゆる「総選挙」も、今年は行わないという発表がありました。やらない理由としては、昨年が10回目の実施だったから、ということのようです。 人気メンバーを決めるのに、10回目だろうが20回目だろうが、節目も何もないように感じますが、運営側のコメントによると「区切りというのが大きな理由」とのことです。まあ新潟の事件も、あくまで「小さな理由」としては計上しているんじゃないでしょうか。韓国は「世界標準」 もっとも、AKB48グループはもともと、グループの運営組織がメンバー全員をガッチリと管理しているわけではありません。メンバーのマネジメントを一元的に行う組織としてはAKS社が有名ですが、人気メンバーは在籍中から積極的に他プロダクションへと移籍します。 言い換えれば、AKB48グループとかAKS社というのを、あくまでもグループ卒業後にさらなる芸能活動をするための通過点としてとらえているメンバーも少なくない、ということです。 というわけで、AKB48グループ本体が不祥事で求心力を失いつつあるならば、ここをステップにして、外部での活動を模索するメンバーが今後さらに増えていくものと思われます。 図らずも、昨年から本格的に始動しているAKB48グループの日韓共同プロジェクト「PRODUCE48」などは、メンバーにとって理想的な「外部」になりつつあります。 このプロジェクトは韓国の音楽専門チャンネル「Mnet」の企画で、簡単に言うと視聴者投票型のアイドルオーディション番組です。 ただ、そこで選ばれるメンバーは、当然のことながら日本とは違います。楽曲や意匠はAKB48っぽいのに、セクシーなルックスやダンス、歌唱力の高さは明らかにK-POP風という、アイドルファンとしては「なんだこれ見たことねーぞ」的な面白さがあるのです。 このオーディションには、日本のAKB48からも何人かメンバーが参加しましたが、いずれも敗退。K-POP直系の、高度なパフォーマンス力に圧倒されてしまいました。東京・秋葉原のAKB48劇場=2014年6月(小山理絵撮影) そもそも、なぜK-POPのアイドルは日本に比べて超絶ハイクオリティが好まれるのか。それは、もともと日本のエンターテインメント産業が世界第2位の規模だったことに関係します。 要するに、日本はガラパゴスな市場でも十分カネ周りがよかった、ということです。運営側とメンバーは日本人向けの商品を作って、ファンである日本人もそれを楽しんで、みんな海外なんて意識しなくても、生きていけた。 これに対してK-POPの産業規模は、もともと日本よりずっと小さかったわけです。だから韓国内だけでなく欧米やアジア市場で買ってもらう必要があった。そんなわけで、次第に楽曲やパフォーマンスがグローバル標準に洗練されていったのです。正気じゃない運営 PRODUCE48に参加したAKB48のメンバーも、日本では優れたパフォーマンスを披露していました。しかし、世界標準の韓国では太刀打ちできようはずがありません。高橋朱里や竹内美宥などはショックを受け、オーディション後まもなくAKB48を卒業してしまいました。 ただし、彼女たちは現在、今後は韓国で活動したいと意欲を見せています。これはつまり、彼女たちはいい意味で「世界を知った」ということです。AKB48グループは、国内では文句なしに最大の規模を持つアイドルグループです。しかし、その外にも世界は存在した。それを知って世界に出て行くのは、いいことじゃないでしょうか。 まあ、アイドルファンとしては永遠にグループにいる姿を追い続けたい気もしますが、より「訓練された」アイドルファンになると、卒業して順調にキャリアを伸ばしていく「推し」を、微温的なまなざしで応援するようになっていきます。 しかも近年では、アイドルグループのメンバー脱退や別グループ加入も珍しくないのです。だから所属グループ内の雰囲気があんまりよろしくないのであれば、もう、保護者のような気持ちで、「ああ、早く外部に出てほしい!そうしたら気兼ねなく応援できるようになるのに!」と思うファンも増えるかもしれません。 まして、AKB48グループ本体がゴタゴタしているのであれば、国内にこだわる必要はないわけです。韓国での活動を明らかにした高橋朱里(左)=2015年9月(山内倫貴撮影) そんなことをやっていると日本の貴重なアイドル人材はガンガン国外流出しますが、第三者委員会の報告書で、「日本の地域社会でアイドル活動するのが間違っている」的な開き直りが書かれていたのを見るに、運営サイドは意外とのほほんと構えているようです。つまり、メンバーを手厚くケアして、日本にいてもらおうという気はないのかもしれません。 しかし、そういう運営側が雇用者を軽視した体制が、他国への人材流出をガンガン招いているのは、既にアイドルに限らない分野の例で明らかです。早く正気に戻っていただきたい次第であります。■元AKB篠田麻里子「玄米婚」を深読みして分かった2つの思惑■「劇場支配人は神様?」NGT事件で見えたアイドルビジネスの本音■NGT48山口真帆さんへの対応はここがマズかった

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    文春砲「関ジャニ錦戸脱退」にジャニーズが沈黙を続ける理由

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家) 関ジャニ∞(エイト)のメンバー、錦戸亮が脱退を模索していると週刊文春が報じた。これに関して、ジャニーズ事務所や本人の発表がないだけに、憶測だけが独り歩きしているようだが、結論から言えば、遅かれ早かれ「事実」になるだろう。 こういった脱退騒動になると、必ず出てくるのがメンバー同士の不仲説で、当たり前だが、実際はどのグループにもあり、それを週刊誌などが大げさに書き立てているだけだ。むしろ、グループ内の人間関係に全く問題のない円満な例など皆無といっていいぐらいだ。 では、なぜ錦戸の脱退話が浮上したのか。そもそも、芸能人の場合、グループや組織の一員としての立場と、ソロ活動ではかなり差異がある。例えばグループの曲は作れないが、ソロ活動としての曲なら作れるといったアーティストは少なくない。 「たのきんトリオ」のメンバーで、後にバンド「THE GOOD-BYE」に参加した、野村義男(よっちゃん)は、かつて「他の曲は作れるがTHE GOOD-BYEの曲は作れない」と悩んでいた。 チェッカーズの藤井フミヤやLUNA SEAの河村隆一らも同様に「組織」(バンドやグループ)と「個人」で活動の性格が異なってくる。要は、同じ人がマイクを持つにしても、ステータスやポリシーも変われば、できること、やれることの全てが変わってくる。 こうしたことを前提に、錦戸について言えば、最近では昨年のNHK大河ドラマ『西郷どん』やフジの月9ドラマ『トレース~科捜研の男~』に出演するなど、俳優としての地位を確立しつつある。一目瞭然だが、俳優と関ジャニのメンバーでは、同じ芸能活動であってもまったく種を異にする。 その中で、音楽的な実力を持った渋谷すばるが脱退し、さらにSMAPや嵐の例を目の当たりにしただけに、関ジャニの活動が足かせに感じるようになってきているのは確かだ。(イラスト・不思議三十郎) また、錦戸が脱退や解散を口にし始めた理由はもう一つある。関ジャニは当初、文字通り8人でスタートしたが、当時未成年だった内博貴が飲酒騒動を起こして脱退。その後は7人となったが、錦戸にしてみれば、7人で現在の地位を築いたグループとの思いが強く、誰か一人抜けても加入しても、それは関ジャニではなく他の違うものだと言いたいのだ。 渋谷の脱退会見の際、錦戸だけが「残ってほしかった」と話し、涙を流していたのは、人一倍こうした思いが強いからだ。渋谷脱退を機に、錦戸は関ジャニも解散するべきだとの思いが強かったようだが、今回自身も脱退する意志を固めたことで、再度解散を持ちかけたのだろう。 振り返れば、錦戸はかつて関ジャニとNEWSを掛け持ちしていた。既に原型をとどめていないNEWSを脱退して関ジャニを選んだ錦戸だから言える「オリジナル」の重要性を強調してきたことはよく知られている。嵐の活動休止が影響? また、SMAPの解散や嵐の活動休止の際にも指摘してきたが、人気アイドルグループが「長寿化」する傾向が強い今、金銭的にはもちろん、個人の能力にも自信を持っているだけに、同様のケースが連鎖的になるのは当然だ。 SMAPは解散したが、嵐をはじめ、TOKIOやV6などを見ていれば、このまま年を重ねていくことに不安を感じずにはいられない。錦戸は今34歳だが、そろそろグループからの脱却を本気で考える年になったというだけだ。要するに錦戸は、すでにオリジナルでなくなった関ジャニを無理に続けるより、それぞれの道を歩むべきだと考えているのだ。 世間ではジャニーズの崩壊などと煽るが、これは別にアイドルグループやジャニーズに限ったことではない。 ただ、錦戸の脱退騒動がこれまでと違うのは、ジャニーズ事務所の対応だろう。関ジャニほどのグループの騒動にもかかわらず、沈黙を続けている。もちろん、不祥事ではない以上、早急な対応は必要ないだけではなく、週刊文春の報道と言えども、ジャニーズ事務所は反応するに値しないと判断しているようだ。 また、これまで僕が何度も指摘してきたが、社長のジャニー喜多川氏は2020年の東京五輪しか頭にないといっても過言ではない。滝沢秀明(タッキー)を後継指名したことと、嵐の活動休止を五輪後まで担保したことで、関ジャニの処遇など問題視していない可能性もある。 ただ、本来なら、ジャニーズ事務所が明確に否定するか、記者会見を開いて錦戸の脱退や解散について説明させてもいいはずだ。これは、やはり嵐の活動休止の影響がないとはいえないだろう。(イラスト・不思議三十郎) すでにジャニーズは関ジャニの処遇についていくつかの案を持っているとされており、関ジャニのコンサートや出演番組などへの影響を最小限にするタイミングについて、実質的に事務所を切り盛りする副社長の藤島ジュリー景子氏が頭を抱えているようだ。 嵐が2020年末での活動休止という形で円満に公表した直後だけに、関ジャニの活動休止や解散、錦戸の脱退のタイミングについては、さすがのジャニーズもすぐに決められないのだろう。 今回のジャニーズの沈黙の背景には、ジャニー氏の明確な指示がないことに加え、嵐の活動休止の前か後かなど、円満に軟着陸させるための時間稼ぎの可能性が高い。 先にも記したが、錦戸の脱退、もしくは関ジャニそのものの解散や活動休止についての正式発表は、そう遠い話ではない。■キンプリ岩橋とセクゾ松島、相次ぐ「パニック障害」の裏側■関ジャニ大倉「ヤラカシ批判」はアイドルとして許されるか■養子縁組も既定路線? ジャニー喜多川が滝沢秀明を溺愛する理由

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    ピエール瀧、出演作品の相次ぐ自粛「それでも起用」となぜ言えない

    片岡亮(ジャーナリスト) テクノユニット、電気グルーヴのメンバーで人気俳優のピエール瀧(本名・瀧正則)が、コカイン若干量を使用したとして、麻薬取締法違反(施用)の疑いで関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕された。所属事務所は謝罪した上で「この事態を重く受け止め、多大なるご迷惑をおかけしております関係各位の皆様へ対応させていただく所存です。また、本人の処遇につきましては、捜査の進捗(しんちょく)を見守りつつ厳正に対処してまいります」とのコメントを発表した。 報道によると、尿検査でコカインの陽性反応が出ており、瀧容疑者も取り調べに「間違いありません」と容疑を認めているという。推定無罪の原則から、事務所は本人の処分について「見守る」としているが、既に関係先への損害は発生しているため、罪の有無に関係なく謝罪対応を進めているわけだ。 その通り、瀧容疑者の逮捕による影響はあまりに大きい。何しろ俳優や声優だけでなく、CMや音楽、ゲーム、アニメ、ラジオ番組など活動の幅が広く、多方面でさまざまな対応が行われた。 このような事件が起こるたびに議論になるのが、芸能人の逮捕で出演番組の「お蔵入り」や差し替え、映像・音楽作品の撤去や販売自粛は必要か、というものだ。インターネット上では「作品に罪はない」という意見が多く見られる。先ごろ、俳優の新井浩文被告が強制性交の疑いで逮捕された際も、出演作品の自粛や差し替えなどが相次ぎ、同様の議論があったばかりだ。 タレントの犯罪や不祥事により、対応を迫られる場合を主に三つに分けるならば、「本人の生出演」「収録済みで公開予定の作品」、そして「既に公開されて流通している作品」になる。30周年の記念ツアー中だった電気グルーヴは3月15、16日に予定されていた東京公演の中止を決定した。 また、木曜パーソナリティーを務めていたTBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』は公式サイトから関連部分を削除し、代役などについて「協議中」としている。これらは「本人の生出演」に該当し、逮捕で不在となるのだから出演取りやめは当然だろう。 出演中のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』は「収録済みながら公開予定の作品」に該当する。NHKは直ちに公式サイトから瀧容疑者の写真を削除した。放送こそ継続されるが、主人公に大きな影響を与える重要な役どころだけに降板は避けられない。 瀧容疑者がキリギリスに扮して出演していた住宅設備大手、LIXILのCMも差し替えられ、ユーチューブの公式チャンネルからも動画が全て削除された。ウォルト・ディズニー・ジャパンは、映画『アナと雪の女王』の日本語吹き替え版で瀧容疑者が声優を務めていたキャラクターの降板を発表、11月公開予定の続編も交代する。出身地の静岡市では、瀧容疑者が歌うPRソング「まるちゃんの静岡音頭」に関する自粛対応を決めた。電気グルーヴの石野卓球(左)とピエール瀧容疑者(2015年12月撮影) これらは「容疑者」の段階であっても、一様に起用停止の方向を打ち出している。理由は詳しく示されていないが、視聴者から受信料を受け取る立場のNHKや、税金を投入している事業の静岡市、イメージ重視のスポンサー企業など、立場はそれぞれでも「犯罪者の可能性が高くなった人物の作品を提供するのは好ましくない」という判断をしたことが容易に推察できる。視聴者などからクレームが来ることも想定しての対処だと言われれば「それでも起用を続けろ」とは言いにくい。被害者のいない罪 ただ、「既に公開されて流通している作品」も対象とするのは議論の余地が大きいだろう。セガゲームスは、昨年12月に発売されたゲームソフト「JUDGE EYES:死神の遺言」の販売自粛を発表した。俳優の木村拓哉が主演する同ゲームで、瀧容疑者はヤクザの若頭役を務めていた。また、所属レコード会社もヒット曲「Shangri-La」(シャングリラ)をはじめ、音楽・映像商品の出荷停止や店頭在庫の回収、デジタル配信停止を決めている。 これらが発売されたのは逮捕前であり、あくまで過去の話だ。音楽家の坂本龍一もツイッターで「ドラッグを使用した人間の作った音楽は聴きたくないという人は、ただ聴かなければいいだけなんだから。音楽に罪はない」と述べたように、音楽業界から疑問の声も上がっている。 確かに、この手の判断を一律に適用すれば、店頭や販売サイトに並んだ出演映画のDVDなども完全に撤去されることになってしまう。ユーザーから販売元にクレームが多数寄せられるようなことも考えにくいため、過剰反応に見えるところはある。 そもそも、犯罪加害者の出演作品の撤去は「被害者に配慮する」という理由が大きいが、犯行確認前のものにまで遡(さかのぼ)らないといけないなら、販売商品のみならず、ネット上の人物画像まで削除しなければならなくなる。世の中から人の存在の痕跡を消すことなどは難しく、「売名行為」が仕事のタレントは不可能といえる。 その観点の流れで、一部の識者やコメンテーターなどから「被害者のいない麻薬事件は例外ではないか」とする意見も出ている。もっともらしく聞こえる主張だが、被害者の有無で線引きすることは話を余計にややこしくするだけだ。 麻薬事件では販売者と使用者が同時に逮捕されることがあるが、両者がタレントであった場合、被害者をつくった販売側はアウトで、使用だけの側はセーフとするのも妙な話だ。 賭博罪なども同様で、同じ犯罪でも被害者の有無で区分けするとなると、中には法解釈で被害者かどうかを認定する裁判があった場合、それをひたすら待つということにもなってしまう。安易に「被害者がいるいない論」を持ち出すのは、刑事犯罪の「幅広さ」を想定できていない人の理屈としか思えないのだ。 海外では、米国のように、被害者のいる暴行事件の加害者であっても、逮捕されて裁判を待つ間に試合に出たプロボクサーがいるし、有罪が確定した直後にドラマ出演した俳優もいる。「米国では犯罪と経済活動を分けて考えるところがある」と指摘する米芸能ジャーナリスト、エイドリアン・ゲール氏は以下のように主張する。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 「犯行とは無関係な仕事や、犯行前に正当な方法で行った仕事への対価までも奪ってしまえば、犯罪者は社会的活動を一切できなくなってしまう。だから、基本的には法や契約に従うべきだ」 つまり、この見解を裏返せば、契約に明記されない勝手な販売中止は犯罪者側の利益を不当に奪うことにもなるという見方もできるわけだ。だから、日本の一部識者の「作品を公開して、報酬を福祉団体に寄付すればいい」という論調ですら、他人の報酬を勝手に決める「暴論」になってしまうのである。自粛だけが正解じゃない ただ、海外でもシビアに販売を自粛するケースはある。出演者が人種差別発言をしたり、未成年を傷つける犯罪行為など社会的に批判の強い事件や不祥事には容赦ない。米国のベテラン女優、ロザンヌ・バーに対する米ABCテレビの対応はその最たるものだろう。 昨年5月、バーがオバマ前大統領の元アドバイザーを「猿」呼ばわりする人種差別的な発言をツイートしたことを受け、ABCは主演の人気ドラマを即刻打ち切り、バーの降板を決定した。コメディードラマ『ロザンヌ』は21年ぶりの復活で大きく話題となり、視聴率も全米トップを獲得していた。それでも、ABCは「弊社の価値観にそぐわない」という声明をハッキリ述べ、一般論ではなく「当社のモラル」を強く示した上で、人気コメディー女優の降板と番組打ち切りを決断した。 一方でバーの謝罪を受け入れ、起用を継続したメディアもあった。海外ではおおむね「ケース・バイ・ケース」で各社が自主判断をしている印象が強い。日本では、逮捕時点で関係する企業が一斉に「右にならえ」で自粛決定をしているように見える。 実のところ、日本人というのは、このケース・バイ・ケースが苦手な民族だ。筆者は日本とマレーシアを拠点として仕事しているが、多民族国家から見る日本人は「清潔でマナーが良く、仕事をきちんとする」と評判が良いが、「マニュアル以外になると臨機応変の対応が苦手」という印象を持たれることが多い。 本来、各自の判断で決めればよいものでも、「みんながそうやっているからウチも」とする風潮があるのは確かだ。だが、裏を返せば、多様な姿勢を認めにくい社会を反映しているともいえる。 そういう意味では、一部報道にあった瀧容疑者の出演映画『麻雀放浪記2020』が出演部分をカットせず、予定通り公開する方向で調整するという判断は興味深い。同じく公開を控えていた映画『居眠り磐音』が代役を立てて登場シーンを撮り直すことを決めている。映画という有料コンテンツである以上、観客である消費者に判断が委ねられるわけで、「収録済みで公開予定の作品」の対照的な「意思」に注目が集まることだろう。2019年3月13日、関東信越厚生局麻薬取締部が入る九段第三合同庁舎から出てくるピエール瀧容疑者(佐藤徳昭撮影) 自粛を決めた日本の各企業も、それぞれ強いメッセージを打ち出したらどうだろう。例えば「わが社は、いかなる種類の犯罪行為も、社会秩序を守る観点から社会的制裁を受けることもあるというメッセージを発信するため、それが被害者のいない犯罪であったり、『推定無罪』の段階であったりしても、著名人による影響の大きさを考えて、苦渋の決断で暫定的に販売中止を決定しました」と発していたら、その決断自体は現在よりも尊重される可能性も高くなる。議論の余地がある話であれば、起用側による意見発信で、判断基準を形成していくことにもつながるのではないだろうか。■なぜASKAは再び覚醒剤を使ってしまったのか■ASKAが覚醒剤から解放されるためのヒント■NHK『トクサツガガガ』私が一瞬、涙目になったワケ

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    元AKB篠田麻里子「玄米婚」を深読みして分かった2つの思惑

    辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト) 「ビビビ婚」「授かり婚」「シニア婚」…いろいろな結婚のネーミングがありますが、意表を突かれたのは元AKB48、篠田麻里子さまの「玄米婚」。元同グループの小嶋陽菜(こじはる)がTwitterで「玄米。。。」とつぶやいたことでも話題になりました。こじはるは、その後「わい白米派」と書き込んでいて、ストイックな生活とは無縁そうな彼女のキャラクターと白米のイメージがマッチしていて良かったです。しかし麻里子さまの「玄米婚」は、ブランディングとしてなかなか巧妙だと感じ入りました。 「彼とは2度友人を交えて食事をする中で、玄米を食べて育ったところや、理想の家族像、将来像などの共通点が驚くほど多く、お互い素の自分でいられることでお付き合いをしてもいないのに結婚ということを自然に意識することができました。『一生一緒にいたい』と心から思えた方です」 というのが麻里子さまのコメントの一部です。「玄米婚」でありながら最近話題の「交際0日婚」(プロポーズを受けてからしばらく付き合ったようですが)。相手の方は、3歳年下の会社経営者です。バラエティー番組『プレバト!!』に出演した彼女は「(相手は)美容室の経営とIT事業をやっています」と明かしています。 またITですか…そんな思いを抱く人も多いかもしれません。そして一般男性と言いながら確実にセレブです。 白米派のこじはるも、高級タワマンに住むIT企業のイケメン社長と交際しているとされます。『週刊文春』(2月28日号)によると、一緒にハワイに行ったり、カリフォルニアのコンドミニアムに滞在したり(そして宿泊代を値切ったり)と悠々自適なバカンスを楽しんでいるとか。 IT社長と交際といえば、女優の方々も思い浮かびます。ライブ配信アプリ「SHOWROOM」のやり手イケメン社長、前田裕二氏と交際している石原さとみ。女優・石原さとみ=2018年7月24日、東京都千代田区(宮崎瑞穂撮影) そして月に行く発言や100万円ばらまきで話題になったZOZOTOWN前澤友作社長と剛力彩芽。ベントレーでデートしたりプライベートジェットでサッカー観戦に行ったり、ゴージャスな交際を繰り広げています。 深田恭子は不動産会社会長と交際。週刊文春にこの会長の2度の離婚暦や破産、「刺青」についての記事が掲載されました。老婆心ながら気がかりです。 相武紗季や伊東美咲、菊川怜、観月ありさなど、会社経営者と結婚した女優も多いです。「玄米婚」二つの意図 ファンにとって、推しの女優やアイドルが社長と結婚すると、遠い存在になってしまう反面、心配な部分も多いことでしょう。アグレッシブな社長は、生命力が旺盛なあまり不倫や浮気、婚外子などが判明することも…。ギラギラしている成功者は敵も多そうです。   しかし、ここへ来て現れたのが「玄米婚」の篠田麻里子。インスタグラムにアップされた、2人のツーショット写真を見る限り、(目の部分が隠されていますが)夫はあまり玄米っぽくない印象です。おしゃれなヘアスタイルで、ヒゲに世慣れた雰囲気が漂い、玄米というよりトルティーヤとか食べていそうな…。でも、今風のルックスと玄米を食べて育ったというギャップが良いのでしょう。 美容やITに漂う業界臭を、玄米のストイックな匂いが打ち消してくれます。社長と結婚した、という事実よりも、「玄米婚」というフレーズの方がパワーワードとして記憶に残ります。社長のギラギラ感も中和されます。そして素朴でまじめで良い人っぽいイメージになります。 AKB時代、自分の意志を強く持っていたとされる麻里子さまなので、人の印象をコントロールする術も体得しているのがさすがです。「雑穀米を食べて育った」だとあざといし、「胚芽米」だとこだわりが強そうです。「発芽玄米」「寝かせ玄米」だとマニアックすぎます。ただ一言「玄米を食べて育った」と書くのが絶妙です。 玄米は美容や健康にいいと言われていて、意識の高い芸能人が食べています。有名なのがローラ、吉瀬美智子、綾香など…。ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富で、GI値(血糖値が上がる速度)が低い玄米にはさまざまな効果があるとされています。トークショーに出席した篠田麻里子=2014年2月21日(宮田剛撮影) しかし、毎日食べ続けるのは体に負担がかかるという説もあります。無機ヒ素や残留農薬が含まれていると言われていたり、固い殻で覆われているぶん、消化に悪いとも。胃腸が弱い人は、よほど元気な時じゃないと玄米は食べない方が良い、と専門家に聞いたことがあります。 「玄米を食べて育った」という麻里子さまと結婚相手は、もしかしたら生まれつき胃腸が強いのかもしれません。お互いの食生活の好みについて話しているうちに、玄米食の話から健康状態をチェックし合っていたのでしょう。 やはり添い遂げるためには、お互いの健康状態は重要です。そして夫には経済力だけでなく体力も求めていきたいです。「玄米婚」は、「玄米を消化できる体であることを確認」という意味もありました。麻里子さまは、体が頑丈で稼いでくれる、良い夫を見つけたようです…。

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    NHK『トクサツガガガ』私が一瞬、涙目になったワケ

    上村由紀子(フリーライター) そうか、6話まで見てやっと分かりました。このドラマは「親をとるか、オタ活をとるか」って単純な話ではなく、「親の価値観のもとで生きるか、自分の価値観を貫いて生きるか」という、自立の物語だったんですね。 山に囲まれた小さな町に突如ゾンビが現れ、日常と非日常とがせめぎ合う『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』や、4月から放送される『腐女子、うっかりゲイに告る。』など、最近ハネまくっているNHKのドラマ。まるでテレビ東京のプロデューサーが出向しているかのようですが、このテンション、むしろ好きです。中でも回を重ねるごとに視聴者の熱量がグイグイ上がっていったのが、NHK名古屋局制作の『トクサツガガガ』。 小芝風花演じる主人公の仲野叶(かの)は商社に勤める20代のOL。会社では「女子力が高い人」で通っているため隠していますが、実は筋金入りの特撮オタク=通称、特オタ。プライベートの時間とお金をすべて特オタ活動につぎ込み、次第に同じ特オタやアニオタ、ドルオタと仲間も増えてオタクライフを満喫する中、彼女の前に巨大な「敵」が。それは幼少時から特撮を全否定し、叶に「女の子らしい女の子」として生きてほしいと願う、松下由樹演じる母、志(ふみ)の存在です。 今は東京(どう見ても名古屋の風景が映るのに設定は東京)と関西とで離れて暮らしている母娘ですが、かわいいものを愛し、娘にも女の子らしくいてほしい母と、特撮作品が大好きな娘…そんな二人が相いれるはずもなく、叶が志から距離を取ることで、なんとかバランスを保っている状態。しかし、志のサプライズ上京で事態は一転。二人は修羅場を繰り広げることに。 勇気を振り絞り、自分の好きな特撮のことを必死に伝えた叶に対し、志が返したのは「ええ年して、こんなちっちゃい子が欲しがるようなもん集めて。こんなもの大事にして、何になるのよ!」「独りであんた、そんなこと続けるつもり?」というバズーカ砲のような口撃と大事にしているフィギュアの破壊、さらに平手打ちという所業。それに対し、叶も「じゃかましい、クソババア!」と母の頰を打ち返して「親じゃない! 育ててもらった恩とか、大学にかかったお金とか一生かかっても返すから。それでもう家族じゃない、関わらんとって!」と感情のまま言葉をぶつけます。女優の小芝風花=2017年2月(南澤悦子撮影) 痛い…いろんな意味で胸が痛い。自分の価値観こそすべてと信じ、それを娘に押し付けようとする母親と、その呪縛から放たれようともがき、経済的に自立することで親から逃げ切れたと思い込む娘。二人の魂は、子供の叶が大事にしていた特撮ヒーロー雑誌を志が庭で焼いたあの日からずっと止まったままなのに。 このドラマを母と娘、それぞれの視点で捉えると、見える風景が違ってきます。 母の志は叶と兄の望が幼い時に夫と離婚。それ以来、女手一つで兄妹を育ててきました。志は自分の離婚をポジティブに考えていないのでしょう。同じ女性である叶には普通の、幸せな結婚をして家庭を築いてほしい、それには多くの人から愛されるよう女らしく生きることが必要、それなのにこの子は男子が好きな特撮なんかに夢中になって間違った道に行こうとしている、30歳を過ぎたらもらい手もないまま1人で生きていかなくてはいけないのに…私がそれを正さなければ…。そんな思考で良かれと思い、娘を自分の思うルートに乗せようと必死です。今期ドラマの共通点 一方、娘の叶は小さい頃から好きだった特撮を否定され続け、母のマンション立ち入りで特オタがバレるまではそのことを必死で隠していました。経済的にも独り立ちしているし、成人した自分がどう生きようが自由なはず。が、母にはずっと特撮のことを言えなかった。それは心のどこかで母が望む人生を送れていない自分を申し訳ないと思う気持ちを抱えているから。 叶にとって特撮を否定されることはただの趣味を否定されることではないんですよね。それは自分の生き方や価値観を親に受け入れてもらえないことで、「ありのままの自分」を否定されているのと同じ。「毒親」と切って捨ててしまえば簡単ですが、志も心の底にあるのは娘を愛し、大事に思う気持ちであるゆえ、そう単純なことでもない。 世の中的には多様性…ダイバーシティなんて言葉もメジャーになってきましたが、家族の間で問題になるのはいつも「どうしてできないの?」VS「どうして分かってくれないの?」という、交わることのない二つの主張。 それにしても、今期のドラマにはいわゆる「毒親」が山盛りです。『初めて恋をした日に読む話(はじこい)』の主人公、春見順子(深田恭子)の母親、『ハケン占い師アタル』のアタル母、そして『トクサツガガガ』の志。そういえば『まんぷく』で今やおちゃめな存在として福子をサポートする母、鈴(松坂慶子)も、放送開始からしばらくはTwitter上で「毒親」と評されていた記憶が。 『ハケン占い師アタル』の場合はまだ見えない部分が多いので置いておきつつ、『はじこい』順子の母、しのぶ(檀ふみ)も志も自分が達成できなかったことを無意識のうちに娘の人生に背負わせているパターン。本人がそこに気づいて呪縛を解けば皆が楽になれるのに、人の心はなかなか難しい…そう簡単にはいきません。 こう言ってしまうと身もふたもないですが、『トクサツガガガ』も『はじこい』も、そして多分『ハケン占い師アタル』も、ある程度前向きな形で母娘の関係に決着がつくのでしょう。だってそれはドラマ、虚構の世界の話だから。女優の松下由樹さん だけど、現実世界を生きている私たちはそうはいきません。自分の好きなものを否定し、価値観を押し付けようとしてきた親はいつの間にか年を取り、「戦う相手」から大抵の場合「守り、フォローする対象」へと変わっていくのです。それはそれでとても切ない。 なんて、過去のモロモロを思い出し、一瞬涙目になりましたが、『トクサツガガガ』はコメディーです! 最終回で叶が作品のテーマでもある「スキなモノはスキ!」をどう貫くのか、ゴールデンボンバーが歌う主題歌『ガガガガガガガ』をともに熱唱しながらしっかり見届けたいと思う次第です。■NHK『いだてん』 スタートでコケた理由を邪推したらこうなった■キンプリ岩橋とセクゾ松島、相次ぐ「パニック障害」の裏側■あふれ出すSPEEDのカルマ『Body & Soul』の愛欲が止まらない

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    NHK『いだてん』 スタートでコケた理由を邪推したらこうなった

    吉田潮(ライター・イラストレーター) 東京五輪、本当にやるんだな。世界中に虚勢張って大ウソこいて大風呂敷広げた割に、課題は山積み。エンブレム盗作騒動に新国立競技場のデザイン騒動、さらには招致活動賄賂疑惑って。もう呪われているとしか思えないが、後へは引けず。こうなったら過去の成功も苦労話も交えて讃えて、「なんだか分からないけど東京五輪はすごい!」と思わせてしまおう、と国と東京都とテレビ局各局。 NHKは4K&8Kで大枚はたいちゃったから、五輪盛り上げて元をとらないと。そこで仕込んだのが大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』……という印象がある。 初回は酷評の嵐。宮藤官九郎ドラマをこよなく愛する人の口からも、「これはさすがにキツイ」「初回で脱落」という声が聞こえた。確かに、主役が誰だか分からん。もちろん、NHKの鼻息荒い宣伝番組を見ていれば、中村勘九郎と阿部サダヲのW主演は分かったはずだが、宣伝もしつこすぎると逆効果という典型例。とにかく登場人物が多くて、主役級の俳優もわちゃわちゃと画面上にひしめいていたのだから。 さらに、描く時代もひとつじゃない。明治の話? いや、昭和の東京五輪じゃないの? メインは柔道の話? マラソンの話? 水泳じゃないの? え、落語家まで出てくるの? もうハテナが頭上に浮かびまくりで、さすがに情報処理しきれず。年寄りは早々にリタイア。いわゆる定番の大河ドラマが好きな人も脱落。辛抱強く見続けた人だけが到達できる過酷な日曜夜になってしまう予感。みんなダラダラと見るはずだったのに…と。NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』の取材会に出席した(前列左から)中村勘九郎、役所広司、竹野内豊(後列左から)永山絢斗、古舘寛治、シャーロット・ケイト・フォックス=茨城・ワープステーション江戸 まあ、怒濤(どとう)の初回はさておき、2回目からは勘九郎演じる金栗四三(かなくりしそう)に、かなり焦点が絞られた。グンと入り込みやすくなったし、世間の評価も上がったような気がしているのだが、どうだろう。 少なくとも私は、37歳の勘九郎が演じる四三の、想定外の若さとみずみずしさに驚いたし、土着感を残した筋骨隆々な体型にも目をかっぴらいた(私の周囲の女性たちも、案外ここに反応していた)。勘九郎のコミカルな家族も、大河っぽいノスタルジーを込めた生育背景も存分に楽しみ始めたんだけどなぁ。高視聴率がとれる3要素 大河に限らず、高視聴率を取れるドラマというのは、1に「主人公のわかりやすい人物像」、2に「単純な対立構造」、3に「魅力的な登場人物」が必ずある。女性票を集めるのは「恋愛関係あるいは主従関係の妙」でもある。 1は言わずもがな、坂本龍馬とか西郷隆盛とか、ルックスも気質も功績も、誰もがうっすらと分かるような歴史上の有名な人物だ。あるいは『相棒』『ドクターX』『科捜研の女』のように、変人、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)、ワーカホリック(仕事中毒)など、とっつきにくいが異常に分かりやすい性質の人物である。そこが見えれば、入り込みやすい。 2もしかり。無謀かつ無慈悲な名を下す暴君に立ち向かうとか、権威主義に逆らうとか、子供でも老人でも分かる対立構造。『おんな城主 直虎』で言えば無茶ぶりする今川家、『半沢直樹』で言えば責任をなすりつけてくるクソ上司。敵が分かりやすいというのは、老若男女が見る上でたぶん必須なのだろう。 そして、3はどうか。主役でなくてもいい。主人公に仕える手練(てだ)れの右腕でもいいし、心底嫌悪感を抱かせるヒールでもいい。誰かフックになる「お気に入り」が見つかれば、自ずと見続けるはずだ。私自身は『龍馬伝』の香川照之、『平清盛』の井浦新、『軍師官兵衛』の家臣たちに、『西郷どん』の青木崇高あたりだ。主役はさておき、彼らに魅力を感じて視聴し続けた記憶がある。女性が見守るキャラクターは、二枚目や人気俳優であることが多いけれど。  この3つを、しょっぱなからどーんとぶつけて惹きつけることもあれば、時間をかけてじっくり描く場合もある。『いだてん』は今のところ、一つもクリアしていない。それがスタートダッシュの敗因だ。既に4回放送し、うっすら芽生えかけているモノはあるが、まだ全体としてはとっ散らかっている状態。だから、せっかちな客は離れてしまったのだ。五代目古今亭志ん生を演じるビートたけし(桐原正道撮影) 懸念はまだある。落語家編も同時進行で入り乱れているのが気になる。目と耳が慣れてくれば気にならないかもしれないが、このパート、このドラマに本当に必要? 体育会系の猛者と日本人の苦労話だけじゃダメ? 日本のスポーツの夜明けだけでよくない? 大多数の単純明快を求める人は、シンプルにそう思うのではないか。いや、「複数の伏線が最終的に大団円」が大好きなドラママニアにも、ある提案が脳裏をよぎる。それは、「落語家パート分離案」である。NHKっぽいオーダー 特に、キレのある動きが粋でいなせな森山未來や、役者界の「神の申し子」神木隆之介、大人計画主宰の松尾スズキなど、せっかくの名優たちが落語パートでさらっと散らされている。クドカンが大好きな小泉今日子もこっちだ。ひょっとしたらこっちはこっちで、別のドラマにした方が断然見やすいのではないか。『東京オリムピック奇譚~汗と涙と無縁のロックな落語編~』をBSプレミアムで放送してくれたら、まったく別の視聴者層が集中して、話題になったのではなかろうか。表大河と裏大河、みたいな感じで。 東京五輪に対して「疑問派」や「いまだに反対派」は、こっちの娯楽ドラマだったら楽しめそうな気もするし、スポーツそのものに興味がない「文系派」と「芸能派」も、ロックな落語家と五輪の因縁だったら、ちょっと観てみたくなるのでは?  で、勝手に妄想する。もしかしたら、クドカンはスポーツの世界だけを描くことに不安を覚え、自分の持ち味を出せる芸能系と組み合わせたのではないか。いや、そこも、もしかしたらNHK側からオーダーがあったのではないか。当初は「東京五輪」のお題から始まったものの、「1年やるなら、時代をまたいだ方がいい」「本業公演のある歌舞伎役者を主演にするならW主演で、大きく2パートに分ければ負担も少ない」「そのふたつをつなぐフックがほしい」「じゃあ、スポーツと関係ない分野で、たとえば落語はどうでしょう」みたいな。 と妄想で書いていたら、NHKのホームページに本人のインタビューが載っていた。「落語は橋渡し」だそうで。あながち間違っちゃいなかった。多岐にわたる人物と物語を描くのは、初めから決めていたようだ。きっとこれからその橋渡しが説得力をもって描かれていくのだろう。 それでも、「日本人すごい」「汗と涙の苦労話」「競技は偏りなく種目多めで」「JOCとか後で横やり入れてきそうなんで、組織の人間の話も」「こうるさい視聴者も多いので、適度な史実をまぶして茶を濁して」「フィクションです、とことわり入れますから」といった、いかにもNHKっぽいオーダーや気遣いも多分にあったのではないか。金栗四三を演じる中村勘九郎(南雲都撮影) こうなると、妄想が止まらない。「ちょっとイケメンが少ないと中年女性が釣れないから、松坂桃李と竹野内豊をぶちこんで」「『LIFE!』で育てて『おげんさんといっしょ』でキラーコンテンツを確立したNHKとしては、星野源はマストで」「ジャニーズは生田斗真で手打ちに。これ以上は勘弁」「『あまちゃん』ファンを誘うなら、のんでしょ」「適当に大御所も入れといて、年輩層もほんの少しひっぱりこむのも忘れずに」などなど。 逆に、この混乱の理由を勝手に邪推して、妄想するのも楽しくなってきたぞ。今後発表されるキャストも踏まえて、さあ皆さんもご一緒に、レッツ邪推。■『半分、青い。』共感できないヒロイン、それでも私は好きである■女主人公を暗躍させたがる謎の「大河縛り」 もうやめたら?■ムロツヨシに惹かれるのは「オキシトシン系」男子だから?

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    キンプリ岩橋とセクゾ松島、相次ぐ「パニック障害」の裏側

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント、作家) 『NHK紅白歌合戦』への初出場が決まったKing&Prince(愛称キンプリ)のメンバー、岩橋玄樹と、SexyZone(愛称セクゾ)の松島聡が、パニック障害を理由に相次いで活動休止を発表した。 岩橋は以前から患っていたとされ、松島については突発性であり、それぞれ発症の経緯が異なるようだが、いずれも若手グループの人気メンバーで、ほぼ時期が重なっただけに衝撃も大きかった。人気絶頂のジャニーズアイドルに何が起きているのだろうか。 急なケガなどで休養を取るのは致し方がないが、今回の件は、長いジャニーズの歴史の中で異例の事態であり、ファンや関係者も違和感を覚えたに違いない。ジャニーズ事務所も然り、社長のジャニー喜多川氏も戸惑いを隠せないようだ。 そもそも、ジャニー氏は「自分が知らないことを気にするタイプ」だ。つまり、自分が知らないところで知らないことが起こっているのを非常に嫌う。社長として組織のトップとして当然の心掛けだが、病気でもけがでもまず「僕に言いなさい」とか、「困っていることがあれば先に言っておきなさい」というような対応が当たり前だった。 だが、今はそれがない。言い換えれば、現場で何が起こっているのか、また個々のタレントがどのように感じて、いま何を考えているのか、ほとんど把握できていないのが現状である。「Youが何を考えているのか教えてほしい」。かつてはジャニー氏が自らタレントと向き合って、こんな対話をする機会も多くあった。 ジャニー氏はコミュニケーションを大切にするし、「子供たち(所属タレント)」とのかかわりが大好きで、その労力を決して惜しむことなく、許す限り時間を費やしてきた。だが、いつの日からかその機会はめっきり少なくなった。端的に言えば、今回の相次ぐパニック障害を招いた原因はここにあるのだが、そこに至った背景を少し踏み込んで詳述したい。 90年代の終わりに席巻した「ジャニーズJr.」(主にCDデビュー前の所属タレント)たちが主役を張ったバラエティー番組『8時だJ』(テレビ朝日系)が12月29日に特番として復活する。嵐や関ジャニ∞、NEWSなど、後にスーパーアイドルとして確立したグループがレギュラー出演していた人気番組だ。MCは当時、滝沢秀明(タッキー)が担っていたことから、今回の特番はタッキーの引退に合わせて制作された「ジャニー氏からのプレゼント」としての意味合いが強い。 この時代のジャニーズは、光GENJIからSMAPへと世代が代わり、後に息の長いグループとなったTOKIOやV6、KinKiKids、そして嵐が登場して歴史をつないでいった。こうした流れは実は重要な意味がある。 要するに、これまでのジャニーズは「一子相伝」的に時代を引き継いできた。田原俊彦から近藤真彦、シブがき隊、そして少年隊と継承され「ジャニー氏の創作」が時代のトップを構成するように「一球入魂」され続けてきたのである。(イラスト・不思議三十郎) つまり、一世代に1組のトップポジションだったものが、90年代以降は徐々に複数になり、今や「ジャニーズJr.」だけでも500人以上、ユニットも10組以上が存在する中で、ジャニー氏が直接指導しているアイドルは極端に少なくなった。 そういった意味で『8時だJ』の時代にいたジャニーズJr.たちは、ジャニー氏自らが直接育てた最後のメンバーだったと言えるのかもしれない。嵐、タッキー&翼、NEWS、関ジャニ∞の他、生田斗真や風間俊介ら俳優としても活躍している彼らにとって、ジャニー氏はまさに父のような存在だったのである。希薄なプロ意識 そしてKAT-TUN以降、ジャニー氏は「祖父」のような立場となって見守る空気が強くなった。一般企業で例えるならば、ジャニー氏は社長として陣頭指揮を執る立場から、現場からは少し離れて会社の行く末を眺める会長職になったようなものだ。 歳を重ね、事務所も大きくなって、すべての所属アイドルに目を配ることに、無理が生じてきているのは間違いない。レッスンやリハーサルの度に必ずと言っていいほど現場に足を運び、ジャニーズJr.たち一人一人に声をかけては指導するという環境が今はない。むろん、ジャニー氏自身、体力的にもそれは難しいだろう。 ジャニー氏と所属タレントはいわば血縁関係に近いものがあったが、こうした関係が崩れ始めたのは先に述べたKAT-TUNのデビュー前後からで、その後起きた象徴的な事件がSMAP解散とTOKIO、山口達也の解雇だったことは言うまでもない。SMAPやTOKIOの「事件」はかつての血縁的な関係が保たれていれば、起こらなかった可能性が高い。 ちなみに僕の現役時代は、ジャニーズの所属タレントは総勢50人前後で、学校で言えば一クラス分ぐらいの規模だった。それはまさに「家族」のような関係で、誰がどんな生い立ちで、どのような悩みで苦しんでいるか、互いに知る間柄でもあった。良くも悪くも、ジャニー氏とはベッタリの関係だったと言うべきか。ただ、ジャニー氏との濃密な関係性が、最大の危機管理になっていたのも事実である。 これが今や、ジャニーズJr.同士でも名前や顔も知らず、入所以降ジャニー氏と話したこともないというタレントが少なくない。こうした現状を踏まえれば、今のジャニーズは大きな岐路に立たされていると言える。もっと言えば、ジャニー氏が世代交代を意識し、タッキーに後継ぎを託した理由はここにあると言っても過言ではない。 その一方で、言い尽くされた感はあるが、若手のプロ意識の希薄さも否めない。これは芸能界全体に言えることである。最近、グラビアアイドルが「彼氏に反対されたので水着になれなくなりました」などと突然言い出すケースが増えているそうだが、これも一つの表れだろう。 心的な病にしても、仕事に差し支えないよう自己管理し、事が大きくなる前に誰かに相談するといった意識も低い。ひとたび病気やケガをすれば、事務所としては休養させるしか道がない。キンプリの岩橋とセクゾの松島のパニック障害の原因は、ジャニーズ事務所が彼らを酷使しているからだと、安直に考える人も多いが、そもそも過酷な環境で活動するのがアイドルたるゆえんなのである。 もとより、アイドルは極力休養する状況にならないよう、日々心掛けているはずである。病気やケガとはいえ、仕事は絶対に穴を空けてはならない。これは芸能界の常識である。誤解を恐れずに言えば、具合が悪いとか急用があるとか、下手な理由で仕事をおろそかにするタレントが昔よりも増えている気がしてならない。(イラスト・不思議三十郎) 少々厳しいようだが、本来「歩合型」の芸能界で、働けないタレントに給料など払えない。ジャニーズほどの規模と資金力、影響力があるからこそ、代えがきくのである。規模の小さい事務所であれば、タレントが回復するまで待つなど、それこそ死活問題であろう。 最近は事務所の管理責任を問う声も大きい。ひと昔前であれば、自分が病気を患っていることを伏せたまま収録に臨んだり、骨折を抱えながらも舞台で演じ切ったりするのが、トップアイドルたる生き様でもあった。もちろん、こうした話が美談となる時代が終わったのは確かである。 こんな時代であるからこそ、あえて言いたいことがある。奇(く)しくも年末に復活する90年代の『8時だJ』の復活は、ジャニー氏からタッキーへのプレゼントという意味合いよりも、むしろアイドルとは何たるかを示し、ジャニーズを継いでいく次世代スターたちに向けたメッセージでもあるのだ、と。■関ジャニ大倉「ヤラカシ批判」はアイドルとして許されるか■養子縁組も既定路線? ジャニー喜多川が滝沢秀明を溺愛する理由■「おっさんアイドル」山口達也の悲哀は私にも分かる

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    関ジャニ大倉「ヤラカシ批判」はアイドルとして許されるか

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント) 人気アイドルグループ「関ジャニ∞(エイト)」の大倉忠義がブログで、一部の熱狂的ファンによる行き過ぎた行為について怒りを表し、波紋を呼んでいる。週刊誌報道などによると、大倉に近づいてきたファンが体当たりしたり、カバンに物を入れたりすることに加え、プライベートな食事の席で隣のテーブルにいたこともあったようだ。 これに対し、大倉は「ストーカー行為だ」などとブログに書き込み、ジャニーズ事務所も告発もあり得るといった構えをみせている。 とはいえ、当たり前だが、アイドルにとって「ファン」とは本来、最も大切にしなければならない存在である。だからこそ、ファンにはいつも幸せな気持ちを抱いてもらえるよう振る舞っているのだが、それを逆手に取って足を踏み外してしまうファンがいるのも事実だ。 まずは、ジャニーズファンの現状から説明しておこう。およそ1千万人いるとされるジャニーズファンは、特定の個人やグループに限らずジャニーズを全体的に応援する人たちの総称だが、最近は個別に呼称をつけて色分けしている。 古くは「追っかけ」や追っかけに命をかけて力(リキ)を入れる「オリキ」と呼ばれ、最近は「ジャニヲタ」と称されている。その中に特定のグループのファンの呼称もある。例えば、KinKi Kidsのファンは行儀が良いことから「図書委員」、嵐は「アラシック」、関ジャニ∞は「エイター」だ。さらに、Kis-My-Ft2については意味不明だが「俺足族(おれあしぞく)」、 SexyZoneは「セクシーガール」、King&Prince(略称キンプリ)は「ティアラ」と呼ばれている。 そして今、問題となっているのは「ヤラカシ」と言われる、悪さをやらかす行き過ぎたファンたちだ。大倉のケースのように、個々のタレントだけの問題ではなく事務所も相当に手を焼いているのが実情である。これには「ヤラカシ対策」というファンもいて、これを監督して注意喚起を行う役割を担っている。彼らはいわゆる本当の意味での「親衛隊」である。 僕が現役の頃は、トシ派(田原俊彦)とマッチ派(近藤真彦)しかいなかった。だが、その後の「ジャニヲタ」は、シブがき隊や少年隊、さらに光GENJIに男闘呼組、忍者となり、そしてSMAPへと、移りながら、あくまでもジャニーズ内に留まって支え続けている。それだけに「親衛隊」のようなファンと素行が悪いファンが実際にぶつかることもしばしばある。 先に記したように、昔は一般的な「ファン」と、さらに気合を入れた「親衛隊」の2種類しかいなかったが、80年代の後半から「追っかけ」が登場し、90年代には「オリキ」になり、同じ頃から「ストーカー」とでも言うべき行為に走る過激なファンも増え始めた。(イラスト・不思議三十郎) つまり「追っかけ」の延長線が、ストーカーと見なされる行為に進化したのである。ただ、かつては「ストーカー」という表現がなかっただけで、大倉の悲痛なメッセージを目の当たりにした時、僕も現役時代に同様の被害に遭っていたことを思い出した。 「入待ち」や「出待ち」は温かい応援の定番であり、これを嫌がるアイドルは少ない。だが、待つ場所によっては一大事だ。テレビ局やスタジオ、あるいはコンサート会場なら常識だが、自宅前での出入り待ちはかなりの苦痛である。 もちろん、弁当やタオル、栄養ドリンクなどは当たり前のように渡されるので、家を出た瞬間から持ちきれない荷物を背負うことになる。ただ、こういうレベルはまだマシだ。 だが、エスカレートすればそうも言っていられない。「待ち伏せ」は家や最寄り駅などで行われるが、それは「仕事」の行き来なら仕方がないとはいえ、駆け出しの頃に通っていた学校やアルバイト先にまで熱狂的なファン現れると、自分の周囲の人たちにも迷惑をかけかねない。これが続くと、さすがに誰だって嫌な気分になってくる。ベッドの下にもファン また、ファンも待ち時間があまりに長いといらだち、あらゆる行動に打って出る。まずは、落書きだ。「大好き」とか「一生ついていく!」程度のものから始まり、「抱いてください」のほか、露骨に「キスして!」とか、「セックスしてください」などとエスカレートしていく。近所のガードレールや公園のベンチなどに名指しで書かれれば、自分のせいでご近所に迷惑をかけていることになり、帰宅すら億劫になる。そして、そこからは引っ越しの繰り返しである。 ちなみに、家庭ゴミはすべてファンに持っていかれるので自宅近くの集積所には出さず、最寄りの役所まで持ち込むこともざらである。それだけではない。自宅のポストをのぞかれたり、郵便物を取られたりは当たり前で、はっきり言ってプライベートは何もかも奪われていく。今ではマンションにオートロックや防犯カメラも設置されているため、こうした行為は随分防げるようになった。 これは聞いた話だが、留守中に自分の部屋に忍び込むファンもいるらしい。忍び込んだ部屋を掃除したり、食事を作って待っていたり…。ある知人のアイドルは、見知らぬ女性ファンがベッドの下に隠れていたという。 また、ここ数年は、会員制交流サイト(SNS)がファンの行動を変えている。これによって、物理的な「追っかけ」をしなくても、効率良くお目当てのアイドルに会えるようになった。 「今、どこに誰がいる」という情報は瞬く間に広がり、その動向は手に取るように把握できるネットワークをジャニヲタたちは持っている。行く先々で「なんでファンがいるの!?」と、驚きよりもむしろ恐怖に似た感情を抱くケースも多いらしい。 こうしてプライバシーが失われていく心境はアイドル本人だけでなく、家族や友人にも及び、仮に恋人がいれば、それは「攻撃の対象」にもなるため、本人の精神的なダメージはどんどん増幅する。実際にジャニーズの所属タレントと「噂」になるだけでも、酷い仕打ちを受けることがままある。もし、リアルな彼女になろうものなら、その攻撃の程度は計り知れない。 ただ、かつてと大きく変わったと感じるのは、いくら迷惑行為とはいえ、「人気者の証」とも言えるファンの言動に対して、露骨に嫌悪感を丸出しにするアイドルが増えてきたことである。本来なら大倉がブログで吐露した「そろそろ限界」は、「じゃあ、アイドル辞めろよ」と言われても仕方がない。もちろん、熱狂的ファンの迷惑行為が犯罪行為になってしまえば、当然声を上げるべきだが、その線引きはなかなか難しい。(イラスト・不思議三十郎) 当然ながらアイドルも年も重ねる。デビュー当初は我慢できても、大倉のように大人になったアイドルが限界を感じ、憂鬱な気分になるのも理解できる。 こうした現実を踏まえれば、むろん大倉に限ったことではないが、彼の悲痛な叫びは今現在も耐え忍んでいるアイドルたちの「代弁」でもあり、自分のことだけでなく、仲間や同業者の気持ちを察しているからこそ出た発言なのだろう。 勇気を持って出したであろう大倉のメッセージが、行き過ぎたファンの迷惑行為の歯止めになればいいのだが。

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    ムロツヨシに惹かれるのは「オキシトシン系」男子だから?

    吉田潮(ライター・イラストレーター) 74歳の母がテレビを見ていて、「この人、すごく面白くていい人なのよ~」とまるで知り合いかのように話す。誰かと思って画面を見たら、ムロツヨシだった。母の「いい人」の基準は、基本的にNHK『鶴瓶の家族に乾杯』で決まる。ただし、名前は覚えない。「彼はキャリアも長くて、今ドラマに引っ張りだこの人気俳優なんだよ」と教えると、「へえ、そうなの」と生返事。俳優としてのムロツヨシには興味がないようだ。おそらく老いた母にとっての「いい人」とは、声が聴き取りやすく、受け答えが穏やかで低姿勢の人なのだろう。 一般的には、ムロツヨシはコント臭が強めの三枚目俳優の印象が強い。今期で言えば『今日から俺は!!』(日テレ系)に出てくるのが通常運転の彼だ。ツッパリに憧れる男子高校生たちの恋とけんかと友情という、一見爽やかに見える青春コメディーなのだが、爽やかじゃない部分を担うのがムロツヨシ。金八先生を模した教師役だが、独特の間合いとウザイ仕草で卑怯(ひきょう)な大人を演じきる。教室や職員室はすっかりちゃっかりコント劇場に。若手イケメン俳優が皆ムロツヨシ(または吃音の魔術師・佐藤二朗)を真似することで、こってりした福田雄一劇団が完成している。 『今日から俺は!!』に出演するムロツヨシ(左)と賀来賢人(C)日本テレビ ところが、そのムロツヨシが今、女性たちの胸を焦がしている。『大恋愛』(TBS系)というドラマで、一途に恋をしているからだ。ヒロインは戸田恵梨香。クリニックを経営する婦人科医だが、若年性アルツハイマー病を患っている。そんな戸田と偶然知り合うのがムロツヨシ。鳴かず飛ばずの作家で、引っ越し屋のアルバイトで生計を立てていた。「難治の病」と「格差恋愛」を描く、正直に言えば、陳腐な設定の作品である。 性善説に流れて登場人物が偽善化する病気モノが大嫌いなので、適当に流そうと思っていた。が、ちょっと斜に構えてカッコつけているムロツヨシが気になった。しかも、真摯(しんし)な恋を貫いて、愛に生きているじゃないか! これまでの俳優・ムロツヨシを愛(め)でてきた人々は、心のどこかで「この後、ふざけて変顔するんじゃないか」「嘲笑されて終わるのでは」と予期不安がよぎる。つい、コント的な要素を彼に求めてしまうのだ。 しかしながら、「大恋愛」では毎回見事に裏切られる。見ているこっちがこっぱずかしくなるような「愛を語るシーン」も「ベッドでいちゃつくシーン」も、しっくりハマっている。「どうかしてるぜ、ムロツヨシ」というよりは、「どうかしてるぜ、自分」と己の目を疑うのだが、真摯に愛を育んでいく姿、悪くない。ムシロヨシ、ムロツヨシ。物語の行く末は見えているし、手垢まみれの物語なのに、ムロツヨシの動向を最後まで見届けたいと思わせる。 なんて、絶賛してもちっとも面白くないので、なぜ彼がこんなに女性たちを虜(とりこ)にしたのか、考えてみたい。決してイケメン枠でもなく、若くもなく、華があるわけでもないのに、こんなに女性票が集まるのか。最大の勝因は清潔感 まず、「パーツイケメン」であることが挙げられる。ムロツヨシの顔を分解してひとつひとつのパーツを見てみると、実に美しいという事実。すでにネット上では周知の事実で、本人もある程度の自覚はあると思われる。 目は大きく、黒目がちで、きれいな二重だ。眉毛もりりしい。昭和の男性アイドル的な顔の濃さは、妻夫木聡に近い。鼻も整った形で、正面から鼻の穴が見えない。唇も厚すぎず薄すぎず、口角がきゅっと上がっている。これ、重要。口角が下がっていると老けて見えるし、不平不満顔で横柄な印象になる。歯並びも美しい。この秀逸なパーツがそろって、スパイスとしてのホクロを足すと、残念ながらムロツヨシが完成してしまうのだが、ひとつひとつには見惚れる美しさがある。 そして、「清潔感がある」。ヒゲは濃いように見えるが、肌はキレイなのだ。年輩女性に嫌われがちなパーマヘアも、辛うじておしゃれな方向へいっている。ハゲてもいないし、脂ぎってもいない。つまりは、今、女性に嫌われる男性の三大要素のひとつ「生理的嫌悪感(不潔)」がムロツヨシにはほぼないのだ。大手の食品・家庭用品メーカーのCMに起用されるというのは、多くの女性票を得ている証拠でもある。 ふと思い出す。今年の夏、「大恋愛」同様に格差恋愛を描いた『高嶺の花』(日テレ系)というドラマがあったことを。銀杏BOYZの峯田和伸が演じていた役も、ムロツヨシ同様、セレブなヒロインに一途に恋をする男性だった。しかし、女性たちの評価は実に手厳しく、「生理的嫌悪感であきらめた」という非情な声が多かった。峯田になくて、ムロツヨシにあるもの。最大の勝因は清潔感だろう。 そしてもうひとつ。ネット上では女性に対して横暴な男性がメッタうちにされる現代。「俺様臭が強い」男性や、「男尊女卑のメンタルマッチョ」はかなり嫌われる。テレビでも物言いが横柄な司会者や、他の芸能人をからかっていじり倒すような芸人は敬遠される時代だ。年寄りはそういう人材が大好きだが、若い世代は「ハラスメント」意識も強く、不快だと思う人が増えている。 俳優は俳優で、人気がうなぎ上りになったかと思えば、すぐにプライベートや過去の発言が掘り起こされる。少しでもやんちゃな面や、女性やスタッフに対して横柄な発言があると総スカンを喰(く)らう。かなり年下の女優と熱愛報道が出ると、一気にブーイングが起こり、手のひら返しで袋だたきに遭う。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) そんな時代に、ムロツヨシ。どこにでもいそうな中肉中背で人畜無害、しかも日本人が大好きな「苦労人」だ。熱愛報道もスキャンダルもいまのところない。年下の俳優から好かれているので、「役者論」なる説教も垂れなさそうだし、俺様臭ともメンタルマッチョとも程遠い立ち位置を確立している。芸能人男性が中年期に陥りがちな「健康志向の筋肉自慢病」にも「趣味没頭で生活破綻病」にもかかっていない。常に低姿勢で空気を読み、かつ、機を見るに敏(びん)。奇跡の40代俳優、といってもいいだろう。ムロは「オキシトシン系」 女性票だけではない。男性人気も相当高い。多くの人気俳優と仲が良く、一見、提灯(ちょうちん)持ちかコバンザメかと思われがちだが、逆である。皆がムロツヨシを必要としているのだ。小泉孝太郎しかり、新井浩文しかり。自分が出るトーク番組にムロツヨシを呼んじゃうくらい、NO LIFE,NO MUROである。気配りができても、媚びるわけではない。むき出しの自意識を発動するテイを装うも、実際は冷静に俯瞰(ふかん)している趣もある。おそらくホモソーシャルでうまくわたっていける、可愛げと愛嬌(あいきょう)があるのだろう。 とあるテレビ局の男性プロデューサーに聞いた話だが、低姿勢というよりは誰に対してもフラットなのだとか。下っ端だろうが大御所だろうが、アシスタントディレクターだろうがプロデューサーだろうが、態度が変わらないという。肩書にも権力にもおもねらない。男性はそういう部分に「信頼感」を覚えるのかもしれない。 なんつって、適当な想像で書いているけれど、ムロツヨシが老若男女に好かれる存在であることに間違いはない。個人的にはムロツヨシを見ていると、「オキシトシン」というホルモンが思い浮かぶ。共感や協調性を高めたり、人の気持ちに配慮する作用をもたらす脳内神経伝達物質で、「育児ホルモン」「愛着ホルモン」とも呼ばれている。寛容性を増したり、痛みや苦しみなどの嫌な記憶を消す作用もあるらしい。 生き馬の目を抜く俳優界には、野心や攻撃性が高くてオラオラした俺様イメージの「アドレナリン系」がいる。逆に、快楽や愉悦、うっとり感と癒やしを与える王子様イメージの「セロトニン系」もいる。俺様でも王子様でもないのが「オキシトシン系」のムロツヨシというわけだ。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) とかく世の中は、強き者・美しき者・高貴な者をほめそやす。戦いや争い、マウンティングの頂点に立った勝者を絶賛する。その図式に疲弊した人が、共感と協調性を呼ぶムロツヨシに心を動かされたのではないか。美男美女が繰り広げる恋愛劇にリアリティーを感じない人が、全身全霊でムロツヨシの恋愛を応援したくなったのではないか。 彼の暗躍がドラマ界に波紋を広げてくれるといいなぁ。二の線も三の線もイケる、真の実力をもつ役者が、もっともっと起用されますよう。美化しすぎない、ごく日常の人間模様が描かれますよう。

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    あふれ出すSPEEDのカルマ『Body & Soul』の愛欲が止まらない

    辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト) 1996年にデビューし、平成を駆け抜けたダンス&ボーカルグループ、SPEED。平成の終わりとともに、精算するかのようにカルマが吹き出している状態です。元ファンとしては切ないですが、4人とも30代で女の厄年が連続する年頃でもあります。業の深いメンバーについて改めて検証してみます。 思い返せばもう20年近く前、2000年にいったん「SPEED解散」したときは世の中に激震が走りました。解散の理由の一つとされていたのが、島袋寛子(HIROKO)さんの異性交遊。当時、HIROKOばかり非難されていましたが、今井絵理子(ERIKO)さん、上原多香子(TAKAKO)さんにも彼氏がいたといわれています。そして今となっては、HIROKOはERIKOやTAKAKOと比べたらストイックに生きているほうかもしれません。夫が12歳年下というところに、やり手であることが感じられるくらいです。 メンバーの中で、女の業レベルを競い合っているのは、やはりERIKOとTAKAKOでしょうか。TAKAKOはSPEED時代から魔性の女ぶりがささやかれてきました。マネジャーが目を離した隙に当時の恋人ISSAと逢瀬(おうせ)を重ねていたとか。ERIKOも黒髪優等生キャラの清純派に見えて、中学時代から彼氏がいて、実家に泊まらせるほどの仲だったといわれています。 ファンだった私は当初純粋なティーンの少女たちだと信じていたのですが、さまざまな噂や発言から、実像は違うというのが徐々にわかってきました。SPEEDが歌っている曲は刹那的で、恋愛がテーマのものが多い、という言霊の影響もあると思います。 伊秩弘将プロデューサーによるリアルな歌詞に感情移入して歌うことで、脳が恋愛モードになっていったのでしょう。多感な年頃だったので、リビドーが高まるのも自然な成り行きです。 当時印象的だったのが、あるバラエティー番組でERIKOによってカミングアウトされたエピソードです。「地方のロケに行ったとき、一人の部屋にみんなで集まるんですが、必ずアダルトビデオ(AV)を見ていたんです。『見よう』って言い出すのは決まって私だったんですけどね」というぶっちゃけ発言が。参院本会議に臨む自民党の今井絵理子参院議員=2017年2月、国会(斎藤良雄撮影) さらに別々の部屋の場合も、ERIKOの宿泊代だけ有料AVチャンネルの使用料で高くなっていたりしたそうです。どれだけ見まくっていたのでしょう。2017年、元神戸市会議員の橋本健氏との不倫熱愛報道があったとき、ホテルの廊下をパジャマで出歩いていた写真が出ましたが、ERIKOはホテルを使いこなしまくっています。 さらに「ツアーに行ったときは必ずコンビニでエロ本を仕入れて率先して回し読みしていた」という話も。歌やダンスでも発散しきれないエネルギーがほとばしっています。 解散してから3年後、2003年には「Save the Children」をテーマに再集結。『Be my love』の教会音楽っぽいイントロに、SPEED4人のざんげの気持ちを感じたものでした。唯一SPEEDを救える人 その後ERIKOの授かり婚、離婚を経て、2008年に本格的な再結成をしたものの、最盛期のような活動はできず…今に至ります。 2011年の『リトルダンサー』というシングル曲は、歌唱力もダンスも相変わらずハイレベルだったのですが、ダンサーを目指す人への夢応援ソングという内容だったので、メンバー的にもいまいち士気が上がらなかったのかもしれません。たぶんファンの多くは、再結成後の活動をフォローするというより、全盛期の思い出を記憶に焼き付けたままでいると思われます。 多くのファンにとって青春時代の象徴だったSPEEDのメンバーが、ここ数年、こんな形で世間を騒がせ続けるとは…。特に今年は、TAKAKO、ERIKOの2人が、奔放すぎでした。 TAKAKOは『週刊新潮』で報じられる直前に再婚と妊娠を発表。相手は演出家のコウカズヤ氏で12月ご出産予定だそうです。元夫TENNさんは悲しいことに自殺してしまい、遺書が公開され、その原因の一つはTAKAKOの不倫だとされています。でも当時の不倫相手の俳優とは別れ、新しい男性と入籍。TAKAKOはメンタル強すぎです。芸能ニュースサイトによると、TAKAKOと出会った瞬間に「コウ氏の下半身に『ビビビッ』と電流が走った」とのこと。下半身に電流を走らせる魔性ぶり、半端ないです。 ERIKOも10月に動きがありました。2017年の不倫釈明会見での「一線を越えてはいない」発言が話題になりましたが、そのお相手の橋本氏とまだ切れていなかったのです。 元市議の橋本氏は、妻と離婚し、政務活動費約690万円を不正に受け取ったとして詐欺罪で起訴され、有罪判決が言い渡されました。ゴルフやガールズバーに流用したそうですが、そんな彼でもERIKOの恋心はさめず…。ERIKOは「現在、私今井絵理子は元神戸市議会議員の橋本健さんとお付き合いさせていただいております」とブログで発表。 ちなみに橋本氏の前に半同棲(どうせい)が報じられたA氏は、中学生に本番行為をさせた風営法・児童福祉法違反容疑で逮捕されています。ERIKOは弁護士費用など支払ったそうです。どんなダメな男でも受け入れるERIKOの包容力…。ダメンズというよりは、ちょいワル男子に弱いのかもしれません。その博愛精神を、議員としてもっと国民のために使ってほしいような…。初登院し、記者の質問に答える自民党の今井絵理子氏=2016年8月、東京・永田町の国会議事堂前(桐原正道撮影) そして気になるのは、音信が途絶えている新垣仁絵(HITOE)。文字通り『HITOE’S 57 MOVE』、どこかに行ってしまいました。ヨガインストラクターの資格を取り、ヨガ教室を開講し、一般男性と結婚。ヨガで直感力が高まった彼女は、このままグループのメンバーと一緒にいたら、カルマの渦に巻き込まれる、と予知したのかもしれません。 でも、メンバーを女の業から救い出せるのはHITOEだけかもしれません。ヨガの癒やしと浄化のパワーによって、肉体レベルの愛にとらわれているメンバーをわれに返らせたり…。SPEEDの救世主であるHITOEの再降臨を、元ファンとして祈念いたします。

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    養子縁組も既定路線? ジャニー喜多川が滝沢秀明を溺愛する理由

    平本淳也(元ジャニーズ所属タレント) ジャニーズと社長のジャニー喜多川氏をよく知っている人なら後継者「滝沢秀明」(タッキー)は想像に難くなかっただろう。 スポーツ紙を中心に報じられた「ジャニーズの後継者にタッキー指名!」のニュース。ジャニーズは今年、問題だらけのネガティブな雰囲気のまま終わってしまうのかと思っていただけに、計算されたかのようにジャニー氏の後継指名は「グッドニュース」として発信された。 タッキーがジャニー氏の後継者になることについては、ファンはもちろん、ジャニーズ内外、マスコミ、そして僕らOB連中も含めて歓迎ムードが広がっている。だが、これは同時に近藤真彦(マッチ)や少年隊の東山紀之(ヒガシ)じゃなくて良かったという安堵感の裏返しでもある。 マッチやヒガシが後継者になるとのウワサに関しては、僕はかなり前から否定してきたが、なぜか世間は年功序列に従うかのように「マッチ社長」と「ヒガシ副社長」というカタチを勝手に思い込んでいたようだ。 今回もマッチやヒガシを差し置いてとか、元SMAPの中居正広や木村拓哉だけでなく、TOKIOやKinKi Kidsまでもが不満を募らせているといった、勝手な想像による記事が目立つ。 そもそも勘違いしているようだが、タッキーはジャニー氏の仕事を受け継いで、タレント発掘や育成だけでなく、グループの形成やステージの制作を担っていくわけで、ジャニーズ本体の代表になるわけではない。また、ジャニーズの新しい事業として立ち上げる「育成機関」の責任者としての役割を担い、ジャニーズのステータスを永続的に維持していくのがタッキーの役目だ。 その役目は、すでに裏方に徹している少年隊の錦織一清(ニッキ)説が強かったが、アイドルの格において無理があった。ニッキもある意味、天才的なセンスを持っているが、「ニッキって誰?」という人の方が多いのが悲しい事実。マッチやヒガシだったらまだマシだが、一連のジャニーズアイドルの不祥事を吹き飛ばすほどではない。 ジャニーズ所属タレントの中で、マッチは「道楽息子」の長男、甘え上手の次男がヒガシという感じだ。タレントとして良い意味で2人とも目立ちたがりでナルシスト。後継者になれなくもないが、裏方に徹するなどプライドが許さない。ただ、マッチに関して言えば、いまさら何を指導できるのか。そう、レーサーとして車の運転を教えることができても芸能界では生きていけない。(イラスト・不思議三十郎) 要はジャニー氏の後継者として、マッチもヒガシも話題性や将来性、実力を踏まえれば物足りないのだ。 そもそもジャニーズの次期社長やジャニー氏の後継ぎをイメージするとき、タレントばかりに注目してウワサすること自体が間違っている。事実、明石家さんまや松本人志が吉本興業の後継者としてウワサにもならない。ホリプロの役員でもある和田アキ子が同社を継ぐならまだあり得るが、それでも事務所経営を担うのは無理だろう。 ジャニーズにしても次期社長は既定路線のまま、現副社長の藤島ジュリー景子氏が就くのはジャニー氏も公言している通りで、すでに複数のグループ会社の代表になっている。ジュリー景子氏は唯一の若い血縁者であり、そこは「テッパン」だと僕はかなり前から強調してきたが、これは間違いない。ジュリー景子も無理 ジュリー景子氏は仕込まれた帝王学と潤沢な資金を背景に事務所経営は大丈夫だろうが、プロデューサーとしてジャニー氏の代わりは一切務まらない。衣装のプランやビジュアル面では現場経験があり、女優として演じていた時期もあるが、アイドル候補を発掘して育成、その上でステージのすべてを作り上げる才能も力もない。 つまり、ジャニーズのエンターテインメントの本質においては全く役に立たないのだ。それは母親であるメリー喜多川氏(ジャニー氏の姉)も同じで、最強の営業力と管理能力を持っていても演出やプロデュースには縁がない。専らそれはジャニー氏の仕事であり、彼にしかできない。実際、これまで姉や姪(めい)であっても演出分野においては一切、口を出していない。 ジャニー氏がずっと心配してきたことといえば、ジャニーズ事務所の存続ではなく、ジャニーズがジャニーズであり続けるために自分の思想を受け継いでくれる分身的な後継者がいないという現実だった。そもそもジャニー氏は当初、自分しかできないことを他の誰かに引き継ぐ気などなかった。 生涯現役であり続けることにこだわってきただけに、これまで後継者の話題が出てこなかったのもその証拠だ。自分以外が代わりを務められるわけがないと、そう思いながらここまできたのだ。 しかし、事態は一転した。それはSMAPの解散騒動だ。ジャニー氏はあの騒動で、ジャニーズが壊れていく様子を垣間見てしまった。これは想像していなかったことで、あまりにショックが大きかったのだ。国民的アイドルとして絶頂にありながら、ジャニーズを離れていくアイドルがいる現実は受け入れ難いものがあった。 SMAPの解散を受け、「ジャニーズの終焉」や「ジャニー氏の求心力の衰え」といった、そんな声が嫌ほど入ってくる事態になり、このままにしておくわけにはいかないと感じたのだろう。 そこで、信用できる自分の分身を考えたとき、たった一人、タッキーしかいなかったのだ。タッキーには、ジャニーズとジャニー氏への最上の愛があり、誰よりも自分を理解していると感じていたようだ。(イラスト・不思議三十郎) 重視したのは、アイドルとして歌って踊れるだけでなく、ジャニーズにとって最も大切なステージ(生舞台)をプロデュースできる点だ。ジャニー氏のまねをしながら育ってきたタッキーは、いつしか匹敵するレベルの能力を培っていたという。 もう少し、ジャニー氏がタッキーを選んだ理由を記しておこう。メジャーアーティストを輩出した人数などが世界一としてギネス認定されるほど人を見る目に長(た)けたジャニー氏だが、その能力と同時に白黒ハッキリした好みがある。 ルックスや性格など一般的な好みはもちろんだが、際立って興味を示すのはそのアイドルの持っているプロフィールにある。まず、家族構成だ。どういった環境で育ってきて今どのように暮らしているのかに強い興味を持ち、さらに、その環境が幸か不幸かによって好みが強く出てくる。養子縁組は確実 例えば「幸」の場合、嵐の櫻井翔のように将来有望な元官僚の親を持っていたり、関ジャニ∞の大倉忠義のように何百億円もの資産を持つ企業の御曹司といった、生い立ちに興味を抱く。 ただ、どちらかと言えば、ジャニー氏は「不幸」と思われる環境の方に、より強い関心を持っている。極端な例では、孤児だったり、片親だったりするだけで、非常に目をかけてくれる。片親の僕は実体験だが、本当によくしてもらった。「君は片親だから、両親がそろっている家庭と比べれば恵まれている度合いは半分しかない。だからその半分をチャンスとしてあげたい」と、言葉をかけてもらった。 タレント性を見いだすヒントとして、その人が育ってきた環境や背景を知ることはとても重要なのだろう。官僚の子や企業の御曹司より、人間的な魅力を作ろうとするプロデューサーは不幸な子のハングリー精神を求めるようだ。そういった意味ではタッキーも深い関心の中で育てあげた成功例といえるのだ。 あまり知られていないが、タッキーの父親は母親の再婚相手であり、実父とは小学生のときに離別している。事実上片親を経験していることもジャニー氏にとっては放っておけない存在であり、大きなチャンスをあげたいと感じたに違いない。 タッキーは中学生のころからあの美貌を持ち、さらに明るい性格で、なおかつ真面目で芯が強かった。僕も初めてタッキーと対面したときは言葉を失ったくらいだ。 そもそもジャニー氏がアイドルとして最高評価をしているのは、KinKi Kidsの堂本光一だが、その光一にあこがれてジャニーズ入りしたタッキーが、自分が作るステージで華やかに舞い観客を魅了する姿を楽しんでいたのだ。 ジャニー氏は、子供も伴侶もなく、血縁者も2人しかいない。そんな中で、自分が発掘して育ててきたタレントはみんな自身の子供と表現するが、光一とタッキーだけは本当の家族にしたいと思っているようだ。 今回の後継指名に関して、タッキーと養子縁組するという情報もあるが、この可能性は極めて高い。ジャニー氏は恵まれない子供たちを支援する団体の設立を目指しており、自らの財産と生き様を伝承して後世に残せるジャニーズを残すためにも、タッキーとの養子縁組は信頼できる「家族」を作る最初で最後のチャンスといえるからだ。(イラスト・不思議三十郎) タレントを完全に引退し、ジャニー氏を継ぐ覚悟のタッキーへのエールは業界を超えて広い範囲から多く寄せられているが、こうした期待と歓迎ムードに仕立てたのはジャニー氏ならではの演出といえるだろう。 タッキーがマッチやヒガシのようになってからでは遅く、ニッキのように長く裏方に入ってしまってからでは話題にも乏しい。かつての山口百恵や、先月引退した安室奈美恵のように絶頂期だからこそ価値があるからだ。 普通に考えればもったいないし、ファンからすれば引退しないでほしいと思うところだが、与えられた大きな使命を思えばタッキーはジャニー氏の後継者として「永遠」に語り継がれる存在となるだろう。

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    剛力彩芽はきっとZOZO前澤友作氏を踏み台にする

    吉田潮(ライター・イラストレーター) ZOZO社長の前澤友作氏の名前は、ネット上でよく目にしていた。といっても、彼自身が主役ではない。元彼女の紗栄子が何かと物議を醸す女性だったから。彼はパトロン的な存在程度の認識だった。それでも「子供は認知するが、結婚はしない主義」を公表する姿勢は、個人的に好感をもっていた。ま、本当は認知する前に避妊しようよと言いたいところだが、何かポリシーか心の闇があるのだろう。 情報を調べたところ、ますます好感を持った。千葉県鎌ケ谷市出身というのは、船橋市出身としては親近感を覚えるし、現在も千葉県在住という点も興味深い。イケすかない金持ちは「港区とか世田谷区じゃないのか!」と驚きもあった。もちろん拠点は都内で、住んじゃいないだろうが、千葉県の税収に多大なる貢献をしているのは確かだ。感謝の念も湧く。金持ちを嫌儲主義でたたくよりも、「莫大(ばくだい)な納税額をありがとう」と思うようにしているからだ。 しかし、周囲の女性の評価はすこぶる低い。「何がイヤって、若い女性に手を出すところ」「札束で引き寄せる感じしかない」。若い女性を金で釣る印象が強いようだ。まるで「補助金どぶ漬けにして貧しい自治体に厄介な施設を押し付ける国のやり方」のような感じか? そんな個人的感情はさておき。まさか、彼が動いてしゃべる姿を、テレビのニュース番組で見るとは思ってもいなかった。10月9日放送『news zero』(日テレ系)だ。髪を染めた田口トモロヲのような風貌の前澤氏が、月に行くという壮大な計画を発表したのだ。 少し脱線する。いつも思うんだけど、どうして巨万の富を得た男性はこぞって「宇宙」を目指すのか。前澤氏いわく「自分のメッセージを世界中に発信する」ためだという。そして、その伝えたいメッセ―ジは「世界平和」。 壮大なのに、実にふわっとしとる。昭和の残骸である私にはどうしても故・笹川良一が思い浮かぶ。火の用心から世界平和まで唱えた好々爺(や)である。あのCM、忘れられないよね。大人になってからはいろいろと黒い噂を知り、「世界平和をうたう人は基本的にうさんくさい」と学んだ。前澤氏にもちょっぴり同じ匂いがしないでもない。日本外国特派員協会で会見を開いたZOZOの前澤友作社長=2018年10月9日、東京都千代田区 もちろん、テレビでは記者会見の一部を切り取って放送するので、計画の細かな部分はざっくり削除。そして、ネタの中心、というか核は「交際中の剛力彩芽」であった。実際、外国特派員協会で行われた記者会見では、宇宙に対する思いのたけ、綿密な準備を開始していること、批判に対する切り返しなど、月旅行に限らない現状を真摯(しんし)に語っていたようだ。が、テレビではもちろんバッサリ切り落とされた。 『news zero』ではこの件に関して子供たちにインタビューし、ゲストコメンテーターの落合陽一氏のフォローなども含めて、前澤氏を応援する形にはなっていたのだが。夜のニュース番組をなんとなく流し見している人に記憶されたのは、「世界平和」と「剛力彩芽」だろう。ふわっとゆるっとチャラい印象だけが余韻として残る……。ゴリ押しから解放されて この二人が交際を始めてから、連投するインスタグラム(写真共有アプリ)が話題になっていたことは知っている。「バカップル」と揶揄(やゆ)され、炎上騒ぎもちらほら。見かねた剛力の事務所が削除させたらしいとの噂もあり。それが、とうとうテレビでも触れ始めたか、と思ったのだが、そこにはなんとなくきな臭いモノがあった。同局の番組『アナザースカイ』では、12日のゲストが剛力彩芽だったからだ。 これは、芸能人や有名人をゲストに呼び、「海外にある、第二の故郷」を語ってもらうトーク番組だ。剛力がパリに訪れ、買い物を楽しみ、パリコレを最前列で鑑賞し(隣にはもちろん前澤氏が座っている)、アイデンティティーを表現するダンスをお披露目し、最近一人暮らしを始めた旨などを語っていた。自分から発信したいと思うようになってSNS(会員制交流サイト)も始めた、などなど、つっこみたくてウズウズするような内容ではあった。実際、司会の今田耕司はウズウズを抑えきれずにつっこみを入れたのだが、剛力は笑ってスルー。映像もさらっと編集してあった。 ふむふむ。そういうことか。剛力が今まで築いてきたイメージをZOZO前澤氏なんかに崩されたくないわけだ。従順で真面目でおぼこいゴーリキちゃんが「恋愛に溺れておかしくなっている」のではなく、「今、いろいろなことにチャレンジして新しく脱皮しようとしているブランニュー・ゴーリキ」方向へ持っていきたいんだな。「第2回ミス美しい20代コンテスト」概要説明記者発表会に出席した剛力彩芽=2018年3月22日、グランドプリンスホテル高輪(撮影・田村亮介) ゴーリキちゃんについて、少し触れておきたい。彼女は7歳からモデルを目指し、15歳で『セブンティーン』のモデルデビューを果たす。私が記憶しているのは、ドラマ『IS~男でも女でもない性~』(テレ東系、2011年)だ。 性分化疾患のインターセクシュアルという難しい役柄を見事にこなした。中性的なルックスと不思議な佇(たたず)まいに心がざわついた。その後、あれよあれよとスターダムにのしあげられるゴーリキちゃん。オスカーという巨大事務所の3枚看板(武井咲、忽那汐里とともに)として、毎クール必ずどこかしらのドラマに主演級で出演することに。ちまたでは「事務所がゴリ押しのゴーリキちゃん」と揶揄(やゆ)され、私自身も実際そう思っていた。いや、事実なんだろうけど。ゴーリキちゃんの転機 彼女自身は歌って踊ることも大好きなようで、念願の歌手デビューも果たした。菓子パンCMを始め、CM女王にも輝くほどの活躍。主演したドラマはどれもイマイチ視聴率が振るわなかったが、着実にキャリアを積んでいた。 ところが、ここ1~2年のゴーリキちゃんは、ゴールデン枠からプライム枠、そして深夜枠のドラマへと移行していき、正統派ヒロインだけでなく、かぶり物やコスプレがメインのキャラクターを演じるようにもなった。『レンタルの恋』(TBS系、2017年)というドラマが実にクオリティーの低い仮装なのだが、物語としてはものすごく納得のいく結末なのでぜひ見てほしい。そして、今は2時間モノで「主演の男性俳優についていくサブポジション」にたどり着いている。視聴者としては「最近、ゴーリキちゃんの扱いが雑になってきたな」と思ってしまう。本人が働き方を変えたいと思ったのか、さっさと妊娠・結婚した武井咲に感化されて反抗したのか。それともドラマ業界でメインに据えるニーズがなくなったからなのかは、正直分からない。 おそらく、18歳の頃から休みが一切なく、25歳までは恋愛禁止で、馬車馬のように働かされてきたゴーリキちゃんに「いい転機」が来たのだと思う。『アナザースカイ』でも話していたが、「初めて三連休をもらったのに、何をしていいのか分からなくて結局何もしなかった」そうだ。そして「今、仕事をもらえているのも、自分の実力じゃないじゃん、と。甘えていたんだなと思って。自分から発信していきたいと思うようになった」と言うのだ。 SNS炎上に対する事務所へのフォロー発言かなと思いつつも、10代から働き続けてきた女性の本音と恨み節を垣間見たような気もする。10代後半の多感で多動でかけがえのない楽しい時期を、汚れた大人の言いなりになって優等生を演じてきたゴーリキちゃんが今、解放感を味わっているのだ。TBS系ドラマ『レンタルの恋』の取材会に出席した(左から)岸井ゆきの、剛力彩芽、太賀=2017年2月、横浜市青葉区 つまり、前澤氏はゴーリキちゃんにとっての踏み台でもある。世間では「清純派で箱入り娘のゴーリキちゃんがZOZOに遊ばれて捨てられる!」と懸念しているようだが、実は逆ではないか。海外旅行での解放感にはしゃぎ、念願のパリコレも見て、アートの重要性と可能性とうんちくを聞き流し、さまざまな経験をさせてくれたら、後は自分の仕事に生かすだけ。 26歳のゴーリキちゃんにはまだたくさんの可能性と時間がある。やりたいことも目白押し。42歳の前澤氏(しかも結婚しない主義)から必要なものをインプットできたら、後は捨てるだけ。金目当ての元カノとは異なり、芸の肥やしでしかないと思うのだ。よそはよそ、ゾゾはゾゾ、うちはうち。ゴーリキちゃんがいつか「ZOZOを踏み台にした女」と呼ばれる日が来るはずだ。あ、なぜか破局する前提で書いているけれど。

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    『半分、青い。』共感できないヒロイン、それでも私は好きである

    吉田潮(ライター・イラストレーター) テレビドラマで増えているオーディオコメンタリー。本編と同時に、副音声で出演者や監督・脚本家が撮影時の苦労話やたわいもない話をくっちゃべる。私はほとんど聞かない。ドラマそのものに集中したいから。出演者が合間のCMに笑顔で登場するのも大嫌い。 もっといえば、せっかくキャラクターが熟して、物語に濃淡も出始めた頃に、突如撮影秘話だの役者が暑苦しい思い入れを語る特別編を入れてきたり、別枠トーク番組を挿入するのも大嫌い。大河ドラマ『西郷どん』がそうだったな。しかも2回も。肩透かしを喰(く)らって、「なんでやねん」と舌打ちした記憶が。 いろいろときなくさい事情はあるらしい。演者が他局の同一時刻番組に出るせいで、裏かぶりを忌避するために力の弱い局のほうが泣く泣く体裁を変えるとか……。ま、NHKは弱かぁないので別の事情だとは思うが、物語に集中して毎週楽しみにしている人間からすれば、興ざめの一言である。とにもかくにもドラマが作り出した虚構の世界にどっぷり浸りたいから、裏話は後日談で十分と思っている。 ところが、大多数の視聴者は違うようだ。ただドラマを見るだけではなく、周辺情報を同時に入手しつつ、感想を共有したり、わが意を得たり、あるいは許せない!と憤慨して発信したりで、大忙しの状態を好む。ドラマのHP・演者や関係者の会員制交流サイト(SNS)をチェックし、ともに作品を作り上げる喜び、という感覚なのかもしれない。 本題に入る。NHKの朝ドラ『半分、青い。』である。脚本家の北川悦吏子がツイッターに裏事情をつぶやき、絶賛するファンも増やす一方で、アンチも増やしているという。メディアも「北川ツイッター発言=炎上」の構図をいちいち取り上げたりもする。ちなみに、アンチ派は「#半分白目」で辛辣(しんらつ)な文句をつぶやいているのが、なかなかに面白い。ドラマの作り手が言わんでええ内部事情(肝いりのセリフやシーンがカットされたこと)や役者との交流を逐一つぶやいちゃうので、まあ、賛否両論勃発もさもありなん。 それでも、こんなにSNSで話題になっていることを考えれば、戦法としてアリだと思うし、斬新だ。朝ドラと言えども、いつまでもあぐらをかいていられないわけで、新規客は常に欲しいところ。今年4月期のドラマ『おっさんずラブ』(テレ朝系)は、登場人物のインスタグラム(写真共有アプリ)と連動して、ある種のブームを起こしたわけだし、今クールも「dele」で主演の菅田将暉と山田孝之がインスタを使って、放送前から話題だけは呼んでいたし。 ただし、大失敗も忘れてはならぬ。昨年大ゴケしてしまった『セシルのもくろみ』(フジ系)では、主演の真木よう子が張り切ってツイッターを始めたものの、その言いようが嫌われて総スカンを喰らってしまった黒歴史もある。NHK朝ドラ「半分、青い。」 冒頭で書いた通り、私自身は裏話や暑苦しい思い入れは、本編と同時である必要性はない、と思っている。でも、それが本編の画面に出てくることはないので、まったく問題ない。流れてくる情報を受け流せばいいだけ、ドラマに集中すりゃいいだけのこと。脚本家の奮闘と暴走、揚げ足取りの視聴者、ファンとアンチの小競り合いをいったん横に置いて、「半分、青い。」をどう見ているか、だ。 ヒロインが同世代ということで、最初から興味津々だったし、今もずっと見続けている。ファンでもなければアンチでもない。疑問も文句もあるが、最後まで見たいと思っているので、ファンなのだろう。何が私の心をとらえるか 私が苦手なのは、ただ1点。ナレーションが多すぎる。祖母役の風吹ジュンが悪いのではない。もう途中から風吹ジュンではなく、北川悦吏子の声にしか聞こえなくなってきた。とにかく人間関係も心情描写も、ナレーションが饒舌(じょうぜつ)すぎる。過去、祖母がナレーションというのは多々あったが、もっと淡々と、あるいは距離を置いての語りだったはず。ところが、制作側の大人の事情だの、時代背景との齟齬(そご)の解説まで語ってしまう。神の視点か。役者の見せ場がナレーションに強奪されたシーンを何度も見て、ため息。なんでこのばあさんは成仏しないのか。ヒロインがうまいこといかないのは、死んだばあさんの呪いだと思うことにした。なので、もう、慣れた。 展開が早すぎる・雑すぎるという「ショートカットっぷり」も気にはなるが、悪く言えば性急、よく言えば緩急。そこは今の時代、というか、軽薄な70年代生まれを描くにちょうどいいのではないか。また、イケメン俳優を次々投入、というのも今に始まったことではない。大河ドラマも同じ手口ね。そのファン層(特に、粘着質でヒマで金は持っててイベントをやれば来てくれる中年女性)がついてくれれば御の字、というNHKの意向も理解できる。 では、何が私の心をとらえるか。ひとえに、ヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)が清くも正しくもないからだ。思ったことを口にするし、口にするのを憚(はばか)られるような文言もスルリと吐いてしまう。 羽根より軽いと揶揄(やゆ)されるほど口が軽く、内緒話を速攻拡散してしまう。悪気や悪意はないが、思いやりも優しさもさほど持ち合わせていない。ドジっ娘の範疇(はんちゅう)を超えたヘマをしでかすし、自己主張も強くて頑固。ちゃっかりしていて依存体質。幼少期から幼なじみの佐藤健に精神的に依存。離婚後、実家に戻って、幼なじみが働き口を紹介してくれても上から目線で断り、経済的に実家に依存。さらには実母・松雪泰子の虎の子を五平餅店開業に使いこもうと目論(もくろ)んだり。朝ドラにこんな自己中心的なヒロインがいただろうか。もしかしたら、『純と愛』の夏菜、「まれ」の土屋太鳳に続く「3大・不穏なヒロイン」かもしれない。別名「共感を呼びにくいヒロイン」とも。 でも、私は嫌いじゃない。しかも、永野は「才能がない」という、朝ドラヒロインがあまり背負わない絶望を味わっている。プライドが低いように見えて実は高い。漫画家としての才能の限界に気づき、打ちのめされたのだ。才能って、努力や根性、周囲の助けでなんとかなるものではない。どうしようもない、乗り越えられない高い壁にぶち当たり、「きっぱり諦める」道を選んだ。映画監督の夢を諦めきれない夫・間宮祥太朗を許さなかったのも、あの苦い経験があったからこそ。NHK朝ドラ「半分、青い。」 人を傷つけないよう、気兼ねしたまま、自分の人生をそーっと歩くヒロインよりも、永野のほうが人生に悔いも恨みも残らないだろう。誰かを傷つけても、自分が傷ついても、自分が主語でいることを変えない。恨まれたり、やっかまれることがあっても、負の感情に直面しなさそう。というか、それに気づかない鋼のメンタルとも言える。 他人と比べて卑下して地面を見て歩くよりも、誰が何と言おうと空を見上げて歩きたい、と言い切る。漫画家、百均ショップ店員から五平餅屋と、行き当たりばったりの博打(ばくち)人生だが、こんなヒロインがいてもいい。朝ドラヒロインの多様性を快く受け入れたい。ということで『半分、青い。』を推している。褒めちゃいないが、好きである。