この問題を引き続き議論し、共有する必要があると感じているのは、はっきりと理由がある。本稿はアメフト及びスポーツの側面に絞って書いたが、この問題の背景には大学経営とスポーツが密接に結びついている。

 スポーツはもはや「子どもや学生の心身を育てる」といった側面を超えた、巨大なカラクリの中にある。今回の「潰せ」という指示が、巨大化するビジネスの一要素として行われたのではないかという可能性も否定できない。内田前監督は日大で人事を担当する常務理事という立場にあった。

 端的に言えば、「相手のQB(クオーターバック)を壊してこい」という指示は、アメフトの試合に必要な戦略として発せられたというより、大学経営と関連ビジネスにおいて上司と部下の関係にあった内田前監督と井上前コーチが、新たな人材として宮川選手を見込んで、試したのではないかと筆者は推測している。

 「相手を壊す」ことが目的ではなく、いかなる理不尽な指示にも従う部下で有り得るかというテストである。5月27日、危険タックルを受けて負傷した関学大の選手が試合に復帰した。調べてみれば、この選手が今春から試合に出場し始めた新戦力で、先発出場の可能性が高いのは今のところ先輩QB二人だったことが分かる。

 つまり、この選手は現段階で壊しておかねばならない絶対的なエースQBとまで言えないのである。アメフトの枠でなく、将来の人材探しだったと考えれば、「潰せ」とは言ったが「そういう意味ではなかった」という井上前コーチの証言も、「指示はしていない」という内田前監督の言葉も少しは理解できる。また、試合後の囲み取材で内田前監督がしきりに「ひと皮むけた」「宮川はよくやった」「もっといじめるけどね」と発言している意味もすんなり理解できないだろうか。
記者会見で詳細な経緯について語る日本大学アメリカンフットボール部の選手=2018年5月22日、日本記者クラブ(川口良介撮影)
記者会見で詳細な経緯について語る日本大学アメリカンフットボール部の選手=2018年5月22日、日本記者クラブ(川口良介撮影)
 今回の出来事は、その意味でも監督、コーチと選手の問題にとどまらない。日本のスポーツがすでに踏み込んで(取り込まれて)しまっている巨大なビジネスのカラクリ、怪しい伏魔殿に支配される状況を認識し、打破する必要がある。

 大げさに聞こえるかもしれないが、国民に重大な影響を与える案件をも曖昧に隠蔽(いんぺい)し、為政者が都合よく公文書を改ざんするといった日本が抱えるさまざまな問題の温床、カラクリ、悪しき人間関係にも通じる。国民の多くが関心を寄せているこの問題を通して、戦後70年以上にわたって改善できなかった日本の悪弊が一掃される「千載一遇の好機」と予感している。