実は国際パラリンピック委員会は、視覚障害を含む、主に肢体不自由の身体障害者を対象としている。聴覚障害者の大会はデフリンピック、知的障害者の大会はスペシャルオリンピックがそれぞれ行われ、パラリンピックがすべてのすべての障害者スポーツを含んでいるわけではない。

 注目が高まり、競技志向が強くなり、プロ化が進む流れの中で、様々な進化と課題の両方が浮かび上がってもいる。道具の開発と進化もそのひとつだ。

 陸上競技で、ハイテク素材の義足をオーダーメイドで注文し使用できる選手と、経済的にそれができない選手とでは、走る前から大きな差がついてしまうという。

車いすテニスでプレーするフランスのステファン・ウデ=リオデジャネイロ
車いすテニスでプレーするフランスのステファン・ウデ=リオデジャネイロ
 テニス選手の車椅子も話題になった。テニスという競技性から、ボールを追いかける、ターンするなどの動きが重要だ。操作技術の優劣はもちろんだが、それ以前に車椅子の性能がモノを言う。今回は準決勝で敗れたが、世界ランキング1位ステファン・ウデ(フランス)の車椅子はカーボン製、専門家たちと開発した車椅子は「1500万円」と話題になった。男子ダブルスで銅メダルを獲った国枝慎吾選手ら日本選手たちもオーダーメイドだが、40万円程度だという。

 障害者スポーツが盛んになり、ジュニアも含めて競技環境が整うこと、障害者の人たちが生きがいを見つけ、日々の暮らしが活気付くのは素晴らしいと思う。障害者の人たちの実情や可能性を知らされることで社会的な理解が深まり、バリアフリー環境が整備されるだけでなく、生活者全員の心の持ち方が変わる意義は大きい。

 だが、現代のスポーツが持つ弊害や課題は、そのまま障害者スポーツにも通じている。スポーツにかける思いが強くなればなるほど、生きる上で、スポーツに依存する度合いが高くなる。「スポーツにかける」といえば聞こえはいいが、競技スポーツには年齢的な壁がある。勝つスポーツの舞台を目指せなくなった時の喪失感をどう転換し、新たな生きがいを見つけるかの準備やサポートが充分にされているだろうか。勝てば官軍的な雰囲気も急速に広がってきた中で、勝利者が謙虚さを失わない姿勢はぜひ保ったまま、発展を続けてほしい。