岡崎の姿を見ていると、スポーツ選手の究極のゴールは、優勝や記録達成ではなく、時代を作ること、人々と感動を共有すること、伝説の担い手になることではないかと感じる。

 近年のプロ野球で鮮烈なのは、2013年の楽天日本一。東日本大震災で被災した東北の人々の声援を受けて楽天が巨人を破り初制覇を遂げた。3勝3敗で迎えた最終戦の9回、前日も完投しながら敗れた楽天のエース田中将大が最後にベンチを出てきた。誰もがその姿を待ち望んでいた。スタンドのファンがファンキーモンキーベイビーズの《あとひとつ》を涙ながらに歌い、田中将大がマウンドで投げ始めたときの感情の昂り。その尊さは言葉では語り尽くせない。テレビの前のファンも、特別な感慨を共有した。巨人ファンでさえ、あの日は田中将大に思いを寄せた。田中将大は確かに伝説となり、絶対的な存在尊敬を不動にした。
米大リーグ ブルワーズ-マーリンズ 一回、大リーグ通算500盗塁となる二盗を決めるマーリンズのイチロー外野手
=4月29日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーのミラー・パーク(共同)
米大リーグ ブルワーズ-マーリンズ 一回、大リーグ通算500盗塁となる二盗を決めるマーリンズのイチロー外野手 =4月29日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーのミラー・パーク(共同)
 メジャーリーグでイチロー選手は着実に通算記録を重ねている。先日はメジャーリーグ通算500盗塁を達成。メジャーリーグ通算3000本安打も射程内だ。が、イチローが通算記録を打ち立てるたび、クールで孤高な印象を帯びる。イチローも、熱い記憶とともに語られたら、もっと心にしみる存在になるだろう。過去にはオリックス優勝もあれば、ワールドベースボールクラシック優勝を決めた一打もある。なのに、積み重ねた数字が大きすぎるためか、記録が先に語られる。イチローが「記録を残す人」でなく「記憶を残す人」でありうるかどうか。それをファンも心の奥底で待望しているのかもしれない。