
2021年03月06日 13:13 公開
ローマ教皇フランシスコ1世は5日、イラクを訪問し、暴力と過激主義の終結を訴えた。ローマ教皇がイラクを訪問するのは今回が初。また、フランシスコ1世にとっては、新型コロナウイルスのパンデミック以降で初めての外遊となった。
現在84歳のフランシスコ1世は、米ファイザー・独ビオンテック製のワクチンを接種している。
教皇はイラクで縮小し続けるキリスト教徒コミュニティーについて、イラン市民として全ての権利や自由、責任を持ち、大きな役割を果たしていくべきだと話した。
今回の訪問では、シーア派のイラクで最高位の聖職者と会談するほか、北部イルビルのスタジアムでミサを執り行う予定。
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空港ではイラクのムスタファ・アルカディミ首相が教皇を出迎えた。
教皇警護のため厳戒態勢が敷かれ、治安部隊1万人が動員された。市民には、新型ウイルスの感染を抑えるため24時間体制の外出禁止令が発令された。
バルハム・サーレハ大統領の歓迎を受けた後の演説でフランシスコ1世は、「文明のゆりかご」イラクを訪問できて非常に嬉しいと述べた。
「軍事衝突が収まり(中略)暴力と過激主義、摩擦と不寛容が終結しますように」
「イラクは数々の戦争やテロ、異なる民族や宗教グループと平和的に共存できない原理主義に根ざした分離の摩擦による悲惨な影響に苦しんできた」
また、イラクのキリスト教コミュニティーについて、「この土地には古くからキリスト教徒が存在し、この国の生活に貢献している。その豊かな遺産を、今後も全ての人のために使いたいと、キリスト教徒たちは願っている」と話した。
教皇はこの日、2010年にテロ攻撃で52人の信者と警官が亡くなったバグダードの教会でミサを執り行った。
BBCローマ特派員のマーク・ロウエン記者によると、新型ウイルス対策の一環で、教皇と信者の接触は制限されているという。
6日にはシーア派の聖地であるナジャフに移動し、シーア派指導者のアリ・アル・シスタニ師(90)と会談する。
その後もモスルやカラコシュなどを訪問する予定だ。
現在イラクとなっている地域には、1世紀ごろからキリスト教が根付いている。
ただしアメリカ国務省によると、イラクのキリスト教徒はこの20年で140万人から25万人以下まで減り、人口の1%以下だという。そのうち67%がカルデア派カトリック教会と呼ばれる東方典礼の宗派で、20%はイラク最古のアッシリア東方教会の信徒。
米軍主導のイラク戦争で2003年にサダム・フセイン大統領が失脚して以来、イラクでは情勢不安が続き、キリスト教徒の多くが国外に逃亡した。
また2014年以降は、北部を支配していたイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」によって教会を破壊されたり、財産を奪われたりした。ISはキリスト教徒に税金を支払うか、改宗するか、土地を離れるか、死ぬかの選択を迫った。
こうした中、イラクのキリスト教徒は、教皇の訪問によって差別がなくなるよう願っているという。