東京五輪の大会組織委員会によれば、大会収入予算7210億円のうち、スポンサー収入は約57%の4160億円。一方で、チケット収入は900億円と10%少々というところだ。五輪の組織委員会としては、苦しくなるとはいえ最悪無観客の開催でも大会中止に比べれば、さほどの影響とはならないのだ。

 以上のように、東京五輪が開催可能であるという筆者の考えを述べたが、一つ追記しておこうと思う。実を言うと筆者は元々、東京五輪の招致に反対の立場だった。

 現代における五輪は、国威発揚や経済的な効果として政治的に重要なものとされている。しかし、この30年くらいのスパンで見てみると、五輪やそれに匹敵するスポーツイベントであるサッカーワールドカップを開催した国や地域が、その効果と恩恵を得られたとは言い難い。

 五輪で言えばアテネのギリシャやリオデジャネイロのブラジル、ワールドカップだと南アフリカやロシアなどの国々が、その投資に見合うだけの経済成長を得られたかというと、むしろその負債に苦しんでいるのが実情だ。この30年間で五輪開催のリターンが得られた国といえば、大きな経済成長を遂げている中国くらいしかないのではないか。

 とはいえ筆者個人としては、東京五輪はすでに投資と準備がここまで進んでしまったということもあり、「せっかくだから開催する方向で考えてみるべきでは」というくらいの感覚が正直なところだ。

 しかし、五輪が事実上アスリートたちの目標として重要なステージとなっていることはやはり見逃すことはできない。ゆえに、いたずらに「中止にするべき」と声高に唱える気持ちにはならないのだ。

 あるサッカーメディア関係者は「昨年、東京五輪が1年間延期が決まったときも、悔しがっている選手は多かった」と述べた上で、次のように説明してくれた。

 「五輪を目標にしているのは、サッカーのみならずアスリートでは当然のこと。サッカーだと、海外から注目が集まる大会ですから、そこを海外への雄飛のチャンスと考えている選手はたくさんいます。年齢制限があるサッカーの五輪代表は、1年延期になることによって規定の年齢を超えてしまうこともあるので、彼らにとっては1年延期は気が気ではなかったのではないでしょうか。これで出場できなくなったり、ましてや大会中止となった場合はショックでしょうね」とのことだ。

 確かに、この選手たちの気持ちは分からなくもない。そして、これはサッカーに限った話ではないのだ。
全日本体操の男子決勝、種目別鉄棒の結果が発表され、笑顔の内村航平(左)。右は個人総合で優勝した萱和磨=2020年12月13日、群馬・高崎アリーナ(代表撮影)
全日本体操の男子決勝、種目別鉄棒の結果が発表され、笑顔の内村航平(左)。右は個人総合で優勝した萱和磨=2020年12月13日、群馬・高崎アリーナ(代表撮影)
 五輪中止を求める声があるのも理解できる。新型コロナウイルスの伝染病の猛威を強く訴えるのもいいだろうし、現実的な対応策を進めることを政府に求めるのもいい。だが、それによって押しつぶされる声にも耳を傾けることが必要なのではないだろうか。

 もっとも、冷静な意見が聞かれるようになるのは、今続いている首都圏を中心とした緊急事態宣言が解除される頃だろう。昨年の五輪開催延期の判断の時期を鑑みると、今年3月までに緊急事態宣言が解除されれば、そちらのほうへシフトしていくはずだ。