気分転換もできないまま、ホテルと練習場、本番の会場だけで大会の期間を過ごすのは窮屈かもしれないが、そもそも五輪のような大会であれば選手村での生活が一般的だ。

 それゆえに、五輪選手の環境は従来とそれほど変化はないだろう。アジアチャンピオンズリーグでは、帰国後も政府の特例措置「スポーツマントラック」が選手に適用され、検査の上で問題なければ隔離期間もなく、そのまま帰国後に試合出場することも可能だ。

 なお、日本国内では、11月に日本体操協会が主催する国際大会が開かれた。選手は毎日PCR検査を義務付けられていたほか、さまざまな対策が採られながら観客の入場も可能だった。そして本大会でも、問題は特に発生していない。

 このようなコロナ禍での世界のスポーツ大会の実施状況を鑑みるに、五輪開催自体は必ずしも無理なことではないことは分かってもらえただろうか。

 さて、開催するのは可能だとしても、ここから先が思案のしどころである。「大会組織委員会は、五輪で観客を入れるか否か」という点である。

 アジアチャンピオンズリーグでは、記者は原則として同行できずに無観客で行われた。ここまでやれば開催は可能だが、五輪ではやはり観客がいたほうがいいだろう。

 もっとも、現在の日本における緊急事態宣言や欧州各国のように都市ロックダウンが行われている状況が続くのであれば観客を入れることはできない。また、海外から大規模な観客を迎え入れるのも難しいかもしれない。ただし前述の通り、ワクチンパスポートや抗体証明書を条件にして入国や観戦は可能にすることもできるかもしれない。それでも、この部分の見通しは難しい。

 ただ、実際のところ、現在でも日本国内でスポーツ大会は開催されていることを忘れてはいけない。感染対策を十分にし、ソーシャルディスタンスのための席配置をした上で、都内では大相撲初場所が開催され、Jリーグも12月までは観客を入れて開催していた。プロ野球も然りである。

 したがって、現在の指数関数的ともいえる感染者数の激増と、それに伴う病床の確保ができていない段階を抜け出ることができ、昨年の秋くらいの状況にまで落ち着くということを前提にすれば、観客を入れて五輪を開催することは不可能ではないのだ。
会談を前にグータッチを交わす菅義偉首相とIOCのバッハ会長(左)=2020年11月16日、首相官邸(春名中撮影)
会談を前にグータッチを交わす菅義偉首相とIOCのバッハ会長(左)=2020年11月16日、首相官邸(春名中撮影)
 ただし事務的な部分も含めて、現実的に考えると日本国内の観客のみを入場可とし、海外からの観客は原則として許可しないというのが賢明かもしれない。

 なお、観客をまったく入れない場合、チケット収入が得られない収益的な懸念はあるだろう。それでも、すでに五輪というビジネスは多くのスポーツと同じくスポンサー収入がその収益の大半であるから、それが決定的なネガティブ要素になるわけではない。