もっとも、現代韓国の左翼は国民を統合する共通のアイデンティティーを失っており、それを「反日アイデンティティー」で満たせると誤解しているばかりか、南北統一のための「共通のアイデンティティーは反日」とも考えている。これは「文在寅病」ともいうべき韓国左翼の症状であり、この押しつけがましいアイデンティティーは北朝鮮にさえ拒否されている。

 ゆえに文政権は反日言動で日本を挑発し、日本がそれに対抗させることで韓国民の反日感情を煽り、支持率を上げる手法を繰り返している。

 こうした対応を続ける限り、日本は文政権下へ「絶交」という意向を示唆しつつ、韓国民を味方につけるような賢明ある対応が重要だ。

 ただ、賠償判決で大きな話題となった陰で、韓国の新駐日大使が任命されたことに新たな懸念が生じている。彼の名は姜昌一(カン・チャンイル)。韓国では有名な「強硬反日派」だ。11年、彼はロシアのビザを取り国後(くなしり)島を訪問し、「北方領土はロシアの領土だ」と述べている。さらには「天皇は、慰安婦に土下座して謝るべき」との国会議長の発言を応援し、同様の言及をしている問題人物だ。

 そんな反日強硬派が新駐日大使に任命されたにもかかわらず、日本政府はその任命に「国民が反発する」とさえ言わず、今回の賠償判決前に彼の赴任を認めるアグレマン(同意)を昨年末に出してしまった。

 判決が年明けすぐの1月8日に出るのは事前に分かっていながら、日本の外務省は新駐日韓国大使就任を認めたのだ。そもそも国の大使は、相手国政府の同意がなければ赴任できない。通常であれば相手国の同意後に大使任命を発表するが、日本の出方を窺ったのだろう、韓国は日本政府が同意を出す前に新大使の任命を発表していた。

 外交上の駆け引きをするのであれば、日本は判決の結果を見た上で大使任命の同意を出すかどうかを決めればよかったのではないか。これでは駆け引きに日本が負けたという印象を相手に与えかねず、戦略性に欠けたと言われても仕方がない。

 外務省は、日本の新駐韓大使が認められなくなるとの憂慮もあったのかもしれない。だが、外交的にも国際法的にも問題があるのは韓国側にあるのだから、相手を揺さぶる意味も含めて、それでもいいではないか。

 今回の賠償判決の結果を受けて、日本は当分の間、駐韓日本大使の赴任を留保しても問題はない。安易に大使の同意を与え、今回の賠償判決でも日本政府の対応が緩い結果、日本は韓国に甘く見られているだろう。

 新駐日大使の問題はまだある。姜氏は、前述したように「天皇は慰安婦に土下座して謝れ」と賛同し、天皇陛下を「日王と呼ぶべき」とかつて主張している。

 だが、外国の大使は、日本で就任するにあたり天皇陛下に「信任状」を奉呈する。
ソウル市内の韓国大統領府で記念撮影する文在寅大統領(左)と新駐日大使の姜昌一氏=2021年1月14日(聯合=共同)
ソウル市内の韓国大統領府で記念撮影する文在寅大統領(左)と新駐日大使の姜昌一氏=2021年1月14日(聯合=共同)
 個人的には、官邸と外務省の判断が疑われる。そのまま「信任状奉呈」を認めれば、大使の失礼な発言を日本政府が「容認」したことになるからだ。

 菅義偉(すが・よしひで)首相は、天皇陛下に失礼な発言を繰り返していた大使を、謝罪も得ずに天皇陛下に会わせるのだろうか。