特にファンは韓国中心ではあるものの、すそ野は広く、ほぼ世界全域に及ぶ。日本、アジア諸国、南米、欧州、米国などにいるK-POPのガールズグループに関心のある何千万ものコアなファンの厚みは壮観でさえある。もちろんこのことが短期間で実現されたわけではない。少女時代、KARA、米国でブームを引き起こしている女性4人組のBLACKPINK、そしてTWICEらの先行的努力が実った結果でもある。ネット動画を活用した、国際的なマーケティング手法の開拓には、BTSなど男性アイドルたちの貢献もある。

 NiziUというグループ名からも、K-POPが活用しているマーケティング手法がうかがえる。NiziUは「Nizi Project」の頭文字で、虹を意味する「Nizi」と、メンバーやファンを表す「U」から名付けられたという。ファンが積極的にマーケティングに参加していることから、最近注目を集める「ユーザーイノベーション」という手法が用いられていると言える。

 経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが生み出した「イノベーション」の考え方においては、新しい製品やサービスの開発を指すことがほとんどで、主に生産者(供給)側から注目されていた。これに対して米国の経営学者のエリック・フォン・ヒッペルが考案したユーザーイノベーションは、消費者(需要)側のアイデアや意見を積極的に取り入れていく。

 アイドル業界の事情に即して言えば、オーディションの過程を熱心に追って優れた意見を表明するコアなファンの声からイノベーションを生み出す「リードユーザー法」と、MVを視聴した幅広いファンの声からイノベーションの可能性を探る「クラウドソーシング法」に分けられる。どちらも生産者サイドとともにアイドルを生み出していく重要な役割を担う。このユーザーイノベーションで傑出しているのが、JYPエンターテインメントなど韓国の芸能事務所だ。

 BLACKPINKなどのK-POPアイドルは、長年のレッスンによりデビュー段階で高度に完成されている。それに対して日本型アイドルは未熟であることが特徴だ。NiziUの面白いところは、売り出し方は韓国風なのだが、他方でアイドル自体は日本風な「未熟さ」が売り物になっていることだ。まだまだ歌唱やダンスののびしろが大きい段階でデビューさせている。

 本当は現段階でも相当の高レベルなのだが、この「未熟さ」を強調するのに、プロデューサーのパク・ジニョンが一役買っている。その役割はちょうどAKB48と企画者の秋元康との関係に近い。秋元康というメンター、つまり「師匠」が与える試練と格闘しつつ、彼に認められる「成長物語」がAKB48の初期の魅力となっていた。

 パク・ジニョンが重視するのは、パフォーマンスよりも、ありのままの姿と人格である。ありのままの姿から成長して人格を陶冶(とうや)していく。そこにユーザーイノベーションを織り込んでいくことが、NiziUのマーケティングの面白さである。実際に人が人格的に成長していくことはファンからは分かりにくい。そこでパク・ジニョンがファンに分かりやすい形で、直接メンバーの人格的な成長を指摘していくのではないか。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 これは私見だが、おそらくパク・ジニョンは日本にかなり好意を持っているのではないだろうか。その好意は、NiziUの「お姉さん」グループTWICEで、日本人メンバーの参加という形で表れ、日本語を一生懸命に駆使するダヒョンに最も色濃く継承された。そしていま、NiziUとなって、さらに進展している。日韓両国の間には政治的に困難な問題があり、私も度々、韓国政府に厳しい意見を提示しているが、この日本への好意の贈り物を大切にしたいと思っている。