再開後の最初の大会となったパレルモ女子オープンも、地元メディアによると収支は赤字になる見通しだという。無観客開催で入場料収入を失い、それでも持ちこたえられる大会がどれだけあるだろうか。そもそも、世界規模で経済活動の縮小、景気後退が続けば、フェデラーやセリーナ・ウィリアムズ(米国)といったレジェンドが先導し、人気拡大を続けたテニスツアーも安泰ではいられない。

 女子のWTAツアーでは、11月に中国・深圳で開催する予定だったシーズン最終戦、WTAファイナルの中止が決まっている。女子ツアーはコロナ禍の前から観客動員やスポンサー獲得に苦戦しているとうわさされており、相次ぐ開催中止はツアーの運営に甚大な影響を与えそうだ。

 否定的な見通しを挙げていけばキリがない。一流のテニス選手は敗戦の中にも必ずプラスの面を見つけ、気持ちを前に向けようと努める。その態度に学び、ポジティブな要素を探っていきたい。

 ツアー再開を控え、米国、英国などでエキシビションマッチ(非公式戦)が開催された。日本でも、7月にBEAT COVID-19オープン、8月には+POWER CUP(プラスパワーカップ)などが無観客で開催され、インターネットで配信された。

 今後、新型コロナ終息後もツアーの規模が大幅に縮小されれば、ワールドツアーに代わるイベントとして、こうした国内大会がクローズアップされる可能性がある。国境をまたがない大会は選手、関係者の移動が比較的容易だ。無観客かつ小規模な大会として実施すれば感染リスクを抑えられる。賞金大会なら選手には収入源となり、観戦機会を失ったファンの渇きも癒やされる。

 +POWER CUPを主催した全日本男子プロテニス選手会会長の添田豪(GODAI)は、ツアーの再開が滞れば「どこかでまたやりたい」と次回の開催を見据える。賞金大会についても、開催へのハードルの高さを覚悟した上で「やれるように準備はしていきたい」と前向きだ。シングルスでは現役最年長のATPランカー、42歳の松井俊英(ASIA PARTNERSHIP FUND)はより積極的だ。「コロナ禍に関係なく、やるべきだと思っている。四大大会を生で観戦するのは大変だが、国内大会ならファンも移動がしやすい。コンテンツとしても、甲子園の高校野球に負けない」。

 日本テニス協会にとっても、ファンや愛好者のテニス離れを食い止める意味で、国内大会の充実は差し迫った課題だろう。同協会の川廷尚弘(かわてい・なおひろ)副会長は、専門誌『テニスマガジン』8月号の連載コラムでこう書く。


 国際テニス連盟(ITF)では(中略)各国テニス協会に国内大会の積極的な開催を働きかけています。(中略)低コストかつ短期間で開催が可能であったり、低コストで参加できたりする大会が求められる時代になると考えます。


 世界のテニスに親しみ、目の肥えたテニスファンの関心を引くのは容易なことではないが、選手との「距離」の近さは熱心なファンへのアピールになるだろう。米国に拠点を持つ錦織圭(日清食品)や大坂なおみ(日清食品)の参戦は期待薄だが、世界ランキング上位の西岡良仁(ミキハウス)、ダニエル太郎(エイブル)、日比野菜緒(ブラス)、土居美咲(ミキハウス)といった選手がこぞって参加すれば、魅力あるイベントになる。
東レパンパシフィックオープンのシングル決勝で、アナスタシア・パブリウチェンコに勝利し、優勝トロフィーを手にする大坂なおみ=2019年9月、ITC靱TC(岡田茂撮影)
東レパンパシフィックオープンのシングル決勝で、アナスタシア・パブリウチェンコに勝利し、優勝トロフィーを手にする大坂なおみ=2019年9月、ITC靱TC(岡田茂撮影)
 次に、半ば希望的観測だが、ツアーが縮小すれば現在の過密日程が解消する可能性がある。シーズンの長さと過密日程はここ数年、男女プロツアーが直面してきた課題だ。