ただ、平壌でスーパーに来るのは富裕層と軍・党幹部の家族だ。彼らは「金正恩異変」の情報を密かに知り、買い占めに走ったようだ。異例の光景は高官たちの不安を物語る。

 以上が確認された事実だ。では、この事実から事態をどう分析するか。それには、報道されない正確な事実の確認と知識が不可欠だ。それを持たない専門家は「小説」を語るに過ぎない。

 まずは、確認された事実から何が分かるのか。ずばり、金委員長の病状は峠は越えたが、なお不安定である。なぜ分かるかといえば、中連部高官の訪朝が容態を指し示しているからだ。

 実は、報道されていない秘密だが、2011年12月の父親の金正日(キム・ジョンイル)総書記の死亡2日前に、中連部長が代表団を率いて平壌入りしていたのである。金総書記の病状を確認し、死後の指導体制を協議するためだ。こうして、中国は北朝鮮の安全を保障し、後継体制への支持を表明した。

 中連部は北朝鮮労働党との公式の窓口機関であり、部長職は習近平国家主席に直結する高い役職だ。今回も中連部長が訪朝したが、下っ端では北朝鮮が相手にしないからである。となれば、金委員長の命に別条はないとしても、政治的には決して楽観できないと判断される。

 さらに、金委員長は、既に心臓病と糖尿病の持病が確認されていた。昨年はペースメーカー手術も受けたという。

 心臓疾患は祖父、金主席以来の遺伝的なものだ。このため、北朝鮮は心臓病専門の医師を養成し、在日の商工人が病院や最高水準の医療機材を贈った。また、上海・復旦大の心臓病の権威と頻繁に交流している。

 この事実から、中国の医療関係者は手術で糖尿病との合併症が起きた可能性について検討している。最悪の場合は意識不明の状態で、軽い場合でも言語障害や歩行障害になるという。この見立てが「植物状態」情報の源流である。
北朝鮮の最高人民会議について報じる街頭の大型テレビ=2020年4月14日、平壌(共同)
北朝鮮の最高人民会議について報じる街頭の大型テレビ=2020年4月14日、平壌(共同)
 可能性はどうなのか。中国の医師団は、北朝鮮の要請がないと入国できない。ということは、術後の状態悪化を示唆する。リハビリが必要な状態なのだろう。

 もし、口が動かず、ろれつも回らず、何を言っているのか判別できない状態であれば、指導者としては致命的だ。