エースの錦織圭が故障明けで戦えないのは分かっていても、格下相手の鉄板試合とみられていたが、第2エースの西岡良仁が直前に渡米し、日本はいわば「飛車角」落ち。西岡の離脱は、新型コロナウイルスの急速な感染拡大によって次のツアーの主戦場である米国本土が封鎖される恐れがあったからだ。

 しかし、事情はエクアドル代表も同じである。日本がリスク回避をし、相手はリスクを背負って乗り込んだ―その気持ちの差がはっきり出た。

 デ杯を統括する日本テニス協会強化本部は「今年から個人戦を優先させる」(岩渕聡監督)方針に切り替えた。それでも、デ杯は日本のテニスの屋台骨であり続けただけに勝ちたかったが、ここにもう一つ、オリンピックという踏み絵があった。

 テニスの場合、オリンピック出場には世界ランク60位内を確保しておく必要があり、西岡はその時点で48位。デ杯の日の丸を捨てて個人戦優先(ランキング)という背後では、オリンピックの日の丸が密着し「(西岡の離脱は)オリンピックのことも考えてくれてありがたかった」(土橋登志久強化本部長)という複雑な心境があった。

 日本オリンピック委員会(JOC)から協会への助成金は代表成果に比例し、強化本部のスタッフのほとんどがJOC派遣コーチ、ツアー経験者はいない…。残れとも、行けとも、どちらとも言えない指揮系統。代表としても結果を出したい選手たちが、アマプロの垣根を挟んで、糸の切れた凧(たこ)のような状態になっている。

 マラソンでも同じようなことが起きている。オリンピック代表を決めるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は話題を呼んだ新方式だったが、多くの問題も残した。
マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でスタートする(左列手前から)大迫傑、設楽悠太ら=2019年9月、東京・明治神宮外苑(代表撮影)
マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でスタートする(左列手前から)大迫傑、設楽悠太ら=2019年9月、東京・明治神宮外苑(代表撮影)
 暑さの残る9月15日、本番とほぼ同じコースでの一発勝負はいいアイディアと思われたが、MGC予選が終わったところで腰を抜かした。世界陸連(WA)が出してきたオリンピック参加標準記録が、前回リオの2時間19分を大幅に縮めた2時間11分30秒(男子)だった。

 MGCの予想記録は、暑さを勘案して2時間12分前後、〝一発選考レース〟で代表が決まらないという惚けた可能性が出てきた。3カ月後にどうにかMGC5位までの代表入りを認めさせたが、世間知らずを露呈した。国内人気に目を奪われ、海外マラソンが厚底シューズで大幅にスピードアップしている現実を知らなかった。