こうした中、日本の輸出管理強化、すなわち「日韓摩擦」でも、文大統領は世界の資本主義の常識や理論を大きく逸脱する動きをとっている。

 日本の高純度フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジスト(その後レジストは運用緩和)、さらにホワイト国除外でも、文大統領は不可解な行動規範を指示している。文大統領は日本の輸出管理強化を「元に戻せ」と主張しながら、一方で日本のハイテク関連の部品・用品供給は「経済侵略」と規定して、韓国で部品・用品生産する「自国化」を奨励している。「(部品・用品の)自国化は第2の独立戦争」とわけの分からない、乱暴な理屈を振り回している。

 部品・用品のサプライチェーンを「経済侵略」と規定するとは、現代資本主義から見て理解を超えたものだ。こうした理屈や理論をどこから持ってきているのか不明だが、文大統領の周囲を含めて「学生運動」次元のように感じられる。

 LGディスプレイなどが高純度フッ化水素を国産化したと発表してiPhone生産を行ったのだが、なんと100万台超の不良品を生み出したと伝えられている。それらの大量の不良品は廃棄に追い込まれたとみられる。部品・用品のサプライチェーンは「最適地」生産が基本であり、韓国としたらどこからみても日本からの供給が世界的に見て唯一無二、ワンアンドオンリーにほかならない。

 韓国での部品・用品の自国化生産は、不効率で高く付くばかりか、それ以前にリスクがきわめて大きい。大量の不良品を出して納期が遅れる、あるいは製造歩留まりを悪化させるなら、アップルなど需要先からの信用を失い、下手をすれば事業撤退など致命的な事態に追い込まれる。

 日本からの部品・用品供給を「経済侵略」として自国化=独立戦争を奨励するという文大統領の思考は、世界資本主義のサプライチェーン理論からすると現実を見ようとしない、あるいは現実から逃避・逸脱するものである。これはサプライズに近い理論といえるかもしれない。

 このままいけば外資企業はもちろんのこと、サムスン電子など韓国の財閥企業などまで「資本逃避」が本格化するとみられる。韓国に本社、工場、研究所、店舗、人員を置くだけで人件費コスト、法人税などの負担で世界競争において劣位に立つとすれば、それらは海外の「最適地」に移転させることに追い込まれるのが自然な動きだ。
サムスングループのディスプレー工場を訪問した韓国の文在寅大統領(中央)=2019年10月、韓国・牙山(聯合=共同)
サムスングループのディスプレー工場を訪問した韓国の文在寅大統領(中央)=2019年10月、韓国・牙山(聯合=共同)
 ヒト、カネ、モノのすべてが韓国という祖国を捨てる行動に出る。みすみす世界競争に負けてマーケットを失うぐらいなら、活路を求めて海外に資本を移すしかない。

 世界の資本主義に逆行する文大統領だが、経済政策に過剰にイデオロギーやルサンチマン(怨恨・思い込み)などを持ち込めば、大元である韓国という国家そのものを傾かせるという悲惨な結末をひたすら呼び込むことになりかねない。