トランプ大統領は中国の無尽蔵な補助金注入を「アンフェア」と非難している。先行きの世界の覇権は自国ハイテク産業の盛衰で優劣が決まる。中国のアンフェアを認めれば、技術、そして経済、軍事までイニシアチブを中国に渡すことになりかねない。米中貿易戦争は、先行きの世界の覇権を争奪するなりふり構わぬ闘いとなっている面が否定できない。

 共産党独裁の中国ですら明らかに過剰なほどのサプライサイド優遇・強化に身を乗り出している。習主席は、トランプ大統領を「一国主義」と批判しているが、どうして習主席も「一国主義」では何一つ負けていない。

 言い換えれば、習主席の中国は、トランプ大統領が目の仇にしている中国通信機器大手のファーウェイを世界企業に仕上げしようと応援しているのに対して、文大統領の韓国は世界企業であるサムスン電子を虐めて引きずり下ろしているようなものである。

 中国を含む世界の資本主義が「自国ファースト」といった風潮も加えて自国のサプライサイド強化にひたすら走っている中で文大統領による韓国の「反サプライサイド」は特異である。

 文大統領の「反サプライサイド」に対して、韓国産業界がそれを吸収できる生産性向上や技術革新を持ち得るなら話は少し変わるがそれはない。韓国産業界は、世界競争で実力を上回るハンディ(=人件費増など原価高)を背負わされたようなものである。文大統領の行っているのは、韓国産業界を世界市場競争から自ら脱落させようとしている所業というしかない。

 これでは韓国経済が持たない。韓国の国内総生産(GDP)に占める輸出の比重(37%)は大きく、サムスン電子などの半導体関連製品の中国向け輸出で稼いできている。しかし、その中国が米中貿易戦争で景気が低迷しており中国の国内需要は極度に低下している。景気の悪化で半導体関連市況は低迷するばかりだ。しかも中国は「中国製造2025」で半導体などハイテク製品の自国生産に乗り出している。

 中国はむしろハイテク製品で韓国と競合する、あるいは韓国を凌駕していく趨勢をつくろうとしている。従来のように中国が韓国のサムスン電子などのマーケットであり続けるという構図は崩壊に直面している。
韓国ソウル市内にあるサムスン電子のオフィス(ゲッティイメージズ)
韓国ソウル市内にあるサムスン電子のオフィス(ゲッティイメージズ)
 案の定、19年の韓国の輸出は大幅減となっており、19年のGDP成長率は2%にとどまった。リーマンショック後、韓国経済は順調な歩みをたどってきたが、最低成長率を記録した。韓国のリーディングカンパニーであるサムスン電子などを見ても大幅減収・営業利益半減の惨状である。

 韓国産業界各社は輸出の低迷で売り上げが低下し、人件費コスト増、法人税増などで収益が低下する「減収減益構造」にはまり込んでいる。米中貿易戦争の長期化という事態も想定を超えるものだったが、大半は文大統領の「絵に描いた社会主義」を骨格にした「反サプライサイド」経済政策が招いた結果にほかならない。悪いときには悪いことが重なるもので、「新型コロナウイルス」は、中国経済を停止状態に追い込んでおり、20年の韓国経済は悲惨なものになりかねない。GDP成長率はさらに失速する可能性がある。