もう少しリスクを抑え、スムーズに融合できないものか。

 最大のネックは、8月に五輪を終えた後、9月の最終予選スタートまで親善試合が1試合も組めないことである。五輪世代をスムーズに抜てきするなら、A代表との融合は五輪の以前から始め、手応えを得なければならない。つまり、この半年のうちに森保監督が、やや強引に進めてきたコパ・アメリカやE-1選手権の中性的なチームは東京五輪だけでなく、W杯最終予選を見据えた「種まき」でもあった。

 二兎追う者が、二兎ともに得る。そのための兼任監督。6月のコパ・アメリカ以降は、A代表と五輪代表の間で選手の行き来が活発になっており、森保ジャパンは思い切ったトータルの成長戦略を進めてきた。その考え方は面白い。

 ところが、である。実際のチーム作りは、描いた理想の通りには進んでいない。実践段階では多くの問題を抱え、ともすれば絵に描いた餅になりかけているのが、正直なところではないか。

 なぜか。それは二つ目の兼任メリットが、十分に生きていないことに起因する。

 「複数のチームが一貫性を持ち、同じ哲学、同じコミュニケーションで指導できる」ことが兼任のメリットであるはずだが、その実感がない。むしろ、11月のU-22コロンビア戦、12月のE-1選手権、1月のU-23アジア選手権と続く中で、選手の方からは「毎回『初めまして』で難しさがある」「毎回イチからのやり直しになる」といった声が漏れてくる。はて、兼任監督がもたらす「一貫性」のメリットは、どこへ行った。

 一貫性のメリットがあまり感じられないのは、A代表で4バック、五輪代表で3バックと、異なるシステムを用いていることもあるが、より大きいのはチームマネジメントだろう。森保監督はチーム戦術の構築について、あまり細かい指示をせず、選手の自立を促し、自ら対応力を発揮することを求めてきた。これは重要なポイントだ。

 監督の中に答えはあっても、それ以上に、選手の中から主体的に導かれる答えを待つ。試合中の指示も「サイドに開け!」ではなく、「サイドに開いてはどうか?」といった提案だ。これは「森保式」というより、西野朗(あきら)前監督から受け継がれた手法でもある。

 焦(じ)れったく、時間のかかるやり方ではあるが、このように培って完成した組織は、各自が進んでチームに関わろうとする「選手自立型」「全員参加型」の性格を備えることになる。近年はベンチを含めたチームの一体感が重視されているが、森保監督はそれを「西野式」に学び、戦略的に目指している。
2019年11月、サッカーW杯アジア2次予選 キルギス戦を控え、練習に臨む森保一監督(中央)=ビシュケク(蔵賢斗撮影)
2019年11月、サッカーW杯アジア2次予選 キルギス戦を控え、練習に臨む森保一監督(中央)=ビシュケク(蔵賢斗撮影)
 ただし、こうしたチームの成長は実践的であり、経験的だ。試合を行う中でトライ&エラーを繰り返し、選手からさまざまなアイデアを引き出さなければならないが、それはその場にいた選手しか共有できない。しかも兼任体制により、A代表と五輪代表で選手の行き来を増やしているため、「初めまして」が頻繁に起き、選手依存の連係は毎回ゼロに戻ってしまう。

 つまり、兼任のメリットがケンカしているわけだ。選手の行き来を活発に行える一方、一貫した森保監督の指導メソッド「選手自立型」は時間と体験を要するため、上記のように連係面で問題を抱えやすい。兼任のメリットが実感できなければ、当然デメリットばかりが残ることになる。