一方、文大統領が解任に踏み切れば、尹氏は「ヒーロー」となって総選挙に出馬しかねない。だから、総選挙が終わるまでは解任できない。ただ、総選挙後に解任しても、尹氏は次期大統領候補に浮上してしまう。

 そのような思惑が交錯する中、大統領と検事総長の手打ちとなる材料の一つが「国会先進化法」だ。

 韓国国会は乱闘騒ぎが絶えなかった。この状況を抑えるために、与野党が合意して法案を成立させた。

 ところが、最近も乱闘が絶えず、「先進化法」に違反に該当する国会議員は与野党合わせて30人にも上った。この中に多数いる野党幹部を多く起訴してほしい、というのが文大統領の「尹氏続投」の条件だ。

 もう一つの「大統領の陰謀」は選挙法の改正だ。韓国国会は一院制で、小選挙区比例代表並立制を採用している。

 そこで法改正により、比例代表選出の議席を増やすことで野党勢力を抑え、弱小だった極左勢力を躍進させようとしている。全ては、国会で3分の2の支持勢力を確保し、文大統領悲願の憲法改正を実現するためだ。

 ところで、尹氏が総選挙や大統領選挙に出馬するシナリオには、無理がある。尹氏の出馬には左派の岩盤勢力が反対するため、与党の共に民主党からでは不可能だからだ。
2019年10月、サムスングループのディスプレー工場を訪問し、次世代ディスプレー製品を体験する韓国の文在寅大統領(手前)=韓国・牙山(聯合=共同)
2019年10月、サムスングループのディスプレー工場を訪問し、次世代ディスプレー製品を体験する韓国の文在寅大統領(手前)=韓国・牙山(聯合=共同)
 かといって、保守野党の自由韓国党からの出馬も難しい。尹氏は朴前大統領を逮捕した検事だから、朴前大統領の与党だったセヌリ党の流れをくむ最大野党からの立候補を保守の岩盤勢力が許さない。あとは第三の勢力から出馬するしかないが、それでは大統領当選はおぼつかない。

 法相辞任では成功した保守勢力だが、先の見通しは立っていない。岩盤支持が25%しかないのに、分裂状態にあるからだ。