この動きでも分かるように、韓国は自由民主主義国家ではなく、単なる「儒教民主主義国家」である。民主主義は、ルール・オブ・ロー(法治主義)が原則だ。

 集会とデモを武器に政治を動かすのは、中国の「民衆裁判」か「大衆動員」と同じだ。韓国の儒教では「法治」が無視され、賄賂と特権乱用が横行する。曺氏の家族による推薦状偽造や不正入試こそが、「儒教民主主義」の病巣である。

 報道の自由も抑圧され、政府に批判的な新聞は朝鮮日報と文化日報だけだ。編成権を労働組合に握られ、御用報道に転じたテレビ局もある。

 韓国の歴史は、3・1独立運動や四月革命、日韓基本条約に反対した6・3学生デモ、70年代から80年代の民主化闘争、87年の民主化運動、そして朴槿恵政権打倒のロウソク集会など、デモや集会、宣言を正義として神話化している。これが、韓国政治の後進性を表している。

 大規模なデモや集会は、言論や報道の自由が抑圧されている国にとって必要だが、民主主義国家では言論や報道、自由選挙、議会での論争が基本になる。

 文大統領も曺氏も、まさか大規模デモと集会の手法が自分たちの支持率激減につながるとは夢にも思わなかったであろう。保守勢力が左派と同じ手法を使ったことで、神通力を失ってしまったのである。

 「儒教政治」とは権威主義の政治であり、権力者が権力を示し、恐れられなければ国民は従わない。検事総長の解任や野党議員の逮捕などの強権を発動しないと、文大統領はレームダック(死に体)化へと向かう。
2019年10月5日、ソウルで開かれた検察捜査を批判する集会。参加者は検察改革を訴えるパネルを掲げた(共同)
2019年10月5日、ソウルで開かれた検察捜査を批判する集会。参加者は検察改革を訴えるパネルを掲げた(共同)
 いずれにしろ、文大統領は、尹氏と手打ちせざるをえない状況だ。2021年7月まで任期を残す尹氏を更迭しない代わりに、曺氏を不起訴にする「取引」を持ち掛けるだろう。

 そうすれば、曺氏は来年4月の総選挙に出馬できる。当選できれば、政治力を回復するのは難しくない。