一方で、タイプによっては寛解に至らない白血病患者も当然存在します。そういう患者に対しては、さらに踏み込んで、特殊な治療の組み合わせを模索していくことになります。

 完治の割合(病気が再発しない5年生存率)についても、白血病のタイプや患者の年齢によって異なります。成人白血病全体における割合は、幹細胞移植を行うことで40~50%ぐらいになります。昔よりは上昇していますが、そこまで高いものではありません。

 ただ、タイプによっては、5年生存率が90%近くある白血病もあります。また、昔であれば移植が絶対必要だったタイプでも、分子標的薬の投与と化学療法を実施することで、移植しなくても70%前後の完治が望める状態にまでなってきています。

 また、概して予後のいい小児白血病に比べて、池江選手のように、主に15~39歳の思春期・若年成人期を指す「AYA(アヤ)世代」が発症する白血病は患者数が少なく、対策が遅れていると言われてきました。現在では治療法を子供用に少し変更することで、治療効果の改善が続いています。その結果、リンパ性では治療成績が向上してきています。

 一方、急性骨髄性白血病の5年生存率は化学療法だけだと30%ぐらいです。ただ、感染症など合併症のコントロールがかなり効くようになり、いくらかは改善しています。

 こちらも、移植の併用により、40~50%とやや改善します。治療成績はこの30年少しずつですが向上しています。また、急性前骨髄球性白血病(APL)という特殊な白血病は別で、5年生存率は移植がなくても90%前後に達しています。

 急性リンパ性白血病は先述の通り、型によって治療成績はかなり異なります。そして、移植治療の成績は40~50%は骨髄性とそれほど変わりません。

 次に、池江選手特有の話になりますが、白血病克服後のアスリート復帰について考えてみましょう。患者は社会復帰に向けてリハビリを行うわけですが、治療終了後だけではなく、治療中からでも可能です。寛解導入療法の最中にリハビリを併用する病院も多いですが、昔では考えられなかったことです。
2018年8月、ジャカルタアジア大会の競泳女子100メートルバタフライ決勝で優勝した池江璃花子(納冨康撮影)
2018年8月、ジャカルタアジア大会の競泳女子100メートルバタフライ決勝で優勝した池江璃花子(納冨康撮影)
 それゆえ、寛解を維持し退院できた患者は時間がかかっても、退院後の日常生活復帰はほぼ問題ないレベルに達しますが、アスリートは少し話が違います。退院後、発症前のレベルにどこまで戻すことができるかは、治療中から治療後にかけて対応できるかどうかにかかっています。

 治療中の体調に問題がなければ、軽めの運動を続けることは悪くないと思います。その際「治療に悪影響を及ぼさない程度」という条件がつきますので、主治医やコーチを含めて集約的な対応が求められます。