ましてや現在のように衛星利用測位システム(GPS)を用いて自らの所在位置を簡単に確認できる時代において、一国の海上警察がこのような「単純ミス」を犯すのはあまりにも異例である。

 そしてここでも、問題はその後の経緯である。関係者によると、この事件の発生後、韓国側は「慣れない海域での警備のため、現場がルールを理解していなかった」として自らの誤りを認めると同時に、事件を公にしないことを日本側に求めたという。しかしながら、事件の内容を重大視する日本側はこれに応じず、日本政府は公式に韓国政府に抗議を行うことを選択した。

 さて、それではこの日韓両国の間に横たわる「海」を巡る問題の展開に共通するのは何であろうか。それは各々の事件の「重さ」に対する考え方とその扱いにおいて、日韓両国で大きな開きが生じていることである。

 すなわち、旭日旗掲揚問題においては、「日本が自粛に応じてくれる」と韓国が期待を寄せていたことは明らかであり、また、暫定水域での事件においても韓国は自らの一方的なミスであるにもかかわらず、日本の好意にすがる形でその非公開を要請した。

 背景にあったのは、日韓関係を考慮して、日本が何らかの配慮を行ってくれるであろう、という韓国の一方的な期待であったが、それは日本によってあっさりと裏切られることになった。

 そして同様の日本への一方的な期待は、今回のレーダー照射問題についても言うことができる。この事件の展開を通じて韓国から伝わってくるのは、「日本側はどうしてこのような『ささいな』事件を取り上げて、問題視するのか」という不満であり、また、「日本側がそのような行動をするのは、何かしら特別な政治的意図があるのではないか」という思いである。事実、韓国における報道や政府関係者の言葉には、このような観点から日本への不満をにじませるものが多くなっている。
海上自衛隊のP1哨戒機
海上自衛隊のP1哨戒機
 もちろん、このような韓国政府、あるいは日本に対する韓国の世論、さらには現在の日韓関係に対する「感覚」はわれわれからすれば異様に見える。なぜならとりわけ今年10月30日に韓国大法院が出した、いわゆる「徴用工問題」に関わる判決以降、日本における対韓国感情が悪化していることは明らかであり、それ故に、仮に韓国政府や世論が日本との関係に一定の意味を依然見いだしているなら、韓国はもっと日韓間の関係に対して慎重な配慮をすべきだからである。

 だからこそ、われわれからすれば異様に見える、この韓国の対応の原因は明らかである。彼らは依然、日本が徴用工判決以降、どれほど日本国内における対韓国感情が悪化しているのかを、理屈ではともかく、実感として理解していないからである。

 韓国の人々にわれわれの思いをいかにして伝え、現在の状況の深刻さを理解してもらうのか。まずはそこから始めるしかなさそうである。

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